■「技術展示」に未来の可能性を見る
技術展示も重要だ。コンセプトカーの展示に比べると地味だが、エンジンが単体で置いてあったり、ハイブリッドシステムや燃料電池などのユニット、全体の構成を見せることが多い。
特に今の自動車業界は、電動化と自動運転という2つの課題に直面している。電動化ではフランスとイギリスの政府が2040年(23年後)にはガソリンとディーゼルエンジン車の販売を禁止すると発表した。
理由は二酸化炭素の排出抑制と大気汚染の防止で、実現すればこの2か国では電気自動車と燃料電池車しか走れない。
フランスとイギリスの自動車需要はEU(欧州連合)全体の約30%で、ほかのEU加盟国の追従も予想されるから、各メーカーにとって電気自動車の開発が急務になった。
先般発表されたトヨタとマツダの業務資本提携も、理由のひとつに電気自動車の共同技術開発を挙げており、東京モーターショーでも技術展示を活発に行う。
自動車運転も同様だ。そのセンサーにはカメラやレーダーが使われ、自動運転の基礎となる運転支援技術は、緊急自動ブレーキを作動できる安全装置とセットになっている。各メーカーとも「安全技術+運転支援技術の進化=将来の自動運転技術」という考え方で展示を積極的に行う。
自動車にとって環境と安全は古くから重要な課題だったが、特に近年は地球温暖化、高齢ドライバーの増加などにより状況が切迫している。その一方で技術が向上して、電気自動車や運転支援が高い実用性を発揮できるようになった。
従って今後は自動車技術が急速に変化する。まさに激動するクルマ時代の転換点だ。モーターショーでは株価の上昇も狙って積極的なアピールを行うから、会場に出かけると、転換期の証人になることができる。
このように将来のクルマ社会の行く末が分かることが、モーターショーに出かける一番の理由だ。
■車の「今」を見る楽しみもある
2つ目は将来の話ではなく、今のクルマが良く分かること。モーターショーの会場には主だった市販車がズラリと並べられ、商用車を含めてドアを開いて車内を見られる展示車も多い。
今のクルマがどのようになっているのかを具体的に知ることができる。例えば軽自動車の車内を見れば、好調に売れる理由も納得できるだろう。
クルマを買いたいユーザーにも便利だ。各メーカーのブースを巡りながら、購入の候補に挙げている展示車をチェックすると、内外装の様子はおおむね把握できる。
つまり東京モーターショーに出かける理由として、クルマ選びの情報収集も挙げられるわけだ。
■各ブースの説明員と話すチャンス
そして3つ目の理由は、メーカーの開発者と直接話ができること。東京モーターショーのスタッフは多岐にわたるが、説明員の中にはメーカーの開発者も混ざっていて、来場者と話をしながら反応を探っている。
開発者は頭脳明晰で記憶力も優れているから、読者諸兄が印象に残ることを言えば、将来の車両開発に影響を与えるかも知れない。
また日頃そのメーカーに対して抱いている不平や不満を開発者にぶつけても良いだろう。
もちろん程度をわきまえる必要はあるが「私は御社の製品を使っているが、こんな故障が発生して頭にキテるんだぞ!」といえば、ストレスの発散になる。またそれはメーカーにとって、貴重な情報にもなり得る。
とまあ3つの理由を挙げたが、東京モーターショーはユーザーと自動車業界が一緒になって盛り上がるお祭りだ。大いに楽しみましょう!
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