「風をきって走る喜び」を車イスレーサーに!カーボンフレーム製陸上競技車KIWAMI

夢は16年リオパラリンピックで金メダル!!


自動車部品メーカーの車イスレーサー!!

 アクティトラックやバモスなどホンダの軽商用車の架装を手がけるほか、樹脂製燃料タンクやサンルーフといった部品の製造・販売を行っている「八千代工業」(本社・埼玉県狭山市)がこのほど、カーボンフレームの陸上競技用車イスレーサー(レース用参戦車両)「極2014〈KIWAMI〉」を開発し、7月1日から販売を開始する。

 実はこの八千代工業、かつてはビートを生産し、来年登場予定の軽オープンスポーツ、S660の架装も手がけるのだが、そんな同社の手による初の車イスレーサーを紹介しよう。

 このKIWAMI、障がい者スポーツの陸上競技種目である車イスレース用のフラッグシップモデルで、八千代工業と本田技術研究所、そしてホンダR&D太陽の3社による共同開発で生まれた。

 同社が製作と設計、そして量産を手がけ、本田技術研究所がカーボンフレームとホイールの基本デザイン、ホンダR&Dが試作モデルの評価を各各分業して担当したとのこと。

KIWAMIが誕生したきっかけは、

 「弊社の中期経営計画でまったく新たな分野にチャレンジする計画がありまして、これまで弊社が福祉車両に取り組んできたノウハウやカーボン技術を、障がい者スポーツの発展に生かせないかということで始めました」と、同社管理本部総務部広報ブロックの市川里美ブロックリーダーはこう説明する。

 驚かされたのはKIWAMIの価格。カーボンメインフレームだけで216万円~となり、超軽量カーボンホイールのほうは後輪一式で54万円。ちなみにアルミタイプの市販レーサーモデルは通常フレームが20万~30万円で、メインフレームにカーボンを使ったものでも約60万円とのことで、ホイールは通常の市販カーボンタイプで一式約30万円だそう。

 KIWAMIはトップクラスのアスリート向けということになる。選手一人ひとりの身体を実際に3Dスキャナーで採寸し、契約が完了するまで約3カ月かかるという完全オーダーメイド品なのだ。

 選手の身体にフィットした専用のシートフレーム作成のため、実際に八千代工業社内で3Dスキャナーで採寸

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 実際に採寸した車イスレースの選手の画像データ。これをもとにシートフレームを製作

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 複合材の適性を生かす最適積層設計採用。コーナリングGを想定したフレームの構造解析を実施

アルミフレームよりも約1000gの軽量化に成功!!

 同社がものづくりの会社ならではの高い技術力を注入したこのKIWAMIの特徴について、同社開発本部生産技術部の安田哲部長に伺うと、「3D測定技術で選手の身体にフィットした専用のシートフレームを採用し、最先端のカーボン設計技術によって高振動減衰カーボンフレームと超軽量カーボンホイールを実現させました」。

 開発の過程で苦労した点については、

「3年前に素材メーカーさんをあたった頃はちょうどボーイングB787がカーボンを使い始めた時期で、帝人さんも東レさんもカーボンを扱った部署をお持ちでしたが、なかなかいいご返事をいただけなかった。そのなかで1年前にようやくカーボン素材を入手することができたんです。

 ところが、私どもは車イスレーサーの開発はなんせ初めてのことでして、カーボンの持つ性能をいかに引き出すか、また製品化にあたってどうやってコストを抑えていくのか、そして振動をいかに吸収していくのか、コーナリングGを想定したフレームの構造解析にたどりつくまでに紆余曲折がありました」(安田部長)。

さらに、

「カーボンを自分たちで貼り合わせて作ったのは初めての試みでしたし、いろいろ手探りの状態でしたね。それに車イスレーサーはただ軽くすれば速くなるワケじゃありません。

 試作モデルもホイールのみですが、実際にホンダR&D太陽所属の佐矢野利明選手らに今年の東京マラソンで使ってもらい、実レースでの実走行データの蓄積を重ねました。操縦安定性と乗り心地を追求し、加速性能とトップスピードを向上させています」とは、同じく開発にあたった同社生産技術部の柴崎博文技術主任の言葉。

 気になるのはカーボンを使ったことで通常の市販アルミタイプとどう違うのかということだが、

 「選手によるとフレームの剛性が高く、バランスのいい走りができるそうです。また、ホイールもこぎ出しの時の転がり方が軽く、スタートで差が出るとのことでした」(安田部長)。

 今年の東京マラソンに出場した選手の走行。ホイールのみ試作モデルを使用している

 同社の目標は、このKIWAMIで’16年リオでのパラリンピック金メダル獲得、そして’20年東京パラリンピックでの表彰台独占だそうだ。夢は大きく膨らんでいきますな。期待しましょう。

 今年秋にはKIWAMIと同じ基本設計で、カーボンとアルミを使った一般向けの廉価なスタンダードモデルを発売する予定だそうで、こちらは詳細が決まり次第BCでも試乗させてもらうことに。こちらも楽しみだ!

 フラッグシップのKIWAMIと同じ設計思想によるスタンダードモデルも今年秋発売。価格はKIWAMIの約4分の1となる約50万円より安くしたいとのこと

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