近年、クルマにまつわるキーワードで最も注目を集めているのが「安全装備」だ。その歴史を見ていくと、古くはボルボが初搭載したシートベルトに始まり、衝突安全ボディ、そして衝突被害軽減ブレーキまで、年代ごとに次々とエポックな安全装備が登場してきた。
人々の生活を便利に、そして豊かにしてくれるクルマだが、万が一の事故の際には大きな被害を生み出してしまう側面も持ち合わせている。そういったアクシデントが起こった際に被害を最小限に留めるために開発されてきたさまざまな安全装備は、社会の変化に合わせて、時代ごとに搭載の義務化も図られている。
そこで今回は、さまざまな安全装備の国内における歴史を振り返りながら、これらが義務化された流れをみていこう。
文/小鮒康一 写真/フォッケウルフ、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、SUBARU
■シートベルトの義務化は意外に最近?
まずは安全装備として非常にポピュラーかつ長い歴史を持つシートベルトから。日本でシートベルトの設置が義務付けられたのは、1969年4月と意外にも最近のこと。ちなみにこの時は「運転席のみ」の設置が義務付けられていた。
その後、1973年9月には助手席、1975年4月には後部座席にもシートベルトの設置が義務付けられている。ちなみに、設置は義務付けられていたものの当時の着用は「努力義務」で、現在のように非装着時の罰則などは存在しておらず、罰則付きの着用義務化は1992年11月からとなっている。
ただ、この時の罰則も前席(運転席・助手席)のみで、後部座席も含むすべての席での着用義務化は2008年6月からと極めて最近の話だったのである。
■実はまだ義務化されていないABS
続いてはABS(アンチロックブレーキシステム)。これはその名のとおり、ブレーキを強く動作させたときに車輪がロックし、操舵不能に陥ることを防ぐシステムだ。
日本では1982年にホンダ プレリュードが日本初の四輪ABSを搭載したことで知られているが、実はそれより前の1971年に、日産 プレジデントが後輪ブレーキのみ制御するABSを搭載していたことはあまり知られていない事実だ。
そんなABSは、2013年8月にトラック、トレーラー、バスの全車種に装着の義務化を発表。一方で乗用車についてはABS単体の義務化は今もなされていないが、2010年12月に先んじて乗用車にESC(横滑り防止機能)を備えることが義務化されており、これはTRC(トラクションコントロールシステム)やABSといった機能と統合制御されるため、実質的にはABSも義務化されているといえよう。
コメント
コメントの使い方