■フルモデルチェンジ級の「進化」! 新型ISが秘める動的資質
(TEXT/渡辺敏史)
2020年11月5日に発売された新型IS。フルモデルチェンジ級のエクステリア刷新に目が奪われつつも、内容的には2019年に運用開始したトヨタの下山テストコースで走りを鍛えた初めてのレクサスということで興味が湧いてくる。
現在、開発に供されている周回路はニュルブルクリンク北コースだけでなく、その周辺に広がるカントリー路の路面環境を参考にしていて、一部の入力状況は東富士の周回路でも再現できるようになっているなど、開発のアジャイル化を充分に意識したものになっている。
下山テストコースの周回路は、昨年の運用開始時の取材会で走った経験がある。
その際に乗ったのはGRスープラだったが、地形を活かしたダイナミックなアップダウンの最中にイヤらしい複合コーナーや逆バンク、ジャンピングスポットなどをこれでもかと配するなど、その意地悪ぶりに呆れたほどだ。
実際、新型ISの開発では従来ニュルブルクリンクでしか確認できなかったような大入力が再現できるようになったぶん、時間やコストの削減に大いに役立ったという。
ましてやこのコロナ禍では移動も著しく制限されるなか、その再現度の高さは開発密度の向上にも貢献したそうだ。
新しいISのグレード体系が大まかに標準系とFスポーツ系に分けられるのは現行型と同じ。搭載されるパワートレーンも2L直列4気筒直噴ターボ、2.5L直列4気筒ハイブリッド、3.5L V型6気筒の3つが引き継がれる。
とはいえ、2Lターボはその特性を活かすべく8速ATのアダプティブ制御が見直され、2.5Lハイブリッドはバッテリーの持ち出しを増やしてモーターの稼働領域を広げるなど、動力性能にも進化の跡がみられる。
が、やはり新型ISの中身的なハイライトはシャシーの徹底したリファインだろう。フレームにはコアサポートやCピラー部を物理的に強化、メインフレームにはスポットの増し打ちや構造接着剤の多用で剛性を高めている。
ハブ形状は全面的に見直され、ホイールとの締結をボルト式からナット式へと変更。バネ下の軽量、高剛性化を果たした。
先に平坦なクローズドコースでもダイナミクスの向上は確認していたが、改めて、生まれ故郷の下山テストコースで乗る新型ISは「すっきり」と「奥深い」というレクサスが目指す走りのテイストを確実に具現化していることを感じさせてくれた。
特にタイヤの摺動の精度感や路面追従の軽やかさは、このクルマの価値の再定義に繋がっている。
ライバルたる欧州勢とは明確に異なる動的資質を秘めた新型IS。軽さや価格のみが特徴にあらず。徹底的に洗練されたスポーティネスを体感できる。
■レクサスIS300h Fスポーツ(FR)主要諸元
・全長×全幅×全高:4710×1840×1435mm
・ホイールベース:2800mm
・最小回転半径:5.2m
・車両重量:1690kg
・エンジン:直4、2493cc DOHC+モーター
・エンジン最高出力/最大トルク:178ps/22.5kgm
・モーター最高出力/最大トルク:143ps/30.6kgm
・WLTCモード燃費:18.0km/L
・トランスミッション:電気式無段変速
・駆動用バッテリー:ニッケル水素電池
・サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
・タイヤサイズ:F)235/40R19 R)265/35R19
・価格:580万円
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