■日本人にとってのゼイタクとは?
その後ソアラは、「ハイソカーブームの火付け役」などと呼ばれたが、当時はまだハイソカーという言葉はなかった。そこには、「ハイソサエティぶっているクルマ」と微妙に見下す意味が含まれているが、当時ソアラを見下すような風潮はゼロで、国民を挙げて熱狂していたのである。あえて言えば、初代ソアラは、日本人にとって、「ゼイタクの未体験ゾーン」だった。初代ソアラがバブル経済の入り口で、ここから日本は約10年間、ゼイタクの未体験ゾーンへと突入したのである。
初代ソアラは本来、トヨタブランド高級化の尖兵であり、貿易摩擦で輸出台数が制限されつつあった状況で、利益を出すために開発されたが、結局輸出されることはなく、国内専用モデルで終わった。私が後にショックを受けたのは、欧米では初代ソアラが事前調査段階で「売れない」と判断されたらしい……という事実だった。特にデザインに関しては、まったく理解されなかったという。あんなにカッコいいのに!?
欧米人の感覚では、セリカやセリカXXならスポーツカーとしてアリだが、豪華なパーソナルクーペとしては、初代ソアラはサイズ(5ナンバー)やデザインのボリューム面で役不足だったようだ。その後ソアラは北米進出のため、3代目(1991年発売)でヌメッとした幅広デザインに変身。国内では不評で販売は振るわなかったが、北米ではレクサスSCとしてブランド力アップに貢献した。
初代ソアラの清潔感あふれるクリーンなクーペルックは、日本人の美意識の結晶だったが、そこまでだったと言うべきなのかもしれない。
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