米国ではマツダ2が独自フェイスにアレンジされて、トヨタの「ヤリス」として売られている?
日本では2020年2月のフルモデルチェンジを期に、ヴィッツの車名が世界統一の「ヤリス」に変わったのは記憶に新しいところ。同車は欧州でもすでに販売されている。
しかし、米国で販売されているヤリスは、現在のマツダ2(旧デミオ)ベースとなっている。実はこのニュース、当サイトでも以前報じているのだが、新型ヤリスが世界でデビューした現在も、米国では“マツダ2のベースのヤリス”が販売されているのだった。
米国のヤリスとは? そして、ヤリスがマツダ2ベースとなっている理由は? トヨタに聞きました。
文:永田恵一
写真:TOYOTA、MAZDA
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北米のヤリスはマツダ2ベースでセダンも発売!
もともと米国で販売されるヤリスは、左ハンドル圏という背景もあったのか、トヨタのフランス工場製だった。
トヨタは、2003年~2016年9月まで、米国で「サイオン」という、主に20代をターゲットとした若年層向けブランドを展開していた。
サイオンではFF車のミドル2ドアクーペ「tC」、カローラルミオンのサイオン版となる「xB」、イストベースの「xD」、86を「FR-S」とするなどして販売していた。
また、サイオンではトヨタブランドのフランス製ヤリスとは別に、マツダのメキシコ工場で生産されるマツダ2セダンベースの「iA」を2015年から販売していた。
(当時、サイオン向けとは明らかにされなかったが、2012年11月に、マツダからトヨタ向けに年間5万供給と発表された)
サイオンは2016年に消滅したため、サイオン「iA」は、トヨタブランドの「ヤリスiAセダン」に車名を変える。
そして、現在はマツダ2セダンベースのコンパクト4ドアセダンが「ヤリス」、マツダ2ベースの5ドアハッチバックが「ヤリスハッチバック」として販売されている。
北米ヤリスの中身はマツダ2に準拠
米国で販売されるヤリスは、マツダ2セダンとマツダ2のフロントマスクをトヨタ顔に、エンブレムをトヨタかヤリスにしたもので、要するにOEMである。
機能面も当然ながらマツダ2に準じており、駆動方式はFFのみ、エンジンはマツダの1.5Lガソリン、トランスミッションはハッチバックが6速ATのみ、セダンが6速ATと6速MTとなる。
トランスミッションに関しては、フランス製ヤリスだった頃は4速ATと5速MTだったのだから、大幅に進歩したと言える。
価格はセダンが1万5650~1万8750ドル(168万4000~201万7000円)、ハッチバックが1万7750万~1万8750ドル(190万9000~201万7000円)。仕様を揃えればボディタイプによる違いはない。
なぜ米国のヤリスはマツダ2ベースなのか?
この点に関するトヨタの正式回答は、
「商品戦略の観点に加えて、物流の観点やマツダとのパートナーシップの有効活用の観点を踏まえて決定しました」
とのことだった。ここに筆者の推測を入れるならこうだ。
ヤリスのようなコンパクトカーは、国土の広い米国では、現地生産できるほど売れるものではない一方、フランス製ヤリスを販売するのも輸送などの手間が多い。
そこで、マツダがメキシコ工場でマツダ2を造るなら、供給してもらえればマツダは米国でマツダ2を販売していないのでバッティングもなく両社ウィンウィンになるという、企業として非常に合理的な判断が下された結果……ではないだろうか。
また、「今後、日欧と同じヤリスをアメリカで販売する計画、可能性」について聞くと、「将来の商品計画についてはお答えできません」との回答だった。
こちらについては、今後も米国でヤリスが販売されるならマツダ2の供給は続くように思う。
しかし、現行マツダ2はセダン、ハッチバックともにリアシートが狭く、米国で売りやすいクルマではない。
この点を踏まえると、マツダは相当の数を買ってくれるお客様であるトヨタの意向も聞き、次期モデルでは日本の2代目デミオのような広さも考慮したクルマになるという可能性もあるのかもしれない。
マツダ本来の意向はともかくとして、日本でも広いコンパクトカーは正義であり、ホンダ フィットや日産 ノートが好調なのを見ると、マツダにとっても悪い話ではなさそうだ。
といったことを総合すると、次期マツダ2の姿のカギを握るのは、案外アメリカで販売されるヤリスなのかもしれない。
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