これぞ絶妙な日本車の代表だ!! なぜハリアーは「いいポジションのクルマ」なのか?

■「効率の高い」クルマ作り

 ハリアーは上質な内外装と乗り心地に加えて実用性も高い。身長170cmの大人4名が乗車した時に、後席に座る同乗者の膝先には握りコブシがふたつ収まる。特別に広いわけではないが、各部が上質だから、4名で乗車して快適に移動できる。荷室面積は充分に広く、リアゲートの開口部もワイドだから、荷物を出し入れしやすい。

 ハリアーのボディサイズは、全長が4740mm、全幅は1855mmだから、日本で売られるSUVでは中心的な大きさだ。世界的に見れば、コンパクトな部類に入る。

 つまりハリアーは、運転しやすいサイズのボディに、上質なデザイン、快適な居住性と乗り心地、充分な積載性などを凝縮して人気を高めた。いい換えればハリアーは、さまざまな意味で効率が優れている。

 運転のしやすいボディサイズと広い室内、充分な動力性能と低燃費を兼ね備えたハイブリッドなど、二律背反の要素を両立させる高効率が特徴だ。

 そしてこの優れた効率は、ハリアーにかぎらず、日本車全般に通じる商品特性だ。最もわかりやすいのは軽自動車。代表的なN-BOXは、全長が3400mm、全幅は1480mmの小さなボディに、コンパクトカーを超える広い室内を備える。4名が快適に乗車できて、荷物も積みやすい。

 しかもN-BOXは、インパネなどの内装もコンパクトカーと同等に上質で、ノイズは小さく乗り心地も快適だ。高効率だから「これで充分」と満足できる。

 コンパクトカーのノートオーラも、ボディサイズのわりに車内が広く、上質なクルマ作りを行った。同様の流れがハリアーまで繋がっている。

■「日本らしい日本車」は海外でも人気

 N-BOXとハリアーでは、商品自体は大きく異なるが、クルマ作りを支える根本的な考え方、「漠然とボディやメカニズムを大きくしないこと」では共通している。N-BOXもハリアーも、サイズを削り、密度の濃いクルマ作りを実践している。

 だからこそハリアーでは「サイズや価格のわりにいいクルマに乗っている」という実感が湧く。知恵を絞って開発/生産された「頭のよさそうなクルマ」という印象も受ける。この特徴には、日本のユーザーに向けた思いが濃厚に込められ、ハリアーではそこが海外のユーザーからも共感を得た。

 トヨタをはじめとする今の日本メーカーは、世界各国でクルマを販売しているから「日本で買えない日本車」も多い。しかし、それが本当の日本車と呼べるのか。国内市場に置き換えると、ドイツでは売っていない日本とアジア向けのメルセデスベンツやBMWが輸入されたとして、それを欲しいと思えるのか。

■開発の流れの変化が背景にある

 日本車の過去を振り返ると、1970年代前半のオイルショックをきっかけに、北米で売れゆきを伸ばした。1980年代には貿易不均衡が問題になり、日本メーカーは貿易摩擦を解消するために、次々と現地生産の工場を立ち上げた。

 ただし、この時点では、大半の北米仕様が日本向けの5ナンバー車をベースに開発され、日本国内向けのクルマ作りが高く評価されていた。

 それが1990年代に入ると、日本メーカーの海外販売台数が、国内を上回るようになった。1989年の税制改訂で3ナンバー車の不利が撤廃され、日本メーカーが海外をターゲットに3ナンバー車を開発して、国内市場へ流用するようになった影響も大きい。

 その結果、海外向けになったセダンは国内での売れゆきを急速に落とし、ほぼ同時に日本向けに開発されたミニバンが販売台数を増やした。1998年には軽自動車も今と同じ規格に変更されて売れゆきを伸ばす。そのために国内と海外では、完全に異なる車種体系ができ上がった。

次ページは : ■変わらないことで「いいポジションのクルマ」へ

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

トヨタセリカ復活計画、始動!? 新型ホンダフリードの獲れたて新情報も盛りだくさん!【ベストカー6月10日号】

トヨタセリカ復活計画、始動!? 新型ホンダフリードの獲れたて新情報も盛りだくさん!【ベストカー6月10日号】

トヨタ自動車の壮大なるBIGネーム復活計画の第四弾は……なんとトヨタセリカ!? 新型ホンダフリードの注目情報や、レーシングドライバー岩佐歩夢選手の新旧ホンダスポーツカー試乗など、GW明けから全力投球な企画だらけです!