ほぼ全滅 一生に一度は乗りたいけど…アメ車が苦戦する理由と打開策

 日本人で輸入車といえばアメリカ車と相場が決まっていた時代もあったり、フルサイズのアメリカ車は、いつの時代もクルマ好きを魅了している。

 しかし、現在日本では輸入車=ドイツ車という図式となっていて、かつて隆盛を誇ったアメリカ車は一部のモデル(ジープ)を除き存在感が薄くなっているが、アメリカ車の日本での苦戦は今に始まったわけではない。

 アメリカ車が日本で苦戦する要因とその打開策について渡辺陽一郎氏が考察する。

文:渡辺陽一郎/写真:JEEP、FORD、MERCEDES-BENZ、CHEVORET、HUMMER、CHRYSLER、CADILLAC

【画像ギャラリー】日本車にない魅力があれば売れる!! 1990年代~2000年代に日本でコアな人気のあったアメリカ車


輸入車におけるドイツ車のシェアは70%に到達!!

日本ではドイツ勢が猛威を振るっているが、アメ車ではJEEPが大健闘。特にここ10年くらいの販売台数の伸びは勢いがある

 輸入車の売れ行きを見ると、欧州車(特にドイツ車)の圧勝だ。

 2019年に日本国内で登録された海外メーカー製正規輸入車(日本メーカーの輸入車を除く)のトップ5ブランドは、日本自動車輸入組合の集計によると、上からメルセデスベンツ(6万6523台)、BMW(4万6814台)、VW(フォルクスワーゲン/4万6791台)、アウディ(2万4222台)、BMWミニ(2万3813台)であった。

 この5ブランドの登録台数を合計すると20万8163台で、海外メーカー製正規輸入車の70%に達する。

 逆に低調なのがアメリカ車だ。ジープは1万3354台と堅調だが、シボレーは500台、キャデラックは469台にとどまる。

 フォード、クライスラーブランド、ダッジブランドなどは、かつて日本でも輸入販売していたが、すでに撤退した。そのために日本で正規輸入されるアメリカ車は、大半がジープブランドになる。

フォードエクスプローラーはどのモデルもコンスタントな人気を誇ったが、フォードが日本市場を撤退したことで、JEEP車にユーザーが移っている

アメリカ車の衰退とドイツ車の隆盛

 ところが過去に遡ると、アメリカ車が堅調に売れた時代があった。

 例えば今から50年前の1970年は、今に比べると輸入台数が少なく、メルセデスベンツは1457台だ。この時にフォードは2028台、クライスラーは892台、シボレーも894台という具合で、アメリカ車はメジャーな存在だった。

 ところが1973年に第4次中東戦争が勃発して、オイルショックに発展する。ガソリン価格が世界的に高騰すると、アメリカでサイズダウンが始まった。

 例えば拡大路線で進化してきたキャデラックエルドラドは、1970年代前半には、V型8気筒8.2Lエンジンを当たり前のように搭載していた。

 それが1975年には、V型8気筒ながら排気量を5.7Lに抑えたコンパクトなセビルが発売され、日本にも輸入されてキャデラックのサイズダウンに驚かされた。

 1977年モデルからは、ほかのキャデラックもコンパクト化され、1976年式に比べると全長が200~300mm、全幅も90mmほど狭くなっている。

 この時にアメリカ車が中心だった輸入車のイメージが崩壊して、大きいことに依存しない欧州車が人気を高めた。

 1970年に1457台だったメルセデスベンツの輸入台数は、1975年に2725台、1980年には3887台、1985年には9194台、1990年には3万8985台と増えていった。

メルセデスベンツにとって190E(W201)の市場投入は販売規模を大きく拡大させ、日本でも大躍進。現在は日本で輸入車ナンバーワンメーカーに君臨

1990年代中盤にアメリカ車が復活

 アメリカ車は存在感を落としたが、今ほどの衰退ではない。

 1990年代の中盤にはフォードが好調に売れて、1996年には2万3273台を登録した。背景にはSUVのフォードエクスプローラーのヒットがある。

 この時期には同じくSUVのジープチェロキーも人気を高め、1996年にはジープブランドを含んだクライスラーの登録台数が1万7404台となった。

このモデルのチェロキーは日本で長きにわたり人気モデルに君臨。ホンダの販売によって大きく阪大台数を伸ばした

 1996年はアメリカ車が好調に売れた年で、シボレーも2万3732台を販売してピークに達している。この時代にはミニバンのシボレーアストロが人気を高め、SUVのブレイザーも堅調に売れたからだ。

