■再びデジタルメーターが流行する傾向 その理由とは?
メーターパネルに話を戻すと、1980年代後半に流行ったデジタルメーターの再来のように、これからまたデジタル表示も一般的になっていくだろう。それはドライバーの高齢化とも関係がある。
視力が弱っているドライバーにとっては、針が示す数字を読み取るより、デジタル表示で大きく時速が表示される方が断然判断しやすいからだ。
現在は液晶モニターでもアナログタイプのメーターデザインを表示するのが一般的だが、これは自発光式メーターと同じく、周囲の光をなるべく入らないようにして表面の反射を抑えて視認性を高める工夫がされている。
それに液晶モニターでは、アナログメーターの立体感まで再現できないからちょっと角度が変わればたちまちメーターの見え方が変わってくる。
したがって自動車メーカーが想定するドライビングポジションの範囲から外れるような体型のドライバーは、ひょっとしたらメーターが見えにくく(今でも見えにくいかもしれないが)なるかもしれない。
ともあれ、これからのクルマでは液晶モニターを利用したタイプが主流になっていくのは間違いない。というのも、車種ごとに専用にデザインされ、部品の金型が必要で組み立て工程や精度も追求される従来のメーターに対し、モニター上で表示するメーターは圧倒的に開発や生産コストが下げられる可能性があるからだ。
もっとも全面液晶モニター、それもメーター専用の異形タイプはコストが嵩むから国産ミドルクラス以下の量産車に採用するのは当分難しい。そこでメーターを生産する日本精機が考えているのは、マトリックス型(大きな面で発光)の液晶とドット型(スマホなどの液晶)の液晶を組み合せて使用するという構造のメーターだ。
表示を切り替えて利用する便利さは確かに魅力的だが、全面を切り替えて利用する必要はない。だから車速など常時必要な情報はマトリックス型の液晶で表示して、走行モードやドライバーの操作で表示を切り替える部分にドット型液晶を使うのである。
■もう一つの走行情報表示デバイスHUDの未来
それに自動運転時代が到来する以前に、「メーターを見ないで運転する」ことが当たり前になるかもしれない。
もう一つの走行情報表示デバイス、HUD(ヘッドアップディスプレイ)の存在も忘れちゃいけない。視線をメーターまで移動せず、モノによっては焦点も前方に合わせたまま速度や進路、制限速度などを確認できるHUDは、安全に走行情報を確認できる最善のアイテムだ。
現在はメーターカウルの上に専用のスクリーンを用意したり、フロントウインドウに偏光フィルムを貼ることでHUDを実現しているが、現在はより進化すべく開発が続けられている。
積水化学は、合わせガラスの間に挟み込んでいる中間膜にスクリーンとしての機能を持たせたHUD用中間膜を実用化している。しかし、これも光の屈折の関係上、表示できる範囲が限られているようだ。それでも従来より大型のHUDが可能になった。
さらに自発光式中間膜も開発されている。これは従来のHUDのようにプロジェクターで投射するのではなく、レーザー光を当てることで自ら発光して表示するもの。明るさや発色の鮮やかさは投射では得られないほど強力で、視野角も広い。
現在は色の再現性を高める研究が進められているようだが、この自発光式中間膜が普及すれば、HUDだけでなく、幅広く応用できる可能性がある。同じ中間膜を使えばサイドウインドウやリアウインドウにも表示することが可能だから、車外に向けても様々な情報を表示することを実現できる。
「つながるクルマ」の時代には、ウインドウのグラフィックが周囲のドライバーとの意思疎通が図れるデバイスになるかもしれないのである。
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