かつての日本のクルマ販売は、チャンネル制が一般的だった。チャンネル制とは店舗によって扱っている車種が違う販売方法だ。しかし、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スズキは全車全店扱いに切り替えた。
それに対しトヨタは唯一販売チャンネル制を堅持してきたが、東京地区は販売会社を統合し、2019年4月にトヨタモビリティ東京になって全車全店扱いとし、その1年後の2020年5月からは全車全店扱いを全国展開した。
既存の販売系列は残るが、実質的にチャンネル制をやめたのだ。
全車全店扱いにするとユーザーはどこに行ってもすべてのクルマが購入できるというメリットがある。人気車の販売台数も伸びる傾向にある。しかし、人気車にセールスが集中しするなど全車全店扱いに弊害がないわけではない。
クルマの販売事情に詳しい渡辺陽一郎氏が、トヨタの全車全店扱いの明と暗について考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、平野学、奥隅圭之、池之平昌信、ベストカー編集部
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トヨタの新しいクルマは軒並み納期が長期化
最近の国内販売はコロナ禍の影響もあって下がり気味だが、トヨタ車は堅調に売れている。国内で売られる小型/普通車の約半数を占めて、販売ランキングの上位にもトヨタ車が多く入る。
ただし納期は全般的に長い。2020年8月下旬に販売店に尋ねると、7月に小型/普通車販売ランキングの1位になったヤリスと2位のライズは、両車とも3カ月を要する。8月下旬に契約しても、納車は11月の中旬から下旬になってしまう。
この内ライズは、ダイハツが開発と製造を行うOEM車だ。ダイハツブランドで販売されるロッキーの納期は約2カ月だから、実質的に同じクルマなのに、登録台数の多いトヨタブランドのライズは約1カ月長い。
新型ハリアーは2020年6月の登場で設計が新しく、高価格車でありながら、小型/普通車販売ランキングの4位に入った(3位はカローラシリーズ)。
この納期は長く、中級のGが約4カ月だ。8月下旬に契約しても、納車は12月になる。さらに上級のZは、納期が6カ月に達して、8月の契約なら納車は2020年2月だ。Z専用のオプション装備となる調光パノラマルーフを装着すると、納期は8カ月に伸びて2020年4月頃まで待たされる。
このほかRAV4も以前に比べると短くなったが、今でも約2カ月は要する。
プラグインハイブリッドのRAV4 PHVは、メーカーのホームページによると「生産能力を大幅に上まわる注文をいただき、年度内(2020年3月まで)の生産分は終了」しているという。
販売店に問い合わせると、「お客様からの注文は受けるが、納期はわからない。メーカーへの発注が可能になった段階で、順番にこなしていく」とのことだ。
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