1990年代中盤にアメリカ車が復活
アメリカ車は存在感を落としたが、今ほどの衰退ではない。
1990年代の中盤にはフォードが好調に売れて、1996年には2万3273台を登録した。背景にはSUVのフォードエクスプローラーのヒットがある。
この時期には同じくSUVのジープチェロキーも人気を高め、1996年にはジープブランドを含んだクライスラーの登録台数が1万7404台となった。

1996年はアメリカ車が好調に売れた年で、シボレーも2万3732台を販売してピークに達している。この時代にはミニバンのシボレーアストロが人気を高め、SUVのブレイザーも堅調に売れたからだ。
以上のように1990年代中盤のアメリカ車の販売状況を見ると、SUVが中心になって日本の需要を支えた。各ブランドとも1年間に2万台から2万5000台を登録しており、今日の販売実績に当てはめると、アウディやBMWミニと同等だ。
当時のアメリカ車がSUVを中心に売れ行きを伸ばしたのは、日本車においても、SUVだけはジープやフォードをターゲットに開発されていたからだ。

当時のSUVは、今のような前輪駆動の乗用車をベースに開発されたシティ派ではなく、後輪駆動ベースのオフロードモデルだ。
1990年代中盤までの日本車では、パジェロ、ハイラックスサーフ、テラノなどが人気で、これらはすべてアメリカ車を参考に開発されている。アメリカ製SUVは日本車の先を走り、ユーザーにとっても憧れの存在になり得た。
キャラクターわけが明確になった時代
ちなみに欧州車は、先に述べたオイルショック以降、セダン/ワゴン/クーペの商品開発をリードした。
欧州は北米や日本に比べて日常的に高速走行の機会が多く、走行安定性やシートのホールド性が切実に問われる。かつてのアメリカ車が備えていた「大きくて豪華」と同様、欧州車が走りの魅力がわかりやすく注目を浴びた。
ただし当時の欧州メーカーはSUVには慎重だった。高重心のボディは、当時の技術では走行安定性の確保が難しく、日常的に高速走行の機会が多い用途には適さなかったためだ。
その結果、SUVはアメリカ車、セダン/ワゴン/クーペはドイツを中心とした欧州車とされ輸入車の性格わけが成り立った。

アメリカ車にしかない魅力とは?
このように見てくると、輸入車にとって大切な要素は「日本車にない魅力」であることがわかる。
アメリカ車の場合、オイルショック以前は、大胆なボディスタイルと大排気量エンジンによる豪快な加速などが魅力になって売れ行きを伸ばした。

1980年代に入って日本でSUVの関心が高まると、フォードエクスプローラー、シボレーブレイザー&トレイルブレイザー、ジープチェロキーといったオフロード指向のSUVが売れ筋になった。
そして前述の通り、今でもジープブランドは人気が高い。特にミリタリージープの流れを受け継ぐジープラングラーが注目されている。
日本の道路環境で使いやすいのは、前輪駆動をベースにしたレネゲードやコンパスだが、これらはシティ派の増えた国産SUVに似てしまう。ジープならではの「日本車にない魅力」で選ぶから、ラングラーが注目される。
また一時的ではあったが、クライスラー300Cも人気を集めた。

300Cのプラットフォームは、当時提携していたダイムラーのメルセデスベンツEクラスと共通だが、メッキを多用したフロントマスクや角張った外観は、古き良き時代のアメリカ車を想わせた。これも日本や欧州のセダンにはない魅力で売れている。
大切なのは日本車や欧州車とは違う世界観と、その表現とされるボディスタイルだ。ワゴンスタイルのクライスラー300Cツーリングのようなクルマがあれば、今でも注目されるだろう。
ジープブランドでは、ミリタリージープの流れを汲んだフロントマスク&フェンダーを備えるバリエーションが、ラングラー以外にもう少し欲しい。
逆に今のキャデラックは、欧州プレミアムブランドに対抗する世界観が感じられ、デザインなどにはレクサスに似たところもある。

無国籍的で、日本車や欧州車とは違うアメリカセダンの魅力は乏しい。だから同じキャデラックでも、LサイズSUVのエスカレードが注目される。
「これは絶対日本車では得られないカッコよさだよね!」と思えるアメリカ車を輸入すべきだ。
そしてアメリカ車の魅力は、カジュアル感覚にあるから、装備はシンプルでもいいから価格を下げたい。スチールホイールのSUVが備えるようなスッピンのカッコよさこそ大切だ。

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