「レースは走る実験室」――これはホンダ創業者・本田宗一郎の言葉だが、実際にレースのために生み出され、後に公道用のクルマにも転用された技術は多い。過酷なレースで鍛えられた技術は、公道においても効果を発揮してくれるのだ。
この記事では、レースにルーツを持ったロードカー用テクノロジーを紹介していきたい。第1回となる今回は、見た目上、最もわかりやすく、なおかつ効果も大きい空力(エアロ)テクノロジーだ。
文/長谷川 敦 写真/トヨタ、日産、フォルクスワーゲン、Newspress UK、Favcars.com
【画像ギャラリー】空力テクノロジーはレースカーなしには進化しなかった!(12枚)画像ギャラリー飛び立つための翼から“押し付ける”ためのデバイスへ―ウイング―
かつてのクルマにとって、空気は前に進むことを阻害する障害でしかなかった。そうした理由から、特にスピードを追求するレーシングカーやスポーツカーでは、ボディの形状を流線形に近づけて、どれだけ空気抵抗を少なくするのかが重要なポイントになっていた。だが、ある日誰かが空気の力を利用して車体を路面に押し付ければ、走行安定性、とりわけコーナリング性能を高められることに気がついた。
そこで飛行機の翼(ウイング)をひっくり返して装着してみたところ、飛行機を離陸させる揚力とは逆向きの力(=ダウンフォース)が発生してマシンのグリップ力は飛躍的に向上し、これまでにないスピードでコーナーを駆け抜けられるようになった。これがレーシングカーにおけるウイングの発明である。
ウイングの装着により空気抵抗自体は増えてしまうものの、ダウンフォースの増加による取り分のほうが大きく、すぐにウイングはレーシングカーのスダンダードパーツになり、それは現在でも続いている。
レーシングカーにウイングが装着されるようになったのは1960年代中期だが、その60年代後半には早くもロードモデルでウイング装着車が登場。1968年のダッジ チャージャーにはリアに高々とそびえ立つウイングが装備されていた。
高速走行時に安定性を高めるウイングは、ロードカーでもスポーティなモデルを中心に装着されるようになった。しかし、そのサイズや形状には流行の影響もあり、最近ではあまり大型のリアウイングを採用せず、後出のディフューザーで安定性を確保するモデルが増えてきている。
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