日本のクルマ文化を牽引し続けてきたトヨタ カローラが、登場から55年で世界累計販売5000万台を達成した。これほどの長きにわたり、好調に販売を続けているクルマは、世界中を探しても多くはない。
カローラのライバルは、数多く現われ、現在では姿を消しているクルマが多い。カローラも登場からの55年間は、決して順風満帆な歴史だけではなかった。しかし、カローラは生き残り、日本の国民車という確固たる地位を築き上げたのだ。
消えていったライバルたちと、カローラをわけたターニングポイントや、現在もカローラが売れ続ける理由は何なのだろうか。55年で5000万台というひとつの区切りを迎えたカローラの販売について考えていきたい。
文/佐々木亘、写真/平野学、池之平昌信、TOYOTA
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カローラは「コモディティ」ではない大衆車
カローラの販売を紐解いていく際に、忘れてはならない言葉がある。2019年9月、12代目(現行型)カローラの発表会で流された、豊田章男社長のビデオメッセージだ。
この話を聞いたとき、筆者はカローラが、なぜこれほどまで長く、好調な販売を続けられているのかを理解した。大衆車と言われるカローラを、生産・販売するうえで、トヨタが大切にしてきた心構えが、次の言葉に集約されている。
「多くの人に愛されるクルマだからこそ、絶対にcommodity(代替可能なモノ)と言われるような存在にしたくない。」
大量生産、大量販売されるものは、代わりが多く存在する。常に競争し、勝ち残らなければ、自らが消えていくだけだ。
しかし、カローラは違う。作り手も売り手も、カローラの代わりはカローラにしか務まらないと考えている。これがカローラの強さであり、数多く戦ってきたライバルたちと、一線を画す部分なのだと思った。
かつてのライバルである、日産 サニー、三菱 コルト、マツダ ファミリア、ホンダシビックなどのなかには、車名が消えてしまったクルマが多い。大量生産、大量消費の波にのまれ、自らのポジションが、他のクルマに取って代わられてしまったわけだ。
カローラは、自らの価値やポジションを忘れず、奪われない努力を続けていた。それが55年もの間、人気車としてあり続け、累計販売台数世界一としてギネス記録に認定される、カローラの特徴であり、強さなのである。
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