Eトランジットは既に運行を開始
フォードプロはこの合意の元、最初のEトランジットを既に納車しており、DHLグループの電動フリートの一部として複数の国でラストマイル輸送に活躍している。
(DHLがEトランジットの運行を開始しているのは、ブルガリア、ベルギー、チェコ、ドイツ、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、イギリスとのこと)
フォードプロ・ヨーロッパのゼネラルマネージャー、ハンス・シェップ氏は次のようにコメントしている。
「フォードプロとドイチェポストDHLグループは、より優れた持続可能性と電動ソリューションへのコミットメントというビジョンを共有しています。この合意は、世界中の数100万件という輸送が電動車両により行なわれるための、重要な一歩となります。
Eトランジットは北米の商用EVで最も売れている商品です。6月以降は欧州においても同セグメントでベストセラーとなっています。この全電動の2トン車は、私たちの野望を実現するために、もう動き出しているのです」。
いっぽう、DHLグループで調達を担当する役員で、モビリティ部門のトップを務めるアンナ・スピネッリ氏は次のように話した。
「ラストマイル輸送の電動化は、私たちの事業を脱炭素化するための柱となります。フォード・Eトランジットを加えたことで、私たちのグローバルフリートは2万7000台の電動バンを保有することになり、世界中でグリーンな輸送を提供する能力がさらに強化されました。
共同で輸送分野に特徴的な要求に対処することで、運行とサービスにおける効率はさらに高まるでしょう」。
車両の共同開発も視野に
これらの車両がDHLグループのフリートに加わったのは、配送が一年で最も忙しくなる時期に当たり、繁忙期を通じてサステナブルな輸送が可能になった。
今回の合意により注文されたEトランジットのパネルバンは、アメリカと欧州における速達貨物の取り扱いを前提としたもので、日本市場は対象となっていない。そもそもフォードは2016年に日本市場から撤退しているので、いま国内に入ってくるフォード車は個人輸入など少数のみだ。
ただし、DHLは日本でもビジネスを行なっており、両社はラストマイル輸送の電動化をグローバルに進めるということなので、もしかしたらフォードが商用車で日本市場に再参入する未来があってもおかしくはない。
なお、DHLグループはドイツの都市内輸送用にカスタマイズしたフォードプロ製の電動ボックス車の購入も行なっている。DHLはかつてドイツのストリート・スクーター社を子会社化して自社で配送用バッテリーEVを製造していたが、同社はルクセンブルクの企業に売却されている。
(DHLはストリート・スクーターの事業を「閉鎖」と発表したが、その後方針転換して売却。ちなみに日本ではストリート・スクーターの配送車はヤマト運輸に納入されている)
自社での車両製造をやめた後、DHLはフォードプロやメルセデス・ベンツ、ボルボ・トラックスなど外部から配送用EVを調達していた。
両社が署名した覚書では、フォードとDHLグループの更なる協業の可能性についても言及している。たとえば新しいデジタル/充電ソリューションのほか、将来的には車両の共同開発も目指すようだ。共同開発が実現すればDHLのEV開発の経験が活きてくるだろう。
また、フォードプロはDHLグループに対して革新的アイデアへのアーリーアクセスを提供することに加えて、製品化前(開発中)の車両やサービスへのアクセスも提供する。これにより両社は、グローバルにあらゆる市場での協働機会の拡大を模索している。
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