「このタクシーで東京の街から日本の風景を変えていきたい」
2017年10月23日に開催されたJPNタクシー(ジャパンタクシー)の出陣式で、豊田章男社長がそう語ってから早1年。この言葉を裏付けるように、都内では“新しい街の顔”を見かけるケースが増えてきた。
JPNタクシーは、長年親しまれた「コンフォート」に変わり、実に22年振りとなる新型タクシー専用車としてデビュー。実際に街なかを走るタクシーの数としては、まだまだコンフォートが主流だが、セダン型のタクシーと大きく異なるフォルムも相まって、予想を上回る早さでJPNタクシーの存在感が高まっている印象だ。
そのフォルムの違いもさることながら、JPNタクシーには他のタクシーと大きく異なる点がある。それは“色”だ。
これまでのタクシーは、東京無線なら「緑色&黄色」、日本交通なら「黄色にオレンジの帯」といった具合に、なじみ深いグループカラーに塗られる車体が多かった。
ところが、JPNタクシーのボディカラーは、ほぼすべて濃い藍色。一体なぜなのか? その鍵を握るハイヤータクシー協会(東京都千代田区)に話を聞いた。
文:ベストカー編集部
写真:編集部、TOYOTA
ベストカー 2018年11月10日号
JPNタクシーのボディカラー、3色あるのになぜ統一?
まず、なぜJPNタクシーは「藍色」ばかりなのか? その理由をハイヤータクシー協会に聞くと、そこにはトヨタ側の“ある狙い”が潜んでいた。
「トヨタで販売しているボディカラーが3色あり、そのなかでも『深藍』を普及させたいという要望をトヨタから受けました。ですので、東京の協会に関しては、その意向に沿って『深藍』のタクシーを導入するようにしました」
「このボディカラーに統一することで、新型車が浸透していることを示すアイコン(象徴)にもなると考え、東京のタクシー会社各社にも協力をお願いした次第です」
では、今後JPNタクシーのボディカラーが、各社のグループカラーに変更されることはあるのだろうか?
「現在は『深藍』のボディに、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックのロゴという組み合わせになっています。オリンピック終了後にロゴは変わりますが、『深藍』で引き続き各社に協力をお願いしたいと考えています」
「導入の前段階では、各社のグループカラーにしたいというお話もありましたが、ボディカラーは統一していただき、行灯などで各社の特色を出してもらうようにしています」
都内を走るタクシーの3分の1が深藍のJPNタクシーに!?
ここまでで、JPNタクシーの色が統一されている理由は分かった。冒頭で触れたとおり、JPNタクシーを都内で見かけるケースは増えてきた“印象”だが、何台程度JPNタクシーは導入されているのだろうか? 前出のハイヤータクシー協会によると、実際の導入台数も着々と増えているという。
「2020年のオリンピックまでに東京地域で1万台を導入する予定になっていますが、東京では2018年7月末までに約3300台が納入されています」
「東京都内には約5万〜6万台というタクシーが走っていますが、日中営業するタクシーは約3万台程度。最終的には、その3分の1が『深藍』のJPNタクシーに入れ替わることになります」
一方、既報のとおりトヨタによれば、発売から2018年9月までの累計販売台数は約7540台。グレード販売比率は上級グレードの「匠(たくみ)」が82%、標準グレードの「和(なごみ・327万7800円)」が18%。
また、カラー別の販売比率は深藍が80%、ブラックが12%、スーパーホワイトIIが8%となっているとのこと。
ハイヤータクシー協会とトヨタの回答には、期間のズレがあるものの、データから見てもJPNタクシーが東京に集中的に導入されていることがわかる。
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ちなみに、「なぜJPNタクシーは同じ色なのか?」といった質問を受けていないか、東京無線に聞いたところ、「ありがたいことに、東京無線であれば緑色&黄色というグループカラーで認知していただいており、お客様から『なんでグループカラーじゃないの?』というお声を乗務員がいただくことは確かにあるようです」とのことだった。
タクシーを通じて、東京の街の景観が徐々に変わりつつある。
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