空気を味方につける! 流体の力学を駆使するレースの空力技術は市販車にも有効なのか?【レーシングカーの技術を市販車へ】

小さなパーツでもその効果は絶大! ―リアスポイラー―

空気を味方につける! レース生まれの空力デバイスはロードカーでも有効か?
トランク後端にスポイラーを装着したダッジ チャージャー(1968年)。このサイズでも十分な効果が得られ、空気抵抗の増加も最小限に抑えることができる

 リアスポイラーもまた、車体を路面に押し付けることによって安定性を向上させるパーツだが、ウイングほど大がかりなものではなく、比較的簡単に装着可能な空力デバイスといえる。

 レーシングカーにおけるリアスポイラーの歴史はウイングより古く、1961年のフェラーリ 196ディノSPに装着されている。当時のレーシングカーは空気抵抗の低減を目的に水滴形のボディフォルムを採用していたが、こうした形状では高速走行時にリアが浮いて挙動が不安定になるという問題があった。このリフトを抑えるためにボディ最後部に装着された小型の突起状パーツがスポイラーだ。

 スポイラーの語源はスポイル(阻害する、損なう)で、文字どおりスムーズな空気の流れを阻害するパーツだが、スポイラーがあることによって空気流が上に跳ね上げられ、結果としてダウンフォースを発生する。これで走行安定性がアップし、場合によっては空気抵抗の低減にもつながる。

 レーシングカーで効果を上げたリアスポイラーもまたかなり早い時期にロードカーに導入されていて、しかもその車種はリアウイング同様にダッジ チャージャーだった。ロングテールの後端に装着されたリアスポイラーは、安定性向上だけでなく、ルックス上のアクセントにもなっていた。

 現在、シンプルながら空力性能向上に効果を発揮するリアスポイラーは、スポーティモデルにとどまらず多彩なカテゴリーのロードカーに装備され、その形状もさまざま。街中でも普通にリアスポイラー装着車を目にすることができる。

空気抵抗を上げずにダウンフォースを生み出すマジック―ディフューザー―

空気を味方につける! レース生まれの空力デバイスはロードカーでも有効か?
ディフューザーの目的を理解しやすいイラスト。車体の底部を流れてきた空気を拡散して排出し、ダウンフォースを発生させる。その起源はレースカーにあった

 最近、公道で前方を走るクルマのバンパー下側に、ジャンプ台を裏から見たような形状のパーツが装着されているのに気付いた人も多いはず。あるいは、アナタの愛車にも同様のパーツが装備されているかもしれない。そう、それこそが空力デバイスのディフューザーなのだ。

 ディフューザーの目的は、クルマの底部を流れる空気の通路を最後に拡大して空気流を拡散し、流速をアップすることにある。流速の向上によってクルマ底部の気圧が下がり、結果的に車体は路面に引っ張られるかたちになる。

 ここで発生する力もダウンフォースだ。ちなみにディフューザーとは「拡散する装置」という意味。ディフューザーの特徴は空気抵抗をほとんど増やさずにダウンフォースが得られることで、この点においてウイングよりもはるかに高効率といえる。

 1977年にF1GPに登場したロータス78は、車体の両サイド(サイドポッド)底部がこのディフューザー状にデザインされていた。このため大きなダウンフォースが発生して、ライバルを凌駕する速さを発揮。翌年に投入された改良型のロータス79はさらに空力的に洗練され、前年を上回るスピードでシーズンを制圧した。これが世に言うウイングカー、あるいはグランドエフェクト(地面効果)カーである。

 それまであまり注目されなかった車体底部の空気流を利用してダウンフォースを得る手法は、アッという間にほぼすべてのレーシングカーに採用されたが、スピードが出すぎて危険ということで、形状やサイズの規制が行われた。しかし、現代のレーシングカーも広義のグランドエフェクトカーであるのは間違いない。

 F1を筆頭にしたフォーミュラカーなどの純レースカーでは大きなアドバンテージのあるディフューザー(グランドエフェクト)だが、底部の形状が複雑なロードカーでは、F1ほどのグランドエフェクトを期待することはできない。とはいえ、うまくデザインすれば効果的にダウンフォースを得られるのも事実であり、スポーティモデルを中心にリアディフューザーを装備するロードカーは多い。

 注意してほしいのは、車体後端部をディフューザー形状にしたからといって確実にダウンフォース量が増えるわけではないということ。どちらかというと、ルックス面を重視してディフューザーを装着しているモデルも数多く存在している。

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