順調にいけば6月から新規注文を受け付け、秋頃に入荷される
「工場移転の話はあったが、カザフスタンに移転する予定はなかった」とブラド氏。カザフスタンは旧ソビエト連邦だったこともあり、移転先の北部はロシア語も通じる。欧州も移転先の候補だったが、従業員のビザが発給されないなどの理由からカザフスタンに決まったという。
ロシア工場の従業員は150名で、一部のみカザフスタンに移住。「今後もずっとカザフスタンで生産するか、一時的な措置かは未定」と話す。なおロシア工場は残り、今のところ部品の生産は継続する。
「順調にいけば8月から稼動を開始」し、今後はカザフスタンから車両が出荷される。「日本における新規の注文受付は早ければ6月から再開。順調なら9月末~10月には入荷する予定です」と話す。ただし書類の手続きや発送ルートの選定に難航する可能性も高いという。
既に注文済みの車両や部品に関しては、既報のとおり4~5月に日本に到着する見通し。輸入禁止措置は、既に契約した分について4月19日から3か月以内の輸入が認められている。ロシアからのコンテナが4月下旬にもウラジオストックに着き、早ければ4月末にも日本国内に到着する予定だ。
今後も日本法人とディーラーによる保証、技術サポートは中断されず、部品&アクセサリーの供給も続ける。
「ロシア生まれ」のルーツは変えられない
「ロシアは戦争をすべきではなかった。戦争が1日も早く終わることを祈っています」とブラド氏。自身はロシア国籍を持ち、日本に来てちょうど10年になる。
ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシア料理のレストランなどが嫌がらせされたという報道も耳にするが、ウラル・ジャパンに関しては「そういった行為はほぼありません。ただし他国ではロシアの文化を否定する動きが強いので悲しい」と話す。
今回の移転に伴い、ブランド名を変更する案もあったという。「もはやロシア製品ではないため、ブランド名を変更する話も出ましたが、メーカーとしては最初から変更するつもりはなかったです。ルーツは否定できません」(ブラド氏)。
前述した生産工場がある「イルビット」は、ロシアを南北に縦断するウラル山脈の付近にある。ウラルモトの前身であるIMZ社の誕生から81年もの間、この地で操業し続けてきただけに、ブランド名は譲れなかったに違いない。そして「ルーツは否定できない」という言葉をブラド氏自身が噛み締めているようだった。
大きな岐路に立つことになったウラルだが、ひとまず生産再開のメドが立ったことを喜びたい。
――憎むべきは戦争であり、文化ではない。バイクやクルマを愛する者なら特にわかるはずだ。
【画像ギャラリー】ウラル公式HPは「STOP WAR NOW」を訴える(3枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方