なぜ日本では30年前のタクシーが走り続けられるのか?


 ハイブリッド、PHEV、EV、燃料電池車と、まさに世界の最先端をいく日本の自動車業界。

 ところが、何気なく街中を走っているクルマをみると、だいたいのクルマは新しいのに(しかも汚いクルマは少ない)、タクシーだけ異様に古くありませんか?

 時代錯誤に感じてしまったのは担当だけでしょうか?

 クルマ好きなら、Y31セドリック、クラウンコンフォート、コンフォートが走っているとわかるのですが、衝突安全、安全装備、排ガス規制……、今の日本で走り続けていることが不思議に思えてなりません。

 ということで、いまの日本、古いタクシーが走り続けている謎をモータージャーナリストの岩尾信哉氏が追ります。

文/岩尾信哉
写真/トヨタ、日産、ベストカーWeb編集部


■貴重な5ナンバーサイズのクラウンコンフォート、コンフォート、クラウンセダン

クラウンコンフォートは1995年12月に販売開始され、2018年2月に販売終了。クラウンという名が付いているが、ベースはX80系マークIIセダン。ボディサイズは全長4695×全幅1695×全高1515mm。LPGエンジンは2L直4、116ps/19.3kgm

トヨタコンフォートは1995年1月から販売を開始。2009年1月に一時生産中止し、2011年に生産を再開、2017年5月25日に受注受付を終了し、2018年1月まで生産した。ボディサイズはクラウンコンフォートよりも全長が100mm短い全長4590×全幅1695×全高1525mm。2L、直4のLPGエンジンは116ps/19.3kgm

 街中で見かけるタクシーに新たな車種が増えるとどことなく気分が盛り上がるのはクルマ好きの性かもしれない。過去にはタクシーといえばトヨタならクラウン、日産ならセドリック/グロリアのそれぞれセダンタイプと相場が決まっていた。

 2014年の9月に生産中止、同年12月に販売終了したY31型セドリックセダン営業車は、基本設計は1987年まで遡る。

 安全装備については、ハロゲンヘッドランプとABSぐらいしか見当たらず、ESC(横滑り防止装置)などが装備されないなどの問題が浮かび上がってくる。

 いっぽうでクラウンセダン/コンフォートのタクシー車両(生産は1997~2018年)では少々事情が異なる。2013年10月に国土交通省が新型車では2012年から、継続生産車については2014年からESC(横滑り防止装置)を義務化したことに対応して、スタビリティコントロールとトラクションコントロールを追加装備した。

クラウンコンフォートの上級版、クラウンセダンは2001年8月に登場、2017年6月に受注が終了し、受注分の生産は2018年1月に終了。ボディサイズは全長4695×全幅1695×全高1515mm。全長4830×全幅1710mmとしたスーパーサルーンも用意された。2L、直4の LPGエンジンは116ps/19.3kgm

 これに対して日産は、Y31型セドリックのタクシー仕様車に関して改良を断念して、事実上タクシー車両の生産・販売から撤退することになった。トヨタの新世代専用車両のジャパンタクシーに置き換わることで2017年5月末に販売は終了してその役割を終えたとはいえ、トヨタのタクシー車両の主役の座は揺るぎのないものとなったわけだ。

■懐かしいY31型セドリックタクシーとクルー

Y31型セドリックセダンの営業車は1987年6月に販売開始され、2014年12月に受注分の販売が終了。グレードはクラシックSV、スーパーカスタム、カスタム、オリジナル。ボディサイズは全長4690×全幅1695×全高1445mm。LPGエンジンは2L、直4、85ps/17.3kgm

 いっぽう、トヨタのコンフォートに対抗する日産の小型乗用車タクシーはクルーだ。シャシーはタクシー専用モデルとして設定されていたC32型系ローレル4ドアセダンのフロント部分と、Y31型セドリック営業車のキャビンとリア部分を組み合わせたもの。

 1993年7月に販売開始され、2009年8月まで販売されていた。クルーサルーンという自家用車もラインアップされた。

1993年7月から2009年8月まで生産されていた日産クルー営業車。ボディサイズは全長4595×全幅1695×全高1460mm。2LのLPGエンジンは85ps/17.0kgm。運転席と左リアドアの開口寸法と最大開き角度を拡大するなど、タクシーでの利便性を向上させている

 この流れが変化したのは意外に最近の話で、平成27(2015)年6月の道路運送車両法(道交法)の保安基準の改正で車種の選択幅が広がった。国土交通省の発表によれば……

「タクシーなど乗車定員10人以下の旅客自動車運送事業用自動車に係る以下の基準を廃止しました。1/座席の寸法に関する基準、2/通路の幅と高さに関する基準、3/乗降口の大きさ、構造等に関する基準、4/緩衝装置及び座席が旅客に与える振動、前方の座席との間隙等に関する基準。

 これにより、タクシー事業者等による車両選択の幅が広がり、より輸送ニーズに応じた事業活動が可能となります」。(国土交通省報道発表より抜粋)

 結果としてタクシー車両のバリエーションが増えて、東京都内で見かけるタクシーは依然としてセダンのクラウン/コンフォートが主役の座に就いてはいても、プリウスも荷物が積みやすいワゴンタイプのプリウスαを含めて目にする機会も増え、ヴェルファイア/エスクァイアも結構見かけることも多い。

 個人タクシーでは“ゼロ”クラウンも現役で働いているなど、タクシー業界ではトヨタの“一党独裁”が続いている。

 なにより、2017年10月に20年以上の歳月を経て、新たにトヨタのタクシー専用車両としてデビューした「ジャパンタクシー」に、タクシー車両が急速に入れ替わりつつあることが実感できるようになった。

次ページは : ■JPNタクシーにとって変わられてきている

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