トヨタ「アクア」は海外では「プリウスC」として売られている!? 車名統一が相次ぐなか、対照的に日本と海外で異なる車名を使い分ける戦略と事情とは?
2019年あたりからトヨタはコンパクトカー「ヴィッツ」の車名を海外向けに使われていた「ヤリス」に変え、マツダも「デミオ」を「マツダ2」、「アクセラ」を「マツダ3」に、「アテンザ」を「マツダ6」に変更するなど、車名を世界統一とするケースが増えてきた。
一方で、日本と日本以外の仕向地に応じて車名を使い分けているモデルも未だに少なくない。
当記事では「同じクルマでも日本と海外で車名が異なる理由」を、各メーカーの公式回答をもとにしながら解説したい。
文:永田恵一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUBARU
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数多く現存! 日本と海外で車名が異なる国産車は?
まずは日本と海外で車名が異なる例をいくつか上げてみたい。
・トヨタ グランエース/マジェスティ(タイ)
・トヨタ 86/GT86(欧州)、FR-S(米国:※2016年まで。若年層向けブランドのサイオンで販売されたため)
・日産 エクストレイル/ローグ(米国)
・日産 シルフィ/セントラ(米国)
・三菱 RVR/アウトランダースポーツ(米国)、ASX(欧州)
こうした例が浮かぶ。
ヴィッツやアクアでなぜトヨタは国内外の車名を差別化?
■トヨタ ヴィッツ/ヤリス
では、なぜ仕向け地によって車名を変えるのか?
かつて日本=ヴィッツ、海外=ヤリスと車名を分けていた例に関して、トヨタに問い合わせると次のような回答だった。
「その国・地域にあう(覚えやすい、言いやすい)名前を選んでおり、必ずしも同じになるわけではありません。また商標上、使用できないというケースもございます」(トヨタ広報部)
それぞれの車名の由来は、ヴィッツが英語の「Vivid」(鮮やかな)とドイツ語の「Witz」(機知)を組み合わせた造語、ヤリスもギリシャ神話の美の女神「カリス(Charites)」の単数形「Charis」をアレンジしたものである。
なおヴィッツの車名は、中国仕様の初代モデルにも使われていたが、2代目モデル以降はヤリスになっている。
日本でもその流れと4代目となるヤリスは、「今までのヴィッツとは違うクルマになる」という決意表明のようなものを感じるモデルなのも、ヤリスへ車名が変更された大きな理由と想像できる。
なお車名の商標権といえば、日本で販売されるルノー ルーテシアは本国では「クリオ」だが、当時ホンダの販売チャンネルにホンダクリオ店があったため、パリの昔の呼び方となるルーテシアとした(日本でいう東京と江戸のような話だ)。
日本で販売されたオペル ヴィータは本国では「コルサ」だが、当時トヨタにヴィッツの前身でもある「コルサ」があったため、ラテン語とイタリア語で命、人生、生活を意味する「ヴィータ」としたという例を思い出す。
そんなホンダクリオ店もトヨタコルサもなくなってしまったのはちょっと皮肉でもある。
■トヨタ アクア/プリウスC
ハイブリッドコンパクトの「アクア」も、実は海外では「プリウスC」として販売されている。その理由についてトヨタは以下のように回答する。
「(日本でアクアとしたのは)日本市場におけるハイブリッドのさらなる普及に向けた新たなハイブリッド専用車として、それにふさわしい車名としました」
「(米国などでプリウスCとしたのは)トヨタのハイブリッド車の認知をさらに深めていただけるよう、プリウスファミリーとして親しんでいただける車名としました」(トヨタ広報部)
これはアクアが登場した2011年当時、日本と海外におけるプリウスやトヨタのハイブリッド車の知名度の違いを考えると「なるほど」と感じる理由だ。
また、当時を思い出すと、アクアを日本でもプリウスCの車名にすると、「カローラはカローラツーリングなども合計した台数」のように計算される販売台数で、プリウスとアクアが合計したものになり、「プリウスがあまりに強くなりすぎるのもいかがなものか」という議論もあったのかもしれない。
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