【初代NSX S660 インテR CR-Z…】平成を駆け抜けた燦々ホンダスポーツの輝き

■平成ホンダスポーツ年表(1989~2019)

(車両解説/永田恵一)

●2代目インテグラXSi(1989年)

 インテグラ自体は主に北米のアキュラチャンネルで販売されるスペシャルティカーという比較的軟派なクルマである。

 しかしスポーツモデルに搭載された1.6L VTECエンジンは世界初の可変バルブタイミング&リフト機構を持ち、NAエンジンでリッターあたり100psとなる160psを達成。

 その後VTECはホンダの基幹技術のひとつに成長し、VTECを使うことでスポーツエンジンだけでなく、低燃費エンジンも作りやすくなった。

●グランドシビックSiR& 2代目CR-X SiR(1989年)

 2代目インテグラから約5カ月遅れで1.6Lクラスのスポーツモデルとしては本命となるシビック&CR-XにもVTECエンジンが搭載された。

グランドシビックSiR
CR-X SiR

 VTEC搭載で130psから160psにパワーアップされたことに伴いビスカスLSDがオプション設定されたほか、この世代のシビック&CR-Xの弱点と言われていたサスペンションストロークの短さにも手が加えられた。

 モータースポーツでもシビックはサーキット、CR-Xはジムカーナで大活躍した。

●初代NSX(1990年)

 初代NSXは当時のポルシェ911やフェラーリ328をターゲットとしたスポーツカーとして登場。

 コンセプトのひとつは「それまで“スポーツカーだから”と許されていた乗りにくさ、信頼性の低さといった一種の甘えをなくしたスポーツカー」で、コンセプトやターゲットを絶対性能で凌駕するという目標もほぼ達成され、15年間も生産された。

 ただ初期の標準車は軟派な面があったのも事実で、ピュアなスポーツカーとしての役割は後のタイプRやタイプSが担った。

●5代目シビックSiR(1991年)

 4代目のグランドシビックに続き5代目のスポーツシビックにも1.6L VTECを搭載する「SiR」が設定された。

 クルマ自体は3ドアがワンルームの住居をコンセプトにした車内レイアウトが新鮮だったが、走りのほうも160psから170psにパワーアップされたのに加え、スポーツシビックからホンダの足回りのコンセプトが「ロールを抑えた硬いもの」から「ロールを生かしてタイヤを有効に接地させる」というものに変わったのも画期的だった。

●ビート(1991年)

 NAエンジンのみを背中に積む軽のスポーツカー。

 NAエンジンということで動力性能はさほどではないのに加え、車重も軽いわけでもなかったため決して速いクルマではなかったが、中身はストラットの四輪独立サスペンション、四輪ディスクブレーキ、エンジンはMTREC(三連スロットル)を採用するなど本格派で、乗ってみても持っているパワーを使い切れるという楽しさを持つ、まごうことなきスポーツカーだった。

●初代インテグラタイプR(1995年)

 3代目インテグラはフロントマスクが個性的過ぎたせいか不調であったが、そのテコ入れも含めて追加されたタイプRはNSX-Rと同じスピリッツで開発された。

 そのメニューはポート研磨を含む180psから200psへのパワーアップ、サスペンション強化、ミッションのクロス化&ヘリカルLSDの搭載、軽量化、空力性能向上など多岐にわたった。

 結果280ps軍団並みの速さを誇り、インテRの魅力に当時のクルマ好きは熱狂した。

●初代シビックタイプR(1997年)

 第3弾となるタイプRは6代目シビックに設定された。

 タイプRの手法はパワーアップ(170psから185ps、SiRと同じ1.6Lでもボア×ストロークは異なる)、サスペンションの強化、ヘリカルLSDの採用、軽量化、空力性能向上とインテグラタイプRとほぼ同じだったが、シビックタイプRはホイールベースの長い新しいシャシーを生かしたコントロール性の高さが大きな特徴で、ウェットでも懐の深い非常に扱いやすいクルマだった。

●5代目プレリュード SiR&タイプS(1996年)

 アメリカンな4代目からヨーロピアンで大人向けのスタイルとなった5代目プレリュードは2.2L VTECを搭載するスポーティなSiRに加え、頂点となるタイプSも設定。

SiR
タイプS

 タイプSはエンジンが220psにパワーアップされたのに加え、前輪のATTS(左右輪の駆動力配分コントロール)を搭載。

 これはランエボのAYCの前輪版的な存在で、乗ったことがある人に聞くと「曲がり過ぎるくらい」と語るほどの高い旋回性能を実現した。

●S2000(1999年)

