ヤリス独自の魅力を味わうなら1.5Lガソリン

お金の面以外では、運転感覚に対する好みの違いも、ノーマルエンジンとハイブリッドの選択に影響を与える場合がある。
ヤリスのエンジンはすべて直列3気筒だから、ノイズを抑えるうえでは4気筒に比べて不利だ。その意味でハイブリッドは、車両重量の割に動力性能の高いモーターを併用するから、ノーマルエンジンに比べてアクセルペダルを深く踏む機会が少ない。

フル加速すればハイブリッドでも3気筒のノイズが高まるが、通常の走行では、ハイブリッドは静かで滑らかだ。ハイブリッドのエンジン負荷を抑えた走りは、燃費の向上にも役立つ。
いっぽう、1.5Lノーマルエンジンは、モーター駆動を併用しないから吹き上がりが活発だ。高回転域までよく回る。
さらに1.5Lノーマルエンジンには、6速MT(マニュアルトランスミッション)も用意され、エンジンの回転数や変速操作をドライバーが完全にコントロールできる。

車両重量はノーマルエンジンのGが1000kg、ハイブリッドGは1060kgだから、ノーマルエンジンはボディが軽く操舵に対する反応も機敏だ。
峠道を走ると、ノーマルエンジンは進行方向が軽快に変わり、旋回軌跡を拡大させにくい。操舵角に応じて、車両を内側に向ける操作もしやすい。
後輪の接地性など走行安定性はハイブリッドと同水準だが、ノーマルエンジンは総じて曲がりやすい。
この機敏な走りは、ライバル車のフィットに対するヤリスの優位性でもある。

ヤリスとフィットを比べると、後席と荷室の広さでは、ヤリスは明らかに負けてしまう。視界や取り回し性も含めて、ヤリスは実用性ではフィットにかなわない。その代わりヤリスは、走りの楽しさでフィットに勝っている。
このヤリスの個性を大切にするなら、軽量でよく曲がるノーマルエンジンが推奨される。
買い得グレードはGだが、走りのよさをさらに高めるなら、上級のZを選んで16インチタイヤ+アルミホイールを8万2500円でオプション装着したい。走りが一層機敏になるからだ。1.5LノーマルエンジンならではのMTを選ぶ手もある。
以上のようにヤリスは、スポーツ派まで含めて、幅広いユーザーをターゲットにしている。ボディ剛性やサスペンションの取り付け剛性、それに基づく走行安定性など基本性能を入念に造り込んだから、6速MTで運転を安心して楽しめるコンパクトカーに仕上がった。
ノーマルエンジンとハイブリッドは、ユーザーの好み、使い方、走行距離、予算に応じて選べばいいが、ほかのコンパクトカーでは得られないヤリス独自の個性を追求するなら、1.5Lノーマルエンジンになるだろう。



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