なぜ日本では30年前のタクシーが走り続けられるのか?

■Y31型セドリックが生き残っている理由

Y31型セドリックを使用する荏原タクシー

 クルマ好きからすれば、Y31型セドリック/グロリアといえば、人気だったグランツーリスモSVを思い出すが、その年代の形をしたクルマが、いまだに街中を走っているのに驚かされる。

 派手なイエローやグリーンにペイントされていると気づかないのだが、筆者の住んでいるエリア、東京・世田谷区や大田区、目黒区、品川区あたりで、よく見かける荏原交通の白いY31セドリックタクシーは、その白いボディカラーのせいなのか、なおさら古く見えてしまう。

 もちろん、Y31型セドリックを使用しているのは荏原交通だけではない。ほかのタクシー会社のY31セドリックは緑や黄色にペイントされるので、Y31セドリックかクラウンコンフォートなのか、なかなか見分けが付かないのだ。

 そのあたりを、普段お世話になっていて愛着のある同社なので、問い合わせてみた。

 Y31が現状で所有台数300台のうち150台と半分ほどがセドリック営業車だという。詳しく訊いてみると、これには取引上の事情があった。先に説明したとおり、Y31型タクシーは2014年末に受注販売を終了しているが、最終のタイミングで同社は約2年分の使用台数となる100台を契約したという。

 ここで日産(販売会社)と次の契約について、荏原交通はNV200の納入契約をせず、1年間を置いて判断することにしたとのこと。

 その間はクラウンでまかない、最終的に2018年から本格的にタクシー事業者に納入が始まったジャパンタクシーを購入することに決定した。

 このような経緯で、現在も荏原交通のタクシー車両としてY31型タクシーが生き残ることになったとのことだ。

 なぜ日産との継続的な流れでNV200タクシーと契約しなかったといえば、その成り立ちに理由があり、試用した段階で問題になったのはなにより「タクシーに見えないこと」だったという。

 荏原交通のタクシー車両は白地のカラーリングが施され、大手タクシー会社のような緑や黄色などの車体色ではなく、ぱっと見では商用車(営業車)と判別できず、タクシーと認識しにくかったのだ。

 加えて、商用バンをベースとしたゆえか、ドライバーから乗り心地に関して不満の声が上がったという。現在はY31型セドリックからジャパンタクシーとの入れ替えが順次進んでいるということのようだ。

■タクシー業界は安全性を重要視し、変わってほしい!

 乗用車の衝突安全性が飛躍的に向上し、自動ブレーキも政府がサポカーとして官民連携で普及啓発に努めているなかで、前時代的なタクシーが走っているのはちょっと時代錯誤に感じてしまう。

 衝突安全性や自動ブレーキは、人を乗せる際の大事なおもてなしのひとつではないだろうか? 不景気が続き、経済的に厳しいのは重々わかるのだが、人の命を預かるのがタクシー。安全や安心には代えられないことなので、タクシー業界はもっと変わっていってほしいと思います。

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