 ホンダの創立50周年記念も兼ねて登場したS2000は、ホンダとしてはS800以来のFRとなるミドルクラスのオープン2シータースポーツカーである。

 オープンではあるが、中身は9000回転まで回る2L VTECエンジン(250ps)、オープンながら高いボディ剛性を持つハイXボーンフレーム構造、新開発の6速MTを搭載するなど、贅沢かつピュアなものだった。

 それを思うと初期型の338万円という価格は激安だ。 

●2代目インテグラタイプR(2001年)

 2代目となるインテグラタイプRはプラットフォームを一新し、エンジンも2Lとなった新設計のi-VTECとなり、大きく重くなりながらもDC2(初代)以上の速さを得た。

 しかし当時の評判は、(はじめからタイプRがあったことにより)特別感が薄れた、フロントサスがダブルウィッシュボーンからちょっと特殊なストラットになったためイジりにくくなったなど、ネガティブな声も多く、結果的にインテグラタイプRとしては最後のモデルになってしまった。

●S2000 2.2Lモデル(2005年)

 S2000は2Lで250psという高回転型エンジンだったこともあり「6000回転以上回さないと面白くない」、「乗りにくい」という声もあり、登場から6年後に2.2Lに排気量を拡大。

 しかし低速トルクは増し乗りやすくはなったものの、8000回転までしか回らず、高回転域の振動も増えたこともあり、賛否両論ある改良で、ファンのなかでは好みが分かれた(高回転域の振動は2.2Lになったあとの改良で軽減されたのは事実ではある)。

●3代目シビックタイプR(2007年)

 2006年にインテグラタイプRが絶版となった翌2007年、姿を消していたタイプRは4ドアセダンのシビックで復活。

 FD2シビックタイプRは4ドアセダンながらハイグリップタイヤにノーマルでガチガチのサスペンションを組み合わせるという、超スパルタンなクルマであった。

 その甲斐あって不利な条件が重なりながらも同じエンジンでDC5(2代目)インテRを軽く上回る速さを得たが、あまりにスパルタンなせいもあったのか、短命に終わった。

●CR-Z(2010年)

 CR-Zはホンダだけでなく日本車としても久々となったスポーツモデルの新型車だった。

 CR-Zはフィットのプラットホームを使ったハイブリッドの3ドアクーペで、決して速いわけではなくユルいスポーツモデルだったが、低燃費でそれなりに楽しめるモデルではあった。

 しかしこのコンセプトに中途半端さが否めなかったことや近い価格帯で86&BRZが登場したこともあり、改良は重ねられたものの人気は低迷し、1代かぎりで絶版となった。

●先代シビックタイプR(2015年)

 当時モデルサイクル終盤だった欧州シビックに、メガーヌRSが火をつけた「2L FFニュル最速」を勝ち取るべく、半ば強引に設定されたモデル。目標は達成され、日本では750台限定で販売された。

 クルマ自体は2L VTECターボを搭載し、ベースとなった当時の欧州シビックの各部を大幅に強化したという成り立ちで、やはりいろいろな意味で強引なところは否めなかったが、スポーツモデルと考えればそれも個性と受け入れられるモデルだった。

●S660(2015年)

 ビートの現代版的な存在で、S660は当時20代前半のクレイモデラーだった椋本氏の社内での提案が通り、そのまま開発責任者になり市販化されたというプロセスがホンダらしい。

 クルマ自体も速くはないものの、ミドシップながら多くの人が安心して運転を楽しめるセッティングとなっているのに加え、ブレーキのタッチなどは軽ながらスポーツカーらしいものだ。

 なお荷物の積めなさ度はビート以上というのも男らしい。

●2代目NSX(2016年)

「V10エンジンを積む」と言われていた幻のモデルを経て10年ぶりに復活したNSXは、ミドに縦置きされる3.5L V6ツインターボに3モーターという、ハイブリッドの4WDというスーパーカーとして登場。

 初期モデルは全体的に軟派な部分があり賛否両論あったが、最近登場した2019年モデルは見た目こそボディカラーくらいしか変わらないものの、NSXらしいスポーツ性が増しており、今後一層の熟成を期待したい。

●現行シビックタイプR(2017年)

 日本では7年ぶりに復活した現行シビックには、イメージリーダーとなるタイプRも登場当初からカタログモデルとして設定された。

 現行シビックは先代モデルと異なり、はじめからタイプR化が想定されていたこともあり、タイプRでも車体の性能は余裕あるものを備え、先代モデルに続き2L FFニュル最速の座に返り咲いた。

 なお、現行シビックタイプRも先代モデル同様イギリス製のため、工場閉鎖による今後の動向が非常に気になるところだ。

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