■コンパクトな車体にアイデアを満載
標準の225/80R17.5に対し37X12.50R17.5という、トヨタ・メガクルーザーと同サイズの大径タイヤを履くアテナは、デパーチャアングル確保のためにリアオーバーハングのフレームを約325mmカットしてある。
コンパクトな箱型リアボディを架装した姿は安定感とともにダカールの競技トラックのような迫力を感じさせる。
タイヤ外径が約130mm大きい分車高は上がっているが、サスペンションはノーマル(後輪はホイール取り付け面に片側66mmのスペーサーを装着してトレッドを拡幅している)。
キャブ前面にはフロントウインドウを障害物から守るブッシュガードとLEDの補助灯を装着し、ガードとの干渉を避けるためにバックミラーは海外の左側通行仕様に変更。バンパー部には電動ウインチが収まりアンダーガードも備わる。
パブコ製のリアボディは内部が前後3室に分けられ、前方の2室は側面の跳ね上げ式扉を開けてアプローチする引き出し式の収納、最後部はオフロードバイクも格納できるカーゴスペースで、同じく跳ね上げ式のテールゲートが付く。
キャブとリアボディ前部のルーフ上にはキャブ天井部の開閉式ハッチを使って室内から直接出入りできる作業用スペースを用意。作業時はホイールベース間4箇所の手動式アウトリガで車体の安定を図るなど使い勝手を高めるアイデアが随所に盛り込まれている。
高くなったキャブフロアのため乗り降りは容易とはいえず、標準装備のステップの下に足掛けがもう一段欲しい。大型車のように乗降時につかまる手すりがドア開口部内にあっても良いかもしれない。
室内は2人乗車仕様で、中央にルーフハッチ使用時のステップを配置。レカロ製のシート(シートサスペンションは備わらない)は座面部のサイドサポート高が低いタイプとして乗降性に配慮している。ヘルメットを被った場合への配慮なのか、座面の高さは標準のシートよりも低く感じられた。
DINスペースに拡声器のアンプが付くほかはインパネは変更なし。ギアボックスは5段マニュアル仕様だった。2WD/4WDの切り替えは(インパネ上の)スイッチで行なう。
■被災地の守護神アテナに試乗! 悪路走破性を重視したセッティングに納得
試乗時は空荷だったが、車両重量は約3.9tとのこと。架装重量が1t近い計算だが、特種車では珍しいことではない。
インパネ部に配置されたシフトレバーはワイヤーの配索が良いのか節度感が明確で、とりわけセレクト方向は小さいストロークで操作できる。4t程度の車重では2速発進は楽々。
DUONICの6段とほぼ同等のギアレンジを5段でカバーするため、各段のギア比は比較的離れているが、フィアット・パワートレーン社製F1C型をベースとする4P10型は日本の小型トラック用エンジンとしては例外的に高回転までストレスなく回る。
4000rpm近くまでトルクが落ちないので、少々引っ張り目で変速すれば、ギアの繋がりも良好だ。
排気ブレーキの効きが穏やかなのは小排気量エンジン共通の悩みだが、高い回転数域では相応の存在感が見られる。
今回は三菱ふそう・喜連川研究所内のオフロードコースで乗せてもらったが、ワダチ掘れやギャップの目立つグラベル路でも空気量の多いタイヤにより乗り心地は良好。
速度を上げるとロールがやや大きい印象もある。ただ、基本的にはロール剛性よりも低速での悪路走破性を重視する車両だと思う。
4WDへの切り替えはスイッチ操作一つ。ハブがフリー状態の場合はトラックを降りて手動でロックする必要がある。
パートタイム4WDとマニュアルフリーハブの組み合わせは今となっては珍しい存在だが、プリミティブで壊れるところの少ないシステムが、道具としての自動車には合っているように思う。
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アテナは、昨秋の「東京モーターショー」にも出展されたが、屋外会場だったので見逃した人も多いはず。そのアテナは小改良を施し、7月30日にメディア向けに開催される三菱ふそう「Fuso Future Solutions Lab」に登場する予定。日本の災害救助支援に頼もしい味方がスタンバっているのだ!
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