決断は正しかったのか間違いだったのか? 【自動車業界の大鉈(おおなた)事件史】

■独自技術開発にストップ!? ダイハツ完全子会社化の是非

ダイハツ、トヨタ、スバルの兄弟車。トヨタはルーミー、タンク。ダイハツはトール、スバルはジャスティ

 2016年8月1日にトヨタの完全子会社となったダイハツ。完全子会社化で両社はどう変わったのか?

■渡辺陽一郎の判定 :○

 トヨタとダイハツが業務提携を結んだのは1967年だから50年が経過した。両社は共同開発、ダイハツが行うトヨタ車の受託生産などを通じて関係を深めてきた。その結果の完全子会社化だから、必然の成りゆきだ。完全子会社になったあとは、パッソやルーミー&タンクが共同開発ではなく、ダイハツからトヨタへのOEM供給とされる。

 その結果、現行パッソは先代型に比べて質感などの商品力を高めた。ダイハツは「軽自動車で培ったノウハウで小型車を開発した」という。完全子会社化でダイハツが商品企画まですべてを任され、トヨタが口を挟まなくなったことでいい結果が生じた。

■佃 義夫の判定 :△

 ダイハツとトヨタの関係は、1967年にダイハツ工業が当時のトヨタ自工と業務提携して以来と長い。だが、ダイハツ工業が昨年創業110周年迎えたように日本で最も歴史があり、唯一大阪に本社を置く自動車メーカーだけに高いプライドを持っていた。

 しかし、2016年にトヨタがダイハツ工業を100%出資の完全子会社化したのは、トヨタの社内カンパニー制の導入と合わせるように、ダイハツを「トヨタコンパクトカーカンパニー」と連携させた。さらに、トヨタはダイハツをトヨタグループの「新興国小型車カンパニー」の推進力としてASEAN市場での拡大を目論むが、スズキとの関係がまだ微妙だ。

■頑なにCVTにこだわるスバルの戦略は間違っていないか?

スバルは多段ATやDCTを採用せず、CVTの採用を貫いている。CVTはスポーツ走行には向かないと言われているが……

 省燃費性能には優れるが、ダイレクト感に乏しい独特の走行フィールを持つといったデメリットもあるCVT。そんなCVTにこだわり、スポーティモデルにまで採用するスバルのCVTに特化したトランスミッションの戦略は正しいと言えるか?

■国沢光宏の判定 :△

 CVT自体は悪い技術じゃないと思う。トヨタだって全日本ラリーにCVT採用の車両を走らせ、可能性を探っている。国際格式の競技で唯一CVTで優勝(WRX S4/タイ国のキングスカップ)した経験持つ私が言うんだから間違いなしc けれどスバルの場合、レヴォーグのデビュー以後、進化させようという動きなし。CVT本体についちゃ9年もそのまんま(制御は少し改良)。常に前を向いてないとよくならない。

■鈴木直也の判定 :△

 スバルが現行のリニアトロニックCVTを発売したのは2009年。その頃は、ステップATの進化に頭打ち感があったし、DCTは一般化していなかった。消去法でゆくと、当時は「次期ATはCVT」という判断がリーズナブルだったと言えるかもしれない。しかし、プレミアムクラスを目指す今のスバルの戦略のなかでは、残念ながらCVTはアキレス腱。走りの質感やドライビングプレジャーを高めた、新しい選択が求められていると思う。

■EV&e-POWER特化で大丈夫!? 日産の国内市場戦略

ノートの2018年上半期(1〜6月)の国内新車販売台数は7万3380台と、2位のアクア(6万6144台)、3位のプリウス(6万4019台)を抑えて首位に立った。日産車の首位は1970年のサニー以来48年ぶりという。その躍進の立役者はエンジンで発電してモーターだけで走るe-パワー

 ゴーン体制になってから、日本市場を軽視していると厳しい意見が聞かれる日産。国内では2018年はフルモデルチェンジ、ニューモデル投入の予定はなく、2019年までディーラーにとっては売るものがない状況が続く。

 とはいえ、販売台数は電動化戦略で投入したノート&セレナのe-POWERが好調と一見悪くないようにも見える。この日産の戦略は、長期的に見て正解なのだろうか?

■渡辺陽一郎の判定 :△

 日産の軽自動車まで含めた国内のメーカー別販売順位は5位。小型/普通車にかぎれば2位だが、これはホンダがN-BOXの一新で小型車の売れゆきを落とし、日産が浮上した結果だ。トヨタの小型/普通車と比べると、日産の台数は約30%にどどまる。

 低迷の理由は、商品開発が海外中心になって国内の新型車が乏しいからだ。2018年もリーフのリチウムイオン電池を60kWhに拡大した仕様しか発売されない。そうなれば販売の低迷は当然で、日産車の世界販売台数に占める国内比率も、三菱が生産する軽自動車を含めて10%、小型/普通車に限れば7%だ。

 こんな状況だから、廃止された古いいろいろな日産車からの乗り換え需要がノートとセレナのe-POWERに集中した。新型車の欠乏で、e-POWERをしかたなく購入したケースもあり成功とはいえない。

■佃 義夫の判定 :×

 EVの2代目リーフの投入にノートe-POWERと、日産の電動化戦略が国内市場で評価を高めたが、日産の国内ディーラーは厳しい状況にある。かつてはトヨタと国内リーダーの座を争って日本の自動車市場を盛り上げてきた日産だが、今や国内では第5位メーカーに甘んじている。残念ながらゴーン日産の長期政権のなかで日本市場はおざなりにされてきたのが実態だ。

 日本市場が日産グローバル戦略のなかで重要視されなくなって北米と中国に目が向いたのは、仏ルノー日産連合としての方向だった。外資になった日産は需要が低迷する日本市場を軽視したのだ。新型セレナ投入は、実に2年半ぶりの日産国内市場でのフルモデルチェンジだった。2代目リーフの投入も工場現場の不正問題でみそをつけた。e-POWER人気でノートが売れているというが商品力は弱い。

次ページは : ■トヨタ自動車が導入したカンパニー制は正解だったのか!?

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