■エクストレイルの人気の理由はどこにある?
エクストレイルは、前述の「SUV・4WD」で販売1位としたことに無理が伴うが、人気車であることに変わりはない。
4WDを主力に据え、シートや荷室には防水加工を施し「タフギア」という屋外でハードに使える機能を表現した。最近はシティ感覚のSUVが増えたが、エクストレイルのタフギアは、このカテゴリーの本質でもあるだろう。
今はジムニーが人気を集め、ジープブランドでもラングラーアンリミテッドが売れ筋だ。原点回帰というか、SUVの本質を重視する消費動向が見られ、エクストレイルはそこにハマった。SUVのツボを押さえている。
■新車をあまり出さない日産
これらの日産車が売れた最後の理由は、ほかの日産車の設計が古くなり、買う気にさせる車種が減ったことだ。
日産にはかつてコンパクトカーのティーダやティーダラティオ、SUVのデュアリス、ワゴンではウイングロードやアベニールなどが用意されて相応に売れていたが、今はすべて廃止された。
コンパクトカーのキューブやマーチは購入可能だが、発売から8年以上を経過して、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も備わらない。ジュークには追加されたが、発売から8年以上を経過した。
さらにエルグランド、スカイライン、フーガなども設計が古く、歩行者を検知できる緊急自動ブレーキも備わらない。こんな状態だから、乗り替える車種がなくて困っている日産車ユーザーが大勢いる。
ノートがe-POWERを追加して売れゆきを伸ばしたのは、まさにこの需要の受け皿になったからだ。販売店によると「普通のノートでは物足りなくて購入する気分になれないが、付加価値の高いe-POWERなら、買ってもいいと判断するお客様が多かった」という。
そのためにここで取り上げたノート+セレナ+エクストレイルの登録台数を合計すると、日産の登録車全体の43%に達する。今の日産は、実質的に車種を大幅削減したのと同じ状態だ。
■もう少し日本のことを考えてほしい!
今の日産は世界中でクルマを売るから、国内の市場規模と将来性を考えれば、この程度と割り切っている。
e-POWERの開発も、取り扱い車種を増やさずに投資を抑え、リーフのメカニズムも活用することで最大の効果を得ようとした結果だ。
さらにいえば衝突被害軽減ブレーキを「自動ブレーキ」、運転支援技術を「自動運転」、シリーズハイブリッドのe-POWERを「電気自動車のまったく新しいカタチ」と広告したり、「販売台数No.1」を連呼するのも、限られた予算で最大の効果を得ようとした結果だろう。
これはかなり痛々しい。青くさいことをいえばクルマは夢を売る商品だから、何事にも余裕がほしい。「自動ブレーキ」や「自動運転」は、いうまでもなく交通事故の危険を招く表現だ。
今の新車需要は70%以上が乗り替えに基づくから、大半のユーザーがクルマに詳しい。用途や予算に応じて的確に選ぶから「販売台数ナンバー」と聞いて「それを買おう」と考えることもない。もう少しマトモな宣伝をしてほしい。
この時には開発者の意見を積極的に聞くべきだ。「自動ブレーキ」や「自動運転」で最も悩んでいるのは、日産の開発者だろう。
そして日本で売っているから、海外でも「日本車」と呼べるのではないのか。ドイツで売られていないメルセデスベンツとか、イタリアで買えないアルファロメオなど、欲しいと思うだろうか。
「生き残るだけで精一杯」という状況だと思うが、もう少し、日本のことを考えてほしい。知恵を働かせるのがCMだけでは、なんともやりきれない。
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