ロータリーエンジンの活用の道
ロータリーエンジンは、ハウジングの内側をローターが回転する、つまり燃焼室が移動しながら燃料を燃やすので、燃焼温度が高くなりすぎない。そこで、たとえば水素を燃やすのに適している。さらに、燃焼の質にあまりこだわらず、動力を得ることができる。
したがって、災害時などに燃料の質にこだわらず動力を得ることが可能になる。そこから考えられるのが、発電機用だ。
マツダは、3代目のデミオを使い、2012年にデミオEVを法人向けにリース販売した。さらにこれを基に、13年にロータリーエンジンを使った発電機を搭載するレンジエクステンダーを試作した。
発電用に使われたロータリーエンジンは、そのためだけに特別に新しくつくられたもので、かつて車両に搭載されたものに比べ排気量が小さく、かつ1つのハウジング/ローターのみを、水平に搭載した。
これによって、デミオのようなコンパクトハッチバック車の荷室床下に燃料タンクと共に収めることができたのである。荷室床下に搭載されながら、後席に座っても振動や騒音は極めて少なかった。回転体で構成されるロータリーエンジンの特性が活きている。
デミオEVの一充電走行可能距離が200kmであったのを、発電機を利用することでさらに180km遠くまで走行できるようにした。すなわち、計380km走れる計算になる。ロータリーエンジン活用の道が、一つ開けたのであった。
次期RE搭載スポーツカーは誕生するのか?
そして、「RX-9(次期ロータリーエンジン搭載スポーツカー)」の行方である。ここから先は、私の想像であり期待の話でもあり、メーカーからの根拠ある情報を裏付ける内容ではない。
ドイツのポルシェが、今年タイカンを発売する。また、英国のロータスもEVスポーツカーを昨年発表し、富士スピードウェイで公開した。
スポーツカーもEVの時代が訪れている。しかしスポーツカーに限らず、EVになればテスラのモデルSでも、ポルシェのエンジン車と遜色ない加速性能を備え、スポーツカーの存在意義が改めて問われる時代にもなりつつある。
それでもポルシェは、タイカンにテスラ・モデルSとは違った価値を与えるため、同等の加速性能だといっても、それを何度も繰り返せる能力を実現したという。
しかしそのために、高度なバッテリー制御を行う必要があり、液体冷却方式を使う。それは、速度無制限区間のあるアウトバーンを持つドイツの自動車メーカーのやり方であり、メルセデス・ベンツのEQCも液体冷却だ。
ところが、EVで使い終えたリチウムイオンバッテリーは、まだ60~70%の容量を残しており、これを再利用しなければ資源を無駄にすることになる。クルマの象徴ともなるスポーツカーが、環境の世紀といわれる21世紀に、いっぽうで資源の無駄に加担してよいのだろうか。
日産リーフの意義は、空冷でバッテリー制御を行うことで、使用済みバッテリーの再利用を実現していることだ。
マツダも、MX-30を皮切りにEV開発を進め、その先にRX-9を見据えるとするならば、空冷バッテリーでスポーツカーとしての魅力を表現する必要がある。
MX-30があえて一充電走行距離を200kmとしたのも、実用の範囲で資源を無駄にしないためだ。
この手法をRX-9へ展開すれば、バッテリー搭載量を少なくしたライトウェイトEVスポーツを切り拓ける。そもそも、コスモスポーツもRX-7も、ロードスターとは違ってもライトウェイトスポーツの領域だろう。
そこにRX-9を当てはめれば、少ないバッテリーでライトウェイトEVスポーツとし、それによって軽さを活かした軽快な操縦性を実現し、なおかつロータリーエンジンのレンジエクステンダーを搭載することで、400km前後の走行距離を実現すれば、実用に足るスポーツカーになるのではないか。
少ないバッテリーを空冷すれば、EV後のバッテリー再利用が叶う。これこそ、ウェル・トゥ・ホイールで高効率エンジンの環境負荷がEVと変わらないと主張してきたマツダの姿勢とも合致するEV戦略ではないか。
欧州のメーカーのように、20世紀に邁進したクルマベストのままのEV開発しかできないようでは、21世紀には最適といえないのである。
健全な社会と快適な未来を展望できるRX-9を考えるなら、EV+ロータリーエンジンによるレンジエクステンダーの組み合わせが、最適ではないだろうか。
そこを最大に表現する魂動デザインの新たな造形も、ぜひ見てみたいものだ。
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