なぜ日本では30年前のタクシーが走り続けられるのか?

■懐かしいY31型セドリックタクシーとクルー

Y31型セドリックセダンの営業車は1987年6月に販売開始され、2014年12月に受注分の販売が終了。グレードはクラシックSV、スーパーカスタム、カスタム、オリジナル。ボディサイズは全長4690×全幅1695×全高1445mm。LPGエンジンは2L、直4、85ps/17.3kgm

 いっぽう、トヨタのコンフォートに対抗する日産の小型乗用車タクシーはクルーだ。シャシーはタクシー専用モデルとして設定されていたC32型系ローレル4ドアセダンのフロント部分と、Y31型セドリック営業車のキャビンとリア部分を組み合わせたもの。

 1993年7月に販売開始され、2009年8月まで販売されていた。クルーサルーンという自家用車もラインアップされた。

1993年7月から2009年8月まで生産されていた日産クルー営業車。ボディサイズは全長4595×全幅1695×全高1460mm。2LのLPGエンジンは85ps/17.0kgm。運転席と左リアドアの開口寸法と最大開き角度を拡大するなど、タクシーでの利便性を向上させている

 この流れが変化したのは意外に最近の話で、平成27(2015)年6月の道路運送車両法(道交法)の保安基準の改正で車種の選択幅が広がった。国土交通省の発表によれば……

「タクシーなど乗車定員10人以下の旅客自動車運送事業用自動車に係る以下の基準を廃止しました。1/座席の寸法に関する基準、2/通路の幅と高さに関する基準、3/乗降口の大きさ、構造等に関する基準、4/緩衝装置及び座席が旅客に与える振動、前方の座席との間隙等に関する基準。

 これにより、タクシー事業者等による車両選択の幅が広がり、より輸送ニーズに応じた事業活動が可能となります」。(国土交通省報道発表より抜粋)

 結果としてタクシー車両のバリエーションが増えて、東京都内で見かけるタクシーは依然としてセダンのクラウン/コンフォートが主役の座に就いてはいても、プリウスも荷物が積みやすいワゴンタイプのプリウスαを含めて目にする機会も増え、ヴェルファイア/エスクァイアも結構見かけることも多い。

 個人タクシーでは“ゼロ”クラウンも現役で働いているなど、タクシー業界ではトヨタの“一党独裁”が続いている。

 なにより、2017年10月に20年以上の歳月を経て、新たにトヨタのタクシー専用車両としてデビューした「ジャパンタクシー」に、タクシー車両が急速に入れ替わりつつあることが実感できるようになった。

■JPNタクシーにとって変わられてきている

現在タクシー車両として販売されているトヨタの「ジャパンタクシー」は1.5L直4 LPG仕様エンジンを使用したハイブリッド(ベースはシエンタ)。価格は標準仕様で327万780円、上級の「匠」で349万9200円、JC08モード燃費は19.4km/L

 2017年10月〜2018年11月末までの累計の登録台数は8930台に達している。意外に少ないと思われるかもしれないが、タクシー会社が車両を入れ替えるタイミングや事業者によって架装の内容が異なるため対応に手間がかかるので、乗用車のようなスピードで販売台数が伸びてはいかないという事情があり、生産の初期段階ではほとんどの車両が東京の大手タクシー会社に納入され、2018年9月末時点で半分を超える4165台が東京の街を走っている。

 いっぽうで日産車は長く脇に追いやられている。商用車のNV200をベースに仕立てた「NV200タクシー」は、ジャパンタクシーのような「専用車」ではなく改造を施した「仕様車」であり、ジャパンタクシーはグリップを開口部に設置して乗り降りを容易にするといった、人に優しい“ユニバーサルデザイン”が“標準設定”として採り入れるなど、NV200もユニバーサルデザイン仕様も設定されてはいても、商品性では圧倒されている。

次ページは : ■Y31型セドリックタクシーの後継車NV200タクシー

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