トヨタ、日産、ホンダらが開発するパーソナルモビリティの今日と明日

トヨタ、日産、ホンダらが開発するパーソナルモビリティの今日と明日

宮古島で実証実験中のMC-βの注目度はとにかく高い!

 最近あちこちで軽自動車より小さい新種のパーソナルモビリティの実証実験をやっているみたいだけど、本当に我々が手にとって乗れる日が来るのか?

TEXT/西村直人(交通コメンテーター)

パーソナルモビリティとは

 パーソナルモビリティとは人1人、ないし2人が移動する際に必要なエネルギー量が少なく、製造から廃棄されるまでのCO2排出量も少ない新種の〝のりもの〟のこと。

 軽自動車と比べてもボディは小さく(全長、全幅ともに20~30%減)軽い(500㎏程度)ため、人1人の移動に必要なエネルギー量も少なく、現在販売されているハイブリッドカーの1/3程度、市販されているEVとの比較でも約半分と非常に優秀。

 さらに国土交通省ではパーソナルモビリティを「超小型モビリティ」と定義し普及に対して前向きだ。自動車メーカーも前のめり気味で、トヨタ、トヨタ車体、ホンダ、日産などが市販を想定した実証実験モデルを多数発表。直近の3年間では実証実験も全国各地で行われている。

宮古島で実証実験中のホンダMC-βとアクティの2ショット。軽トラと比べてもふた回り小さい。
宮古島で実証実験中のホンダMC-βとアクティの2ショット。軽トラと比べてもふた回り小さい。  

 メーカー別に発表されているパーソナルモビリティは共通項も多い。トヨタ車体の「コムス」以外は現時点で販売されておらず、実証実験での特例を除いてナンバープレートの交付を受けた状態での公道走行はできない。

 また、「コムス」は道路交通法上の「ミニカー」に属するため原付ナンバーサイズかつ水色のプレートを装着し公道走行ができるが、同様にトヨタの「i-ROAD」も前2輪、後1輪の3輪車ながら道交法上の規定をクリアしているため先の「ミニカー」に分類される。よって「コムス」と同じサイズ/色のナンバープレートを装着しており、東京や名古屋の各都市で公道における実証実験を行っている。

 ホンダと日産のパーソナルモビリティには軽自動車と同じナンバープレートが装着され、高速道路を走行しないなどの限定付きでの公道走行が許可されている。

 また、2013年の東京モーターショーでトヨタ車体ブースに参考出品として出展されていた「コムス」は2人乗りで軽自動車と同じサイズのダミーナンバープレートには2人乗りをしめす「T・COM」の文字が印字されていた。この「T」はTandem/タンデムの頭文字で、モーターサイクルのように前後2人乗りであることから命名されている。

 さて、こうして各社出揃ったパーソナルモビリティだが、筆者は交通コメンテーターとしての威信をかけ真っ先に試乗! しかも「i-ROAD」以外は公道を走行し、いわゆる混合交通下においての走行性能もチェックした。各車のロードインプレッションをお届けしよう。

市販1台&実証実験中3台のインプレッション

【トヨタ車体 コムス】(市販ずみ)

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初代「コムス」の誕生は2000年8月。約11年間の販売期間で2000台ほど売り上げた。2代目は個人のほか法人利用として「セブンイレブン」や「ヤクルト」の宅配カーでも活躍中  

 交通量の多い大通りに出て早速アクセル深く踏み込む。いわゆる乗用車のEVで体感する力強い加速感とは違ってジワッと加速するイメージだ。そのまま踏み続けると25㎞/hを超えたあたりからグッと力強さが増し、そのまま50㎞/hまで一気に加速していく。

 駆動モーターは安川電機と共同開発した定格出力0.59kW・最高出力5kW(約7㎰)を誇る専用タイプで、例えば流れの速い一桁国道でも第三通行帯にある右折レーン(「ミニカー」は二段階右折が不要)に躊躇なく入れるだけでなく、オーバーパス路の上り勾配でも不足はなかった。ちなみにテストコースでは68㎞/hをマークした。

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 剛性の高いフロントのストラット式サスによりブレーキングでの前荷重を積極的に活用できるため、力強い旋回性能を楽しめる。アシスト機構を持たないステアリングはロックtoロック3.6回転とスローな特性。

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 ちなみに、新型「コムス」には軽自動車用に開発された部品の多くをフロントサスに移植し、軽自動車にも使われている145/70R12のタイヤを前後に組み合わせている。また、フロント/リアともにバウンド&リバウンドのサスストロークがしっかりと採られているため、非常にしっとりとした乗り味が印象的だった。

