■デザインがよくなってきたから売れたのか?
TEXT/清水草一
日本でスズキというと、第一に軽自動車メーカーであり、あんまりオシャレさんなイメージはないかもしれない。が、そのデザイン力は計り知れない。いや、得体が知れないと言ったほうがいいかもしれない。
現在のスズキのデザイン力のベースとなったのは、1981年からのGMとの提携関係ではないか。それ以前のスズキ車は、日本の地方に根を下ろした地道なデザインが持ち味だったが、GMという巨人を先生に持ち、人材交流を行ったことで、広く大きな視点を得たのだ。
現在スズキは、世界第10位の販売台数を誇る自動車メーカーだけに、全世界で販売されているが(北米からは撤退)、そのデザインを見ると、国内向け/インドを中心とした、アジア向け/欧州向けの3つに大別して開発しているように思われる。もちろん販売モデルは各地で重複しているが。
■仕向け地に合ったデザインを採用する
つまりスズキは、仕向け地に合ったデザインを、血のにじむような現場主義で模索し、みごとに形にするのである。そのうち、われわれカーマニアが「これは……」と唸らされるのは、主に欧州向けのモデル。その代表が2代目以降のスイフトだ。
スイフトの変遷は、スズキのデザイン力の成長を象徴している。2000年登場の初代は、あくまで軽自動車の延長線上だったが2004年に登場した2代目は「オペルのOEMか?」と思うほど、洗練されたヨーロピアンデザインをまとっていた。3代目はそこからさらに一歩洗練し、現行型の4代目では微妙な変革を実行、それなりに成功している。
イグニスも、ヨーロピアンテイストに日本的なスペースユーティリティを加味した佳作。スズキのヨーロピアンデザインの成功は、1992年からハンガリー工場が稼働を始め、スズキが本格的に欧州に根を下ろした効果もあるだろう。
一方、例えばバレーノのデザインを見ると、「なにこれ?」みたいに感じてしまうが、それはインド人の好みに合わせているからで、あれをダメデザインと断じることはできない。
エスクードに関しては、初代はヨーロピアンでスタイリッシュだったが、その後アジア市場を意識してか、意図的にダサいデザインにしているように思える。
軽自動車に関しては、驚くほどの傑作とイマイチ作が混在しているが、これも広い顧客層を得るためか。現行モデルの傑作デザインを挙げると、軽自動車ではハスラー、ジムニー。普通車ではイグニスとジムニーシエラ。逆に過去、野暮ったいと思わせたのは、2代目エスクードとエリオだ。
とはいえ、現在絶好調のスズキが売れてる理由は何かと聞かれば、売れてる理由のひとつは間違いなく、最近のデザインの秀逸さにある、と言っていいだろう。
■清水草一が選ぶデザインがいい現行車と残念だった過去モデル
GOOD! ハスラー
GOOD! イグニス
残念! エスクード(2代目)
残念! エリオ
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