F1 第2戦のサウジアラビアグランプリは凄まじいバトルが全域で展開された。特にフェルスタッペンとルクレールの二人の争いは息をもつかせぬ激しいレースに終始したが、エンジンパワーに物を言わせダウンフォースを多めにしている最速フェラーリにレッドブルRB18はどう戦い勝利したのか。元F1メカニックの津川哲夫氏が解説する。
文/津川哲夫、写真/Ferrari,Mercedes,Redbull
開幕戦同様フェラーリは速く、今シーズンの速さが本物であることを誇示した
開幕戦でダントツに速かったフェラーリだが、ここジェッダでは若干趣が違っていた。開幕戦はトップスピードとトラクションで速さを誇ったが、第2戦のジェッダではトップスピードではレッドブルにやや遅れをとったのだ。
この2強のアプローチは違っていた。レッドブルはダウンフォースを若干犠牲にしてまでトップスピードを上げ、フェラーリは逆に強力なダウンフォースを使って高速コーナー等への対処を計った。その結果それぞれの利点弱点が入れ替わり、双方ほぼ互角の速さになっていた。
渾身のアタックで予選PPはセルジオ・ペレス、フェルスタッペンはタイヤ温度コントロールに失敗し4番手、その間にフェラーリのルクレールとサインツが入った。フェラーリの速さにレッドブルはぎりぎりのエアロで対処していた。
こういっては失礼だが、チェコ(ペレス)がPPなのだから、全てが揃えばマックスが遅いはずはなく、レッドブルがワンツーだった可能性は高い。それでもギリギリを攻めたセッティングであることはいうまでもなく、そうしなければ今回も好調フェラーリに勝るのは極めて難しいはずだった。
レースは序盤、PPのペレスがリードを奪いそのままトップを走行。全てが予定通り運べばペレスは第2スティントもトップを維持できたはずだったが、ペレスのピットイン直後にウィリアムズのラティフィがクラッシュ。
これでセーフティカーが出動し、ルクレールとフェルスタッペンとサインツは漁夫の利を得てペレスの前でピットアウト、これでペレス優勝の目は潰されてしまった。
DRSの駆け引きで見応えあるバトルが展開した
その後フェルスタッペンはルクレールを追うも、フェラーリの速さ、特に高速コーナーが連続するセクター1では追いつけず、付いて行くのがやっとに見えた。しかしフェルスタッペンは余計なバトルを仕掛けずにタイヤをセーブして最後の数周に賭けた。
終盤のバトルではDRSの仕掛け合いが続いた。特に最終コーナーを挟んで2つ続くDRSゾーンが、勝負の駆け引き場所になった。
フェルスタッペンは最終コーナー手前でDRSによる2度の追い抜きを果たすも、2度ともメインストレートでのDRSで覆された。この状況は前回の開幕戦と似る。
ルクレールも必死のディフェンス、前回の様な余裕はなかった。
フェラーリは第1コーナーを抜けた後のセクター1が最も有利なエリアで、単独走行ならばタイムを出せるのだが、ここでは如何に高速車であろうと前走車を抜くのは至難の技、むしろ不可能に近い。従って第1コーナーは常にトップで飛び込みたいところなのだ。
最終コーナー手前で2回のアタックをしたフェルスタッペン。ルクレールを追い抜きはしたものの、2回とも次のメインストレートであえなく抜き返されてしまった。しかし3度目は最終コーナーまでDRSでルクレールを追いつめるも、ディテクションライン手前でギリギリ抜かずに抑え、最終コーナーを超接近で抜けメインストレートではDRSを使ってルクレールを抜き、ついに第1コーナーを奪取。セクター1でフェラーリを抑えれば、他のセクターではレスダウンフォースのレッドブルが速くまず抜かれることがない。最終コーナーでルクレールを前に行かせることで勝利が決まった。