日産唯一のワゴン「AD」が一部改良 古豪の存在意義と今後は?

それでも必要? 販売店や商品企画担当からみたADの存在意義

日産ADには、2WD1.5Lエンジン、4WD1.6Lエンジンが各々搭載されている。また、ADのような小型商用車は背の高いミニバンよりも、長距離運転や高速道路の走行に優れている
日産ADには、2WD1.5Lエンジン、4WD1.6Lエンジンが各々搭載されている。また、ADのような小型商用車は背の高いミニバンよりも、長距離運転や高速道路の走行に優れている

 こうなると果たしてADを用意する意味はあるのか。この点も販売店に尋ねた。

「ADの売れ行きは下がったが、需要は意外に底堅く、少数ながらも一定の台数が常に売られている。同じ型式のADバンを数年ごとに乗り替えるお客様もおられる」

 また、メーカーの商品企画担当者は、以下のようにコメントした。

「ワゴンスタイルのバンは、小型の商用車でも、長距離の移動に使われることが多い。高速道路を走る機会も多く、動力性能や走行安定性など走りの性能も大切だ。車内の滞在時間が長く、デスクワークの可能な装備も必要になる。仮眠することもあるため、運転席や助手席のリクライニング機能は欠かせない」

 街中の配達などでは軽商用車が便利だが、高速道路を頻繁に使う用途では話が変わる。背の高いワンボックスボディは、トンネルから出た時に横風などにあおられやすい。特に雨風の強い日は、ワゴンスタイルのバンの方が安全で疲労も少ない。

 冒頭でワゴンの車種数が大幅に減ったと述べたが、欧州は例外だ。メルセデスベンツやBMWなどを含めて、今でも欧州製の輸入車にはワゴンが豊富に用意される。その理由は、欧州では日常的に高速走行の機会が多いからだ。ワゴンスタイルのバンが少数ながら存続している背景にも、欧州のワゴンと同じ事情がある。

 このようにワゴンスタイルのバンはさまざまな用途に使われるため、以前のAD/ADエキスパートはエンジンの種類も豊富だった。直列4気筒の1.2L、1.5L、1.6L(4WD)、1.8Lまで用意した。今は整理されたが、2WDは1.5L、4WDは1.6Lだ。長距離移動の機会が多いから、動力性能の低い1.2Lは廃止された。

小型商用ワゴンの「替えが利かない」根強いニーズ

 そこで改めて長距離移動に適した小型の商用車を考えると、選択肢が意外に乏しいことに気付く。トヨタ ハイエースと日産 キャラバンは長距離の移動を含めて定番の商用車だが、4ナンバー車では最大級の大きさになる。そうなると軽商用車を除いた小型の商用車は選択肢が限られる。

 トヨタにはタウンエースバンがあるが、全幅は1665mmと狭めで全高は1930mmに達するから、ボディの縦横比は軽商用車に近い。走行安定性では不利になる。

 しかも販売店では「タウンエースバンはインドネシア製だから納期が半年近くになる」という。商用車の場合、経営状態の変化に応じて即座に購入したい場合もあるため、納期が半年も要すると現実的に購入しにくい。従って売れ行きも低調だ。

助手席の背面には助手席シートバックパソコンテーブル、USB電源ソケットや、真っ平らな荷室など、仕事で使いやすいように配慮した室内になっている
助手席の背面には助手席シートバックパソコンテーブル、USB電源ソケットや、真っ平らな荷室など、仕事で使いやすいように配慮した室内になっている

 このように見ると、ADやプロボックスといったワゴンスタイルのコンパクトなバンは、根強いニーズに支えられている。シエンタやフリードのようなコンパクトミニバンを仕事に使う場合もあるが、ADやプロボックスの真っ平らになる荷室は荷物を収納しやすい。

 また、ADバンでは助手席の背面がテーブルになってノートパソコンを置けたり、前席の中央にはビジネスバッグが収まる。USB電源ソケットの配置なども含めて、仕事で使いやすいように配慮した。移動するオフィスの機能も含めて、ADやプロボックスには独特の実用性が備わる。

次ページは : ファミリアバンもトヨタに鞍替え! 物流支えるADの今後は?

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