 以上のように1990年代中盤のアメリカ車の販売状況を見ると、SUVが中心になって日本の需要を支えた。各ブランドとも1年間に2万台から2万5000台を登録しており、今日の販売実績に当てはめると、アウディやBMWミニと同等だ。

 当時のアメリカ車がSUVを中心に売れ行きを伸ばしたのは、日本車においても、SUVだけはジープやフォードをターゲットに開発されていたからだ。

正規販売されたモデルよりも、並行輸入車が数多く日本に上陸。1990年代でアメ車として一番の存在感を持っていた

 当時のSUVは、今のような前輪駆動の乗用車をベースに開発されたシティ派ではなく、後輪駆動ベースのオフロードモデルだ。

 1990年代中盤までの日本車では、パジェロ、ハイラックスサーフ、テラノなどが人気で、これらはすべてアメリカ車を参考に開発されている。アメリカ製SUVは日本車の先を走り、ユーザーにとっても憧れの存在になり得た。

キャラクターわけが明確になった時代

 ちなみに欧州車は、先に述べたオイルショック以降、セダン/ワゴン/クーペの商品開発をリードした。

 欧州は北米や日本に比べて日常的に高速走行の機会が多く、走行安定性やシートのホールド性が切実に問われる。かつてのアメリカ車が備えていた「大きくて豪華」と同様、欧州車が走りの魅力がわかりやすく注目を浴びた。

 ただし当時の欧州メーカーはSUVには慎重だった。高重心のボディは、当時の技術では走行安定性の確保が難しく、日常的に高速走行の機会が多い用途には適さなかったためだ。

 その結果、SUVはアメリカ車、セダン/ワゴン/クーペはドイツを中心とした欧州車とされ輸入車の性格わけが成り立った。

ドイツ車が強いのは、どんな時でもセダンの人気が高いこと。日本車を含めてセダン受難ではあるが、安くないCクラスの人気を見ても明らか

アメリカ車にしかない魅力とは?

 このように見てくると、輸入車にとって大切な要素は「日本車にない魅力」であることがわかる。

 アメリカ車の場合、オイルショック以前は、大胆なボディスタイルと大排気量エンジンによる豪快な加速などが魅力になって売れ行きを伸ばした。

過去の例から見ても大型ステーションワゴンは日本で一定人気がある。クライスラー300Cのワゴンのようなクルマの登場に期待がかかる

 1980年代に入って日本でSUVの関心が高まると、フォードエクスプローラー、シボレーブレイザー&トレイルブレイザー、ジープチェロキーといったオフロード指向のSUVが売れ筋になった。

 そして前述の通り、今でもジープブランドは人気が高い。特にミリタリージープの流れを受け継ぐジープラングラーが注目されている。

 日本の道路環境で使いやすいのは、前輪駆動をベースにしたレネゲードやコンパスだが、これらはシティ派の増えた国産SUVに似てしまう。ジープならではの「日本車にない魅力」で選ぶから、ラングラーが注目される。

 また一時的ではあったが、クライスラー300Cも人気を集めた。

旧型Eクラスのプラットフォームを使ったFRセダンとして人気が出たクライスラー300C。威厳のあるフロントマスクは若者から絶大な支持を受けた

 300Cのプラットフォームは、当時提携していたダイムラーのメルセデスベンツEクラスと共通だが、メッキを多用したフロントマスクや角張った外観は、古き良き時代のアメリカ車を想わせた。これも日本や欧州のセダンにはない魅力で売れている。

 大切なのは日本車や欧州車とは違う世界観と、その表現とされるボディスタイルだ。ワゴンスタイルのクライスラー300Cツーリングのようなクルマがあれば、今でも注目されるだろう。

 ジープブランドでは、ミリタリージープの流れを汲んだフロントマスク&フェンダーを備えるバリエーションが、ラングラー以外にもう少し欲しい。

 逆に今のキャデラックは、欧州プレミアムブランドに対抗する世界観が感じられ、デザインなどにはレクサスに似たところもある。

キャデラックはダウンサイジングターボを搭載するなどかつての大排気量で燃費が悪い、というイメージを払拭するも、ドイツ車の魅力の前に苦戦が続く

 無国籍的で、日本車や欧州車とは違うアメリカセダンの魅力は乏しい。だから同じキャデラックでも、LサイズSUVのエスカレードが注目される。

「これは絶対日本車では得られないカッコよさだよね!」と思えるアメリカ車を輸入すべきだ。

 そしてアメリカ車の魅力は、カジュアル感覚にあるから、装備はシンプルでもいいから価格を下げたい。スチールホイールのSUVが備えるようなスッピンのカッコよさこそ大切だ。

キャデラックブランドでは押し出しの強いSUVのエスカレードが人気。台数としては多くはないが、日本車にない魅力を持っている

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