日本車は1990年代まではどのメーカーも車種を増殖させ続けてきたが、21世紀に入り、高効率化を目指し積極的に車種整理を敢行している。
その対象はビッグネームと言われる慣れ親しんだ車名も例外ではなく、日本市場からは多くのクルマが消えていった。
しかしかつて日本で販売されていながら現在消滅したモデルのなかには、海外専用車として販売されているものもある。
日本で販売されていたクルマとは全く関係のない別グルマになったもの、クラス替えしたモデル、正常進化を続けているモデルなどさまざまです。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、DAIHATSU
【画像ギャラリー】日本で車名消滅後も存続!! 懐かしい車名の海外専用車の最新モデルをもっと見る!!
トヨタレビン:中国で復活!!
トヨタの大衆セダンカローラの派生車であるカローラレビンは、2代目カローラをベースとした初代モデル(TE27)が1972年にデビューし、いつの時代も若者の心を熱くしてきた。
シリーズ4代目となるAE86は人気漫画『頭文字D』の影響もあり、兄弟車のスプリンタートレノとともに絶版後にブームが到来したほどだ。
FF化された後も根強い人気があったレビンだが、1995年にデビューしたAE110系が最後のモデルとなり、惜しまれつつ2000年に生産終了となった。
そのレビンの車名が復活したのは、日本ではなく中国。2014年の北京モーターショーで、中国仕様カローラの兄弟車となるレビンHEVとして世界初公開され、2015年に生産・販売が開始された。
そして2018年にカローラがフルモデルチェンジして刷新されたのに合わせ、中国で販売するカローラの兄弟車としてレビンも新型に切り替わっている。
日本のカローラが国内専用の全長4495×全幅1745×全高1435mmなのに対し、レビンのボディサイズは、北米、欧州モデルと同じ全長4630×全幅1790×全高1435mmで、ホイールベースも日本モデルだけ60mm短縮された2640mmとなっている。
中国のカローラにはレビンというスペシャルな車名が与えられたが、日本のカローラは世界で唯一の専用ボディのスペシャルなのだ。
日産マキシマ:北米で健在!!
日産マキシマは、1981年にブルーバード(910型)をベースに北米で販売する日産ブランドの最上級セダンとして登場し、日本での販売されたのは2代目(1984年デビュー)との3代目(1988年デビュー)だ。
2代目はブルーバード(U11型)のフロントを90mm延長し、2L、V6SOHCエンジンを搭載し、ブルーバードと差別化されていた。1984にデビューした時にはブルーバードマキシマだったが、後にマキシマに変更された。
日本車初のV6搭載のFFと話題になったが、ブルーバードとデザインが変わらず、単なる上級モデルにしか認識されなかったため、トヨタのマークII3兄弟の相手になり得ず。
3代目は2代目の苦戦を受け専用ボディが与えられ、全幅が1760mmの日本車初の本格3ナンバーボディで登場。エンジンも3L、V6を搭載し上級移行した。
しかし、クラウン、セドリック/グロリアでさえ5ナンバーサイズだった当時、マイナーな存在であるマキシマにとってはオーバークォリティで、販売向上にはつながらず苦戦。ただ、広くて快適なリアシートは好評だった。
3代目マキシマは1993年に日本仕様が生産中止となり、その後はセフィーロに統合された。
これでマキシマの車名は初代以来、輸入車専用となってしまった。
マキシマは北米ではスポーツセダンとして人気で、8代目の現行モデルは2015年にデビュー。全長4897×全幅1859×全高1435mmのミドルクラスセダンとして進化を続け、エンジンは3.5L、V6DOHCを搭載している。
次期モデルは2021年に登場し、100%EVセダンとなるという情報もある。
ティアナが日本マーケットから消滅したこともあり、マキシマが再び日本で販売される可能性はゼロではなさそうだ。
ホンダシティ:アジアで健在!!