【トヨタ i-ROAD】

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 車体のバンク角は最大で26・5度(写真は22度に制限した状態)とかなり大きく傾くがコーナリング時に発生する横方向のGに応じたものであるためドライバーには縦方向のGとして感じられるため不安はない。

 このバンク角は物理的に連結されている左右の前輪が上下することで生み出される。どちらかの車輪が上がれば反対側はそれに応じて下がる仕組みだが上下動のみで操舵はしない。

 操舵はステアリングとバイワイヤ技術で電気的に結合された後輪によって行われる。ただし、後輪操舵そのままの特性ではフォークリフトのようなオーバーステア傾向になってしまうためバイワイヤ技術を用いてアクセル開度や速度、そしてバンク角度に応じた操舵角が与えられている。

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実際に運転してみると、慣れ親しんだクルマと同じ丸型ステアリングの操作で向きが変わるためゆっくりとした速度域では違和感は少ない。

 しかし、25㎞/h以上ではバイクのようにバンクさせることができないため、バイク歴26年の西村でも正直最初は戸惑ってしまった。コーナリング時は左右モーター間でのトルク配分によってステアリングを切った方向に曲がりやすくするトルクベクタリング機能が働くため優れた旋回性能を発揮する。

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 また、旋回限界に近づくとステアリングに振動を発生させて知らせてくれるなど新しいHMI※が組み込まれている。

HMIとは人と機械の情報のやりとりのこと(ヒューマン・マシン・インターフェイス)

【日産  New Mobility CONCEPT】

バイクのように前後(タンデム)に座る2人乗りのEVで、すでにルノー(仏)が今年から欧州で販売している「RENAULT TWIZY」と構成部品の99.9%が同じもの
バイクのように前後(タンデム)に座る2人乗りのEVで、すでにルノー(仏)が今年から欧州で販売している「RENAULT TWIZY」と構成部品の99.9%が同じもの  

 試乗したドア付きモデルの車両重量は500㎏(ドアなしは470㎏)と軽自動車の約60%の重さ。

 速さを決める定格出力は8.0kW(最大値は15・0kW)で加速力を示す最大トルクは57N・mと、250㏄のビッグスクーター並みの出力と軽自動車のノーマルエンジンと同等のトルクを発揮する。

 法制化が進めばパーソナルモビリティの現実的な最高速度になる60㎞/hまでの発進加速性能は5秒台後半と、国産125㏄スクーターの2倍以上速かった。

 コーナリング性能も抜群でブレーキもそれに見合うものだが、使用想定速度域が高いため、乗り味はハードでサスペンションのキャスターの関係もありステアリングも重めだ。

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 見た目はかなりクルマチックだが、乗り味はバイクだ。ドアがあっても窓がないため風の巻き込む量は多め。

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 ステアリングヒーターの類いはないから冬場はグローブがほしい。重めのステアリングということもあり滑り止めの付いたアウトドア用がいい。

 狭路や坂道の多い淡路島や横浜で実証実験中だ。横浜では青いパトライトを付け防犯パトカーとしても活躍した。

【ホンダ MC-β】

前後に乗る2人乗りだが、後席は進行方向に向かって左側にオフセットされる。左側ドアから乗降性が向上した。
前後に乗る2人乗りだが、後席は進行方向に向かって左側にオフセットされる。左側ドアから乗降性が向上した。  

 全長×全幅×全高は2495㎜×1280㎜×1545㎜と、軽自動車枠と比べて全長で約73%、全幅で約86%とふた回りほど小さいが、前から見るヘッドライトの端にウインカーが装着されているため、サイズ以上のボリューム感がある。

 動力性能は充分だ。インパネ左側に配置された乗用車のサンルーフスイッチを流用したDレンジボタンを押してアクセルを踏み込む。踏み始めの駆動力が若干強めでゆったり発進するには不向きながら、ホンダらしく元気よく飛び出していき、60㎞/hまでの加速タイムは約7秒(2人乗り時)だった。

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 特設されたハンドリングコースでは素早い切り返しをしてみたが、重心が低く適度にロールセンターが高いからボディのロールはスポーツモデル並みに小さい。サスペンションは前後ともにダブルウイッシュボーン式を採用したが、これはプロトタイプという観点から実証実験中の特性変更に対する調整幅を持たせたかったからだという。

 駆動用バッテリーは東芝製SCiB。正式な発表はないが、570㎏の車両重量と80㎞の航続距離から判断するに、7.0kWh程度と予想する。

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