意外と乗用車は大丈夫? しかしバスやトラックはコスト増が凄まじい
ユーロ7の内容は、2035年までに欧州における乗用車&バンのCO2排出ゼロが提案されたことを踏まえたもの。減少傾向ながら、現在も欧州においてガソリン車とディーゼル車の販売シェアは高く、いまだ52.5%を占める(2022年上半期)。HEVは23.3%、BEVは12.5%、PHVは9.2%だった。
純エンジン車がユーロ7に対応するには新たに触媒の追加などが必要。また、ディーゼルのNOx排出量は現在の 80 mg/kmだが、ユーロ7では現行ガソリン車のユーロ 6 と同じ 60 mg/kmにまで引き下げる必要がある。
純エンジン車の特にディーゼルはコスト増が予想されるが、どのみち2035年には欧州で内燃機関(ICE)搭載の新車は販売できなくなる。したがってメーカーとしても必然的にBEVの開発に注力し、日産のように欧州向けエンジン開発を終了する企業も増えるはず。BEVをはじめ、ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHV)車の販売比率が増えていくだろう。
しかし、意外にも乗用車は規制適合にかかるコストが少ないようだ。欧州委員会が公開したファクトシートによると、現行のユーロ6適合車がユーロ7に対応した場合の販売価格は、小型車でプラス90~150ユーロ(約1.3~2.2万円)に留まるという。このコストがHEVやPHVにのみ該当するのか、純エンジン車にも該当するのかは不明だが、「既存の技術を応用できるため」安価で済むとしている。
一方、バスやトラックなどの大型車は、同ファクトシートによると2600ユーロ以上(約40万円以上)と大幅なコスト増が想定されている。
ブレーキやタイヤによる汚染物質に関しては試験方法すら未確定なのに、乗用車のコスト計算はいささか楽観的と思われるが、とにかく大型車への影響は深刻だ。
今回の規制案は政治主導で、現地の自動車メーカーからの反発も強い。
欧州自動車工業会(ACEA)は「車両コストが増大しながら、環境面での恩恵は非常に限定的」とし、「深刻な懸念を抱いている」との声明を発表。内容や実施時期が見直される可能性がある。
日本への影響は甚大だが、LCAを考慮した柔軟路線を貫いてほしい
欧州のユーロ7は、日本にとって決して対岸の火事ではない。
日本やアメリカは独自の排ガス規制を敷いているが、パワートレインは世界的にほとんどが共通。また、中国やインドなど世界の多くの国々はユーロを基準とした排ガス規制を導入している。
グローバル化された今、結局、日本でも欧州と同様のクルマが販売される可能性は高い。ユーロ7は日本を含む世界の自動車産業に大きな影響を与えるのだ。
もちろん日本は、みだりに欧州に追随せず、可能な限りHEVやPHVを残す選択肢を取るべき。原料採取から生産、廃棄までに排出するCO2の量を考慮したライフサイクルアセスメント(LCA)を視野に入れるべきだ。
なお、欧州でHEVやPHVの割合が増えることになれば、技術的に優位に立つ日本車のアドバンテージが欧州で増すことになる。ただ、こうした事態をEUが見過ごすはずもなく、2024年に導入が予定される騒音規制などで日本車のHEVが締め出される可能性もあるだろう。
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