「エンジン中心」から変革しつつあるホンダの開発体制
本田技術研究所が車両開発を行う従来の方式は、ホンダの強みであり、近年では伝統になっていた。これを当時の八郷隆弘社長が改革するには、さまざまな抵抗があったと思う。それでも改革した理由は、将来に向けた危機感だ。
ホンダの過去を振り返ると、高性能なVTECから環境性能の優れた初代シビックのCVCC(希薄燃焼エンジン)、近年のSU-LEVまで、エンジンを中心にした印象が強い。
それなのに今後は電動化の時代が迫り、海外にはハイブリッド車まで禁止して、エンジンを搭載しない純粋な電気自動車だけを走らせる方針を打ち出した国もある。
この急変する開発環境に対応すべく、ホンダは2020年9月にGMと北米における戦略的な提携を発表した。複数のセグメント(車両のサイズやカテゴリー)におけるプラットフォームやパワートレーンの共有、先進技術領域における技術革新などを目指している。
GMとの提携内容は上記のほかにも、通信機能など多岐にわたる。2021年1月には、ホンダがGMクルーズ(GMの自動運転開発部門)と、日本における自動運転モビリティサービスの協業を行うことも発表された。
新時代のホンダで問われる「手腕」
この激変する時代を乗り切るうえで、三部敏宏氏は、優れた経歴の持ち主といえるだろう。エンジンのスペシャリストで、特に環境性能に対する造詣が深い。
本田技術研究所の社長を務められていた時代には、自動運転や電動化技術も率先して進めてきた。しかも過去にGMとの提携を成功に導いた経験もある。
ホンダは強い独立意識に支えられ、他社とは違う個性的で魅力ある商品をたくさん生み出したが、今後は電動化を始めとする環境性能の向上、安全性と自動運転技術の進化、通信機能、所有形態の変化(シェアリング)など、さまざまな対応を迫られる。そのためには他社との協業も不可欠で、この分野でも三部敏宏氏の実績が生きる。
ホンダは技術指向の強いメーカーといわれ、それはいつの時代でも大切だが、これからは企業姿勢や経営理念が一層重要になる。従来にも増して、社長の手腕が問われる時代が到来する。三部敏宏社長の活躍に期待しています。
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