ホンダのリッターカークラスのコンパクトカーとして1981年にデビューしたのがシティで、当時としては珍しい背の高い『トールボーイコンセプト』がウケて大ヒット。
ターボ、ターボII、カブリオレなどどれも話題になったホンダの歴史に残る名車だ。
その後を受けて登場した2代目は販売不振となり、1995年に生産終了となった。まさに天国から地獄とはまさにこのことだろう。ロゴが後継車となり、これをもって日本でのシティの販売は終了となった。
しかし、そのシティの車名は日本でシティが消滅した翌年に、アジア向けの小型セダンの車名として復活。それは現在も継続されている。
海外向けセダンのシティは初代、3代目は日本では販売されなかったが、2代目はフィットベースのセダンを2002年から2008年までフィットアリアの車名でタイから輸入するかたちで日本で販売された。
2020年に日本での販売を終了したグレイスは、4代目シティの日本仕様として2014年から販売され、グレイスは専用1.5Lエンジン、1.5Lハイブリッドをラインナップしてシティと差別化されていた。
そのシティは2019年にタイでフルモデルチェンジされ、全長4553×全幅1748×全高1467mmと日本では3ナンバーサイズとなるため、グレイスまたはその後継モデルとして日本に導入される可能性は低いと思われる。
ホンダアヴァンシア:中国で復活!!
アヴァンシアはホンダがチャレンジしたニュージャンルカーのひとつで、アコードをベースとした日本専用車だった。
ボディタイプはステーションワゴンのようだが、ホンダは『4ドアクラブデッキ』と称していた。アコードエアロデッキに通じるロングルーフが特徴となっている。
インパネシフトの採用により前席から後席へのウォークスルーを可能とし、広いだけでなくスライド&リクライニングなど後席の快適性を重視していた。
しかし、アコードワゴンと乗用タイプミニバンのオデッセイの中間に位置するというのが足かせになり、中途半端感は否めず、ユーザーはオデッセイ、アコードワゴンに流れていった。
マイチェンでローダウン、専用サスペンションチューニングなどを施したスポーツグレードのヌーベルバーグを追加したものの、シリーズの販売は好転せず、2003年に生産終了。
そのアヴァンシアの車名は2016年に中国で復活。日本ではワゴンタイプだったが、ルーフラインが美しい、大型のクーペSUVとして生まれ変わった。
全長4858×全幅1942×全高1675mmというボディサイズは、全長こそCR-Vより少し長いだけだが、全幅はかなりワイド。
エンジンは1.5L、2Lの直4ターボの2種類で、22万元(約340万円)から購入できる。
ダイハツテリオス:アジアで健在!!
ダイハツテリオスは1997年から2006年まで販売されたダイハツのコンパクトSUVで、軽自動車バージョンにテリオスキッドもあった。トヨタにOEM供給され、キャミとして販売されていた。
1.3L、直4エンジンを縦置きにするFRと4WDのラインナップで、見た目以上の悪路走破性を持っていたので、当時は影の実力者と言われていた。
そのテリオスの後継モデルとして登場したのがビーゴで、テリオスの車名は日本では1代限りで消滅してしまった。
ただ、東南アジアではテリオスの車名は健在で、ビーゴをテリオス(2代目)として販売。そしてビーゴが消滅後もテリオスは残り、現在3代目となっている。
2017年11月に登場した3代目テリオスは、全長4435×1695×全高1705mm(ロッキーは全長3995×全幅1695×全高1620mm)という日本の5ナンバーサイズで、最低地上高も220mmと高く、おまけに3列シートで7人が乗れる。
ダイハツはコンパクトSUVのロッキーの販売が好調だが、コンパクト3列シートSUVのテリオスを日本導入するのもありだと思う。
番外編/日産パルサー
日産チェリーの後継車でヨーロピアンテイストを纏ったハッチバック&セダンとして人気のあったパルサーは、2000年に5代目モデルが日本で販売終了となり、22年の歴史に終止符を打った。
日本での後継車は2000年登場のブルーバードシルフィや2004年登場のティーダだった。
そのパルサーの車名は、2006年に世界中から消滅したが、2013年にオーストラリアで復活したのを皮切りに、ニュージーランド、タイなどでも復活の狼煙を上げた。
そして2014年には欧州でもパルサーの車名が復活し、日本導入の期待もかかったが、2019年3月をもって復活したパルサーの車名は再び消滅してしまった。