■シティコミューターとしてi3の実力はいかに?
一方、i3はシティコミューターというコンセプトでもあり、ハイスピードクルーズをするクルマでもないので、そもそも空力をそれほど追求していないでしょう。
これはこれでいいと思います。
それにしてもi3は今見ても”近未来”で、新技術の展示会みたいなクルマです。
BMWにしてみれば、このモデルは「とにかく新しいコンセプトでEVを作りましたよ」というところで、一番の関心事は「次の一手」です。
新素材を開発し、新たな工場でCO2を低減して生産していくなど、これらの技術を今後次期型でどのように発展させていくか? どのようなクルマを作っていくか? です。
とはいえ、初期モデルからずいぶんと変わりましたね。細かいところを改良して洗練されています。
都内から箱根まで約100km走って来て、まだ40km走れるバッテリー残量があるのですから、かなり実用的だと思います。
レンジエクステンダー分も合わせれば走行可能距離は140km残っています。他車での採用には至っていませんが、i3のタイヤは実に合理的なのです。
155/60R20という、細くて大径というのが一番いいのです。転がり抵抗が少なく、ブレーキ接地長がとれる究極は自転車の大径細幅タイヤです。
幅広タイヤで接地面積を稼いでも、実際のコーナリングではキャンバー角の変化が発生して接地面変化が起こるので、実はあまり意味がないのです。
むしろ路面に対して縦方向の接地面積を大きくすることで転がり抵抗を小さくしながら駆動や制動時の接地や旋回時のタイヤCPをより大きく確保できるようになるわけです。
クラリティのタイヤは、サイズ的には一般的な235/45R18ですが、転がり抵抗を大幅に低減する仕様を採用しています。
トレッド面とサイドウォールを繋ぐショルダー部がものすごくソフトで薄い構造。路肩干渉などでの破損を考えなければ、転がり抵抗低減のキーとなる技術なのです。
■i3には使いやすさの点で改善を求めたい
i3の充電ポートはフロントフード内にあるので、ちょっと使いにくいです。
冬の寒い日に帰宅してフードを開け、200Vの充電をセットし、冷え込んだ翌朝出かける時にフードを開けて太くて硬く汚れたコードを束ねて収納して……というのは、やはり不便。
一戸建てならばまだいいですが、マンションの駐車場などでは充電用電源が用意されていたとしても、使いにくさを感じます。
コードを車体にビルトインして、掃除機コードのように、シュルシュルと出し入れできる充電ケーブルはできないものでしょうか? これではEVの普及など進みません。
もちろんこれはi3に限った話ではなく、すべてのEV、プラグインハイブリッド車共通の話です。
雨の日や雪の日など、クルマが汚れていたりしたら、ケーブルの抜き差しは衣服が汚れますし、かなり面倒です。
屋根付きの駐車場に止めている人など、ほんの一部です。クラリティの室内をチェックします。
センターコンソールにしても、ナビモニター画面にしても、すべてが取って付けたようなデザインで、インテリアに溶け込んでいません。
モニター画面はタブレットをポンと置いたような、今どきの室内感覚効果を狙ったデザインなのでしょうが、一体感がなく、高級感はありません。
シートはいいです。フィット感があります。高級感のある座り心地です。バイザーの表面にカードポケットがありますが、これはダメ。
見える場所にこのようなものを付けては盗難の対象になってしまいます。カードポケットを付けるのならバイザーの裏側の見えない場所にすべきです。
後席は足元の広さ感を感じます。ただ床はちょっと高く、膝が上がってしまう姿勢を強いられます。
一方、頭上スペースはルーフ後端部でドア開口部に繫がる両サイドが低い。頭上の高さそのものは充分クリアランスがありますが、後席にしっかりと座ると頭側面がちょっと気になります。
トランクリッド後端の、ガーニッシュ部がガラスになっていますが、意味が不明です。おそらく、バッテリー搭載により荷室床面が高くなり、荷室容量確保のために高さをとる必要があり、後方視界が悪くなるのを避けるため、ということでしょう。
それはわかるのですが、だったら、トランクリッドを保持するために、パーシェル部左右に這わせ、下に出っ張っているトーションバーをやめて、アーム部分にコイルスプリングを入れてやればいい。
トーションバーを外すことで10センチ程度はパーセルを下げることができるので、こんな覗き窓は必要なくなります。もっといろいろな工夫があると思います。
i3は後席を前倒しできますが、ドイツ車にしては珍しく荷室から完全フラットなフロアにできるのは感心します。クラリティの後席も前倒できますが、ロック部の引っかかり金具が床面に出っ張っていて、荷物を積む際に邪魔になります。
i3の後席はボディサイズを考えれば足元も頭上も充分なスペースが確保されています。ちょっと床が高く膝が上がってしまいますが、充分許容範囲です。
シートそのものは前後席ともに見た目にはずいぶんと薄っぺらく見えるのですが、座り心地はフィット感があって不満はありません。
旅客機のエコノミーシート技術です。シートはクッションが厚ければいいというものではないのです。
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