自動車メーカー間の提携や吸収合併など「まさか!?」と思える大変革が起こることがある。そんな時は大鉈(おおなた)を振るい、思い切って切るべきものは切って整理する。
こうした大鉈がふるわれた事件は、はたして正解だったのか? それともやり過ぎだったのか? これまで行われた大鉈事件、そして現在進行形の大鉈事件をリストアップし、アナリストの佃義夫氏、モータージャーナリストの鈴木直也氏、国沢光宏氏、渡辺陽一郎氏、桃田健史氏がズバリ判定!
最後にベストカー本誌でもお馴じみ、元GT-R責任者の水野和敏氏も日産在籍時代に振るわれた大鉈事件を激白する!
文/佃 義夫(佃モビリティ総研代表)、鈴木直也、国沢光宏、渡辺陽一郎、桃田健史
写真/ベストカー編集部
初出/ベストカー2018年10月10月号
■FRスポーツセダンの希望、マークX消滅の是非
国内車種の再編が見込まれているトヨタ。FRセダン、マークXの消滅も濃厚とされ、年内に販売終了という噂も流れている。この判断は?
■渡辺陽一郎の判定: ×
マークXの廃止はダメだ。貴重な後輪駆動のセダンで、ボディサイズはレクサスISに近いが、価格は150万円以上も安い。トヨタが力を入れるGRスポーツにアレンジしても、価格は400万円以下に収まる。
レクサスLSやクラウンと共通の新しいプラットフォームを使い、BMW3シリーズ風に仕上げるべきだ。またマークXはトヨペット店の主力車種で、トヨタが販売店を系列化する象徴でもあるから存続させたい。車種の廃止は後ろ向きの発想だ。
■国沢光宏の判定 :△
FRがいいという声は多いけれど、だったらみなさん責任取って買うかとなればそんなこともない。外野からのヤジばかりです。実際、マークXの販売台数を見たって、割安感あるのに伸び悩んでしまっている。
売れなければ商品にならん。かくなるうえはなるべく頑張って現在のマークXを売り続けてほしいと願うばかり。自動ブレーキなどを最新タイプにするだけで商品性は確保できます。そんな私も何度か真剣にマークXを買おうと思っている。
■SUVに専念する三菱再生プランの是非
中期経営計画で、得意とするSUVモデルに専念するという姿勢を打ち出した。その判断は三菱を救うか?
■渡辺陽一郎の判定: ○
日本の自動車メーカーは、さまざまなカテゴリーやサイズの商品をそろえることにも意味がある。ファミレス型だから、我が家のクルマをすべて同じメーカーで統一できる。その意味で三菱がSUVに専念するのは残念だが、今の状況を考えるとしかたない。日産が34%の株を所有しており、両社が似た商品を開発しても経営的なメリットは乏しい。
今はSUVが世界的に人気を高め、三菱は以前からSUVが得意だから、まずはそこに特化して経営基盤を固めるのが合理的だ。やり方次第ではスバルのような技術指向のブランドを築ける。これが軌道に乗ったら、カテゴリーを再び拡大すればよい。
■佃 義夫の判定: △
三菱自動車といえば、かつては軽自動車から大型トラックまでの世界でも類のない総合自動車メーカーだった。乗用車もジャンル別にバリエーション豊かな商品群を誇った。しかし最近、映画化された「空飛ぶタイヤ」のモデルとされたように、再三に渡るリコール隠しから直近での燃費不正問題が起因となり、日産自動車の傘下に入った。
日産主導による再生プランでV字回復を狙うなかで、三菱自が生き残りを図るには、SUVに専念し、電動化戦略は先行して評価の高いPHEVの強みを生かす割り切りを必要とする。最近エクリプスクロスの開発チーフと話したが、三菱自の技術屋魂に復活を感じた。
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