電動ハーレーが日本でも発売決定。これぞ多角化計画の急先鋒だ!
ブロンクスの投入見送りによって、ハーレー唯一のスポーツモデルになりそうなのが電動バイク「ライブワイヤー」だ。このモデル、0-100km/h加速が約3秒と怒濤の加速力! 電動ならではのパフォーマンスとクラッチ操作不要のイージーさは、いかにも次世代バイクといった仕上がりだ。
航続距離は235km(シティモード)と決して長くはないが、間違いなくクリーンなイメージを訴求できる。バイク電動化の先手を打つことで、ブランドの魅力を高められるとハーレーは見ているのだ。
2018年にハーレーが発表した「More Roads to Harley-Davidson」は、2022年までを見据えた経営計画だ。その中に盛り込まれた将来モデルの中でもっとも早くリリースされるのがライブワイヤーということになる。
新機軸の第1弾だからこそ社会的インパクトや独自性が必要との考えから、電動モデルが選ばれた。バイクのメジャーブランドでは、オンロードスポーツのEVはまだ発売されていない。ここで1番乗りを果たすことで、ハーレーのイメージアップに結び付ける狙いがあるだろう。
それだけでなく、ライダー歴が浅い人ほどライブワイヤーに関心が高いという調査結果もあり、新規顧客開拓にも期待をかけたモデルとなっている。
ライバルはBMW? 米欧2大ブランドの競争が激しさを増す
オフロードモデル、そして電動オンロードモデルと、新たな2機種が出揃いそうな2021年のハーレー。ほぼ同時に新しい領域にチャレンジする背景には、販売台数減少という厳しい現実がある。
2008年から2018年にかけて、世界での販売台数3割減という苦境に立たされているのだ。日本でも2019年度の販売台数は8747台と、最盛期の6割弱まで落ち込んでおいる。グローバル市場全体を見据えながら、回復に向けた起爆剤が必要な状況だ。
2021年に新規投入するパンアメリカは、大排気量オフロードモデル。世界的に販売好調なジャンルである一方で、BMWのGSシリーズが圧倒的な人気を誇っている。近年、BMWはGSシリーズの成功を足がかりに販売台数を伸ばし続けており、ハーレーとしてはこれを牽制したいのだろう。
世界規模で見ればハーレーの販売台数は約21万台、BMWは約17万台とまだ開きはあるものの、勢いはBMWにある。うかうかしていられないハーレーとしては、BMWが強いジャンルにくさびを打ち込んでおきたいのだ。
かつてBMWは大排気量ツーリングモデルが主要ラインナップを占め、“おじさんバイク”というイメージが強かった。それがこの10年ですっかり様変わりしたのは、積極的な多角化の成果だ。
2009年、日本メーカーにぶつけるように1000ccスーパースポーツモデルS1000RRをリリースすると、以後も並列6気筒エンジン搭載の高級モデルや、逆に身近な310cc中型モデルなど、貪欲に拡大路線を突き進んできた。2020年にはR18というクルーザーをデビューさせ、巨人ハーレーにガチンコ勝負を挑んでいる。
ハーレーは長らくクルーザーといういちジャンルに依存したことで、おじさん指数を高め販売台数の停滞を招いてしまった。同じような状況にあったBMWは、多角化によって伸び悩みを打破した。
ハーレーも2匹目のドジョウを狙うがごとく、オフロード、そして電動化へのジャンル拡大に活路を見出そうとしている。濃厚なファンを多いハーレーのこの戦略が吉と出るか、凶と出るか、注目したい。
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