■Y31型セドリックタクシーの後継車NV200タクシー
客室への乗り降りなどの機能面を追うと、ミニバンのようにスライドドアが装備されていれば、バキューム/ロッド式の自動ドア機能を追加する開閉架装の手間がいらない(ドライバーとしては開閉スピードが安全面を考慮した設定とはいえ遅いという不満の声もあるそうだ)。
ちなみに、ジャパンタクシーでは両側スライドも検討したが、子供がかってに路上に出るような場合を想定して運転席側にはあえて採用しなかったそうだ。
ジャパンタクシーは車椅子の室内への乗り入れでは、さすがにスロープの設置などでは段取りが多すぎてドライバーの乗車拒否の問題が起きるなど課題はあるとはいえ、スタイリングなどでも個性を打ち出せているから、日産がトヨタに奪われたシェアが簡単には取り返せないのは当然だ。
■タクシーの耐用期間は3〜5年、30万〜50万km!
タクシーの車検などの整備については、人の命を預かるサービス事業として、法律によって厳しく義務化されていることは言うまでもない。
バスやタクシーの“旅客自動車運送事業用自動車”の場合は、初回は購入の1年後、以降も1年ごとに実施が義務づけられ、現実のタクシー車両の使用条件としては、年間10万kmで最長耐用距離は30万~50万km、耐用期間は約3~5年、最長では30年ほどと言われていて、大手タクシー会社では4~6年で買い換えによって車両を入れ替えている。
タクシー車両の燃費は、街中でのストップ&ゴーを繰り返す“過酷な労働”などを強いられているため約10km/Lといわれているが、LPGの価格が都内でリッター約60円とされているから、コストの面での優位性は圧倒的で、現状でタクシーではガソリン、ハイブリッド車は増えているとはいえ、LPG(液化プロパンガス)車が約9割を占めているという。
■点検整備は3カ月ごと、車検は1年ごとに実施
タクシーとして使われる車両は、道路運送車両法で点検整備は3ヵ月ごと、車検は1年ごとに実施すると規定されている。
大手タクシー会社では自社で整備工場を備えていることも多いから、点検整備については綿密に実施されていると考えてよいだろう。
さすがに走行距離が25万kmほどになれば車両を系列のタクシー会社や中古車業者に売却して、新車を購入する例もあるようだ。ほとんどのタクシーは使い尽くされたうえで、その後は中古車業者から海外に売却される場合や部品単体を流用することもあるという。
日本製車両が海外でも評判が良いとされるのは、車検制度によって安全性能が維持されていることが大きな要因だろう。
ちなみに営業車両であるタクシーでは、自家用乗用車にはない減価償却費という要素が加わる。国税庁のホームページを見ると、タクシー車両の耐用年数について、運送事業用車両の項目で総排気量が2L以下は耐用年数3年とコメントされ、タクシーはこの耐久年数3年の項目が当てはまる。
耐久性に関する具体例に触れておくと、街中でのストップ&ゴーを繰り返すことが多いタクシー車両に要求される性能としてブレーキなどを含めた足回りは重要な要素だ。
なにより装備として大きいのは、ブレーキパッドの耐久性(使用距離)は飛躍的に向上したとされ、トヨタのプリウスを中心としたハイブリッド車を採用することは、コスト面で確実に有利に働いている。
トヨタのハイブリッド車ではニッケル水素バッテリーの耐久性は10万kmほどとも言われているが、大手タクシー事業者に訊けば、現状では入れ換え時期まで大きな交換までに至った例は見かけられないとのことだ。
NV200タクシーの燃費データについては、改造車両のため公式には明らかではないが、あくまで日産ディーラーが独自に予測して算出した参考値ながら、NV200タクシーのユニバーサルデザイン仕様の燃費と航続距離はLPG運転時の燃料消費率が9.48km/L(JC08モード:JATA認証試験データ)。
これに基づき算出したLPG燃料のみで想定される航続可能距離は約350kmとされている。
NV200の派生車種としては、アイデアとして頭に浮かぶEVのe-NV200はどうなのかといえば、欧州の一部地域で運用されているようだ。
ただし、航続距離が不確実な日本のタクシーの使用状況ではeNV200のワゴン仕様を使うことは難しい(価格5人乗り:460万800円、7人乗り:476万2800円)、航続距離は300km(JC08モード)でも、経験上およそ200kmの走行距離がギリギリとなるはずだ。
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