一瞬で完売のスバルWRX STIタイプRA-R検証試乗 最強のSTIは世界最強か!?

■310psのゴルフRを置いてきぼりにするのか?

新開発の湿式多板構造マルチプレートクラッチを搭載した7速DCTを採用するゴルフRはGT的な安定性のある乗り味なのに対し、6速MTのタイプRA-Rはよりピュアスポーツに近い走りを見せる。軽量化の効果もあって、その走りはまさに研ぎ澄まされた日本刀のようだ
新開発の湿式多板構造マルチプレートクラッチを搭載した7速DCTを採用するゴルフRはGT的な安定性のある乗り味なのに対し、6速MTのタイプRA-Rはよりピュアスポーツに近い走りを見せる。軽量化の効果もあって、その走りはまさに研ぎ澄まされた日本刀のようだ

 さっそく走り出そう。8000rpmまで振動もなく気持ちよく回るEJ20ターボのフィーリングはS208そのもの。3速ギヤの6500rpm付近ではブースト計は瞬間的に1.29barを指していた。8000rpmまでも勢いはいいが、比較車両として持ち込んだゴルフRはマックス6800rpm。

 ゴルフRは、310ps/40.8kgmでスペック的にはタイプRA-Rのほうが優っているように見えるが、実際その加速感はかなり力強い。

 0~100㎞/h加速は4.6 秒とタイプRA-Rの4.8秒を0.2秒上回る。これはゴルフRが7速DSGに依るところ大。

ギャップの多いバンピーなコースではピッチングをどう収束させるかがポイントになるが、ここはゴルフRの電制可変ダンパーが効果的だった
ギャップの多いバンピーなコースではピッチングをどう収束させるかがポイントになるが、ここはゴルフRの電制可変ダンパーが効果的だった

 DSG(デュアルクラッチトランスミッション)はMTに比べてシフトラグがはるかに小さく、特にターボエンジンではシフト時のブーストダウンが少ないので、シフトラグのタイム差以上にパワーが持続するので差が広がる。

 つまり、その差が0.2秒程度ということはEJ20ターボエンジンの性能が高いといえるだろう。

試乗後、STIの森宏志開発本部長(中央)と毛利豊彦担当部長(右)と談笑する松田秀士氏
試乗後、STIの森宏志開発本部長(中央)と毛利豊彦担当部長(右)と談笑する松田秀士氏

 ベースのWRX STIと比べると、エンジンは別物のように軽く吹け上がり、高回転域で振動感もない。コーナーに飛び込むとS208よりも、そしてベース車両のWRX STIよりもシャープ。

 さらにコーナリング中の操舵角が半分くらいに少ない。ダンパーはS208のビルシュタイン(ダンプマチックⅡ)から倒立式のKYB製に変更され、10㎜ローダウンされている。

 18インチのタイヤはミシュランパイロットスポーツ 4Sを初採用。これはトレッド面のアウト側にドライ路面、イン側にウェット路面用のコンパウンドを配した画期的なタイヤ。アクアプレーン対策の縦溝はハッキリと、さらに雨用コンパウンドを採用するとは。

ホイールは18インチにダウンし、タイヤはミシュランパイロットスポーツ4Sを履く
STIロゴの入ったジュラコンMTシフトノブがタイプRA-Rであることをさりげなく主張する
STIロゴの入ったジュラコンMTシフトノブがタイプRA-Rであることをさりげなく主張する

 ボク自身、長くドライブしたF3000時代の経験から雨にはコンパウンドがイチバン効くことを知っている。特にブレーキングでね。それを内側に、横方向のストレスを受けたときに効果的なドライ用コンパウンドを外側に、まさに攻めろといわんばかりのタイヤだ。

 で、デザインもサイズも話題のFIAフォーミュラEに使用されているものと同じ。

 30㎏の軽量化のなかでも、この18インチ化によるバネ下の軽量化がハンドリングに大きく寄与している。そのバネ下の軽量化のなかでも回転部分であるホイールとタイヤ、そしてブレーキディスクが重要。

 今回はホイールとタイヤの軽量化にスポットを当て、ベースのWRX STIよりも11・4㎏も軽量化。回転部はジャイロ効果があるので高速になるほどに軽量化が効いてくる。このことはさらに速度域の高いサーキットを走れば一目瞭然だ。

■ハンドリングは最高なのか?

ステアリングを切り始めた瞬間から過激ではないフロントのグリップ感が感じられたという

 ハンドリングはステアリング切り始めの応答から過敏ではないフロントのグリップ感があり、ブレーキを残しながらのコーナリングでもちょうどいい巻き込み感。

 群馬サイクルスポーツセンターのようなタイトでブラインドコーナーが多いシチュエーションでは、ブレーキを残しながらコーナーに進入することが多く、そこでリアが不安定になると気持ちよく飛び込めない。また、リアがグリップしすぎるとアンダーステアを容易に併発するので、これまた飛び込めない。

 でも、リアが踏ん張りすぎないけれど、ちゃんとグリップする。マルチモードDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)をAUTOのマイナスにセットすれば、サーキットで威力を発揮しそうなくらい、切り足しでフロントノーズがさらに切れ込む。

 それでいてコーナー脱出加速ではステア角が小さくかつしっかりとリアにトラクションがある。まあ、DCCD付きの4WDだからね。

STIロゴが入った低背圧パフォーマンスマフラーとエキゾーストパイプリアを採用している
STIロゴが入った低背圧パフォーマンスマフラーとエキゾーストパイプリアを採用している
ドライカーボン製エアロドアミラーカバー装着でフロントリフトを4%低減することに成功した
ドライカーボン製エアロドアミラーカバー装着でフロントリフトを4%低減することに成功した

 ベースのWRX STIは、昨年の改良でセンターデフの機械制御部を取り去り、完全電子制御式としたこともかなりハンドリングを後押ししている。

 つまり、アクセルOFFでのコーナー進入からAペックス付近のパーシャルアクセル、そしてエグジットにかけてのフルスロットルをDCCDがうまくコントロールして、可能なかぎりアンダーもオーバーも出さない。

 しかしだ、比較に持ち込んだゴルフRも凄かった。こちらはDCCという電子制御による可変減衰力ダンパーを装備している。このダンパーの制御がすばらしく、超ギャップが多い群馬サイクルスポーツセンターのような路面では威力を発揮する。ピッチング(上下動)が少ないのだ。

 さらに大きなギャップを通過した後の収まりが早い。それゆえにコーナリング中の安心感が高い。ただし、それはスポーツ性よりも安定性に重点を置いたもので、FF横置きエンジンゆえのフロント大重量によるコーナリング中の大舵角はいたしかたないところ。この点では前後左右重量バランスに優れたWRXのシンメトリカルAWDがモノをいう。

タイプRA-RのロゴとSTI30周年記念特別限定車であることをアピールするオーナメントを装着
タイプRA-RのロゴとSTI30周年記念特別限定車であることをアピールするオーナメントを装着

次ページは : ■ピュアスポーツ性からいえば、完全にゴルフRを超えた!

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