販売会社の淘汰も加速
全店が全車を扱うと、販売会社同士の競争も激しくなる。今まではハリアーはトヨペット店、ヤリスはネッツトヨタ店の専売だったから、購入希望のユーザーは少し不便でも買いに出かけた。しかし今はその必要はない。自宅付近の販売店でどの車種でも買える。
従って販売店の立地条件も含めて、販売力の高い販売会社は売れ行きを伸ばす。そうでない販売会社は新規顧客を獲得しにくく、場合によっては、力の強いトヨタの販売会社に顧客を奪われる可能性もある。
その結果、店舗数が減ると、懇意にしていた近所のディーラーを失うことも考えられる。
また系列による専売車種があった時は、トヨペット店を閉店すれば、その地域にハリアーやハイエースを供給できなくなった。ネッツトヨタ店も、閉店すればヤリスの販売が途絶えてしまう。
それが全店で全車を扱うと、周辺の店舗で互いに補える。つまり全店が全車を扱う目的には、車種の削減と併せて、店舗の統廃合を容易にすることも含まれる。トヨタが全店全車併売に踏み切った以上、今後は販売会社同士の競争も激化して、店舗の統廃合も急速に進む。
その兆候はすでに見受けられ、国内で展開するトヨタの店舗数は、2010年にはレクサスを除いて5000箇所を超えたが、現在は約4600箇所に減った。
2009年に発売された先代プリウスが全店併売になり、アクアもそれに続き、販売系列の形骸化が始まった。この流れが全店全車併売の体制になって、一気に加速する。
新車店舗の一部をカーシェアリングステーションに変更する構想などもあるが、販売店からは「トヨタの販売会社同士の競争はすでに激しくなり、店舗の削減は避けられない」という話も聞かれる。全店全車併売の体制は、ユーザーにとって欠点が目立つ。
今後のトヨタは、車種や販売店を減らす代わりに、ユーザーに対してどのような新しいサービスを提供できるのか。CASE(通信機能・自動運転・カーシェアリング・電動化)がキーワードになっているものの、具体的なカーライフの方向性がいまひとつわかりにくい。
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