■クルマから醸される「いいもの感」こそが無二の特徴
走り始めるとその進化の程は手に取るように伝わってきた。特筆すべきはエンジンやミッションはもとより、サスアームやハブなどに至る動きモノの強烈な精度感で、連続凹凸や目地段差などの難しい入力でも「ドン・バン・ガシャン」など濁音系のリアクションはお首にも出さず、車体はスキッと滑らかに減衰する。
乗り心地もスポーツカーとしては明らかに優しいが、それ以上にこの高精度がゆえに醸される「いいもの感」こそが無二の特徴となるだろう。しかもこの美点は、スキルに関わらず低速域から公道で味わえる。
走りのポテンシャルは言うに及ばず、数値化すればニュルを7分30秒台で走れてしまう実力の持ち主であることは間違いない。
そして992型はシャシーの限界能力の高まりに加えて、電子制御の緻密化もあり、RRのカレラSでも弩級の速さを安全にアウトプットできる環境が整えられた。
鬼門とされてきた雨天時は車両の体制を最大限スタビリティ側にセットするウェットモードも加えられ、安心して911らしい制動や脱出加速が愉しめる。
古くからのマニアも多いモデルゆえ、911の進化には常に賛否もある。が、クルマの楽しさ、気持ちよさを多くの人々に提供するというその姿勢こそが、スポーツカーの民主化を牽引してきたことは間違いない。
■タイプ992の主な特徴
前型よりさらにパワフルでエモーショナルになるいっぽうで効率化も向上。車内での包括的なコネクティビティ機能も備わる。そんな新型911(992型)のトピックは…。
■前型で初搭載のダウンサイジング水平対向6気筒3Lターボエンジンを進化させた。最高出力450psとSモデル史上最高の出力
■安全システムとして世界初「ウェットモード」を装備。路面の水を検知し、適切なシャシーコントロールモードへの切り替えをサポート
■PHEVモデルの設定を予定している
■価格/カレラS:1666万1000円、カレラ4S:1772万1000円。いずれもPDK
■新型911試乗記の解説/「渡辺さん、その意味教えて!」
凄いぜ、タイプ992と心に響いた方も多いだろう、上の試乗記。が、編集部の2人は「これどういう意味?」とオドオド気味。試乗記内のいくつかのキーワード、「渡辺さん、わかりやすく教えてください」(馬場&松永)。
■「モノコックシャシー自体は継承されているように見える」
→どこを見てそう感じるんですか?(馬場)。
●パッと見た感じでホイールベースが前型の991と一緒、という印象からそう感じた。911の歴史でホイールベースは4回しか変わっておらず、911でそれを変えることはちょっとした出来事なんです。(渡辺)
■「アルミ材の使用率は70%」
→911史上、この数値は凄いことなんですか?(松永)
●911はアルミとスチールのハイブリッドボディ。新型ではアルミが増えて70%に。軽量化も進化していますね。(渡辺)
■「MMB」
→何の略字ですか?(馬場)
●VWグループではMQBなどアーキテクチャーの呼称があり、それがMMBになったということ。ドイツ語の略字だけど、英語的に訳すと「モジュラー・ミッドエンジン・プラットフォーム」になりますね。(渡辺)
■「PDKは8速化
→8速になるのは911史上、凄いことなんですか?(松永)
●前型の991は7速なので進化の一端がこの8速化。いよいよモーターが入れられる(電動化)、8速のミッションになったという感じ。(渡辺)
■「ベーシックなカレラの仕様」
→そのベーシックカレラはどんなクルマになりそう?(馬場)
●前型991のカレラSは420ps。新型が+30psなので、それを当てはめれば前型のベーシックが370psなので、400ps超えはあるかなと思う。パフォーマンス的にはそんなモデルになるでしょう。(渡辺)
■「車体はスキッと滑らかに減衰する」
→こんな滑らかさは前型にはなかったのですか?(松永)
●前型には〝この感じ〟はなかった。911は伝統的に乗り味的にスキッとした感覚だけど、992はとりわけ新しい。さらに洗練されたスキッとした感じがありますね。(渡辺)
■「スキルに関わらず」
→つまりヘタでもいいもの感を味わえる、と?(松永)
●いや、ヘタというのはかなり語弊が……(笑)。普通に誰が乗ってもいいもの感や美点を味わえるということですね。加えて前型からの違いも。(渡辺)
■「ニュルを7分30秒台で」
→なぜこの数値?(馬場)
●根拠は前型が7分40秒なので。パワー、シャシーなどで見ると30秒台でしょう。(渡辺)
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