初体験でのハチャメチャ騒ぎ
問題は、これから先に起こった出来事だ。
それが、東洋系マフィアが仕切る、公道での直線路レース「ストリートドラッグ」と「ショー」と呼ばれる”怪しげな有料イベント”だ。
ストリートドラッグは、1960年の若者たちの生き様を描いた映画「アメリカン・グラフィティ」(1973年/ジョージ・ルーカス監督作品)をモチーフとしたものだ。参加車は、各年代シビックのほか、アキュラRSX(インテグラ)などFF(前輪駆動車)が主流だった。
いっぽう、「ショー」のモチーフはズバリ、東京オートサロンである。ホンダ車のほか、日産「240SX(シルビア)」が人気となったが、そうした出展車以外にショーの内容は過激な傾向が強かった。
キャンギャルの衣装は肌の露出量が極めて大きく、入場者には年齢確認をせずにアルコール飲料を販売したり、一部では違法薬物の売買の可能性も”噂”された。
アメリカの若者たちにとって、こうした”かなりヤバい”感じのクルマを使ったイベントは初体験であり、未成年者の間で「なんだか凄く楽しいところがある」と話が広まり、ショーやレースの内容はどんどんエスカレートしていく。
そうしたなか、マフィアグループ間での権力闘争を起こった。そんな現場に筆者は居合わせているが、当局の抑え込みは凄まじかった。
後に公開される、映画「ワイルドスピード(原題:ザ・ファスト・アンド・ザ・フューリアス)」そのままの情景である。
「ワイルドスピード」は、こうした1990年代後半の西海岸の社会情勢を、ドキュメンタリーに近い形で描いた作品だ。筆者も初作の撮影現場にいたが、俳優以外の出演者は手弁当で愛車を持ち込んだ一般ユーザーたちだった。
彼らは「ジェネレーションX」(1965~1980年生まれ)と呼ばれる世代である。
アメリカにないクルマへの憧れ
話をいま(2020年)に戻そう。
ジェネレーションX(現時点で40~55歳)の彼らこそ、25年ルールの恩恵を受け、1990年代日本車をアメリカで購入しているユーザー層の中核だ。
25年ルールで第一人気となっているのは、やはり「スカイラインGT-R」だ。
アメリカには、ハコスカ(PGC10/KPGC10型)、ケンメリ(KPCG110型)、そしてR32、R33、R34までのGT-Rは正規輸入されていない。
ジェネレーションXにとっては、1990年代後半から2000年代前半に夢見たR32~R34を「大人買い」するのだ。
また、「S14シルビア」は1990年代当時、2.4Lエンジン搭載の「240SX」に日本から輸入した2Lターボ(SR20)にエンジンスワップするのが流行していたため、現在はスワップなしの現車としてS14への需要もある。
「80スープラ」は、1990年代当時の正規輸入車では日系チューニングカー最高峰だったため、需要がある。
そのほか、三菱「ランエボ」はアメリカではエボⅦから正規輸入のため、エボⅥ以前のモデルへの関心が高い。
1990年代後半からの日系改造車ブームが起こるまで、アメリカでの日系車コレクターの主流といえば日産「Z(フェアレティZ)」とマツダ「RX-7」だったが、これらモデルでも25年ルールの活用はあるが、ジェネレーションX向けの主流ではない気がする。
同じく、ドイツ車、フランス車、イタリア車などのコレクターでも25年ルールを使うが、日系改造車ブームとは直接的なつながりはなく、各国で急激な高値が付くまでの状況にはなっていない印象である。
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