■バックという意外な盲点?
都内で試乗して「デジタルアウターモニター」の実際の使い勝手を確認してみると、まずはカメラで得られる画像の範囲があらかじめ設定されているので、習慣になっている“ミラー”の調整をする必要がないことに違和感を覚えてしまう。
前述のように、実は走り出す前にも手順があり、通常のミラーに映る範囲の状態から後方をより広く遠い範囲を映し出して視認でき、ウィンカーの点灯ととも視野を拡大できる“二重設定”のひとつである“ワイドモード”に切り替えるには、必ず自分で設定を変更しなければならないのだ。わずらわしいが規則は規則だから致し方ない。
走り出して感じるのは、従来のドアミラーの位置から左右のAピラーの根元あたりに周囲を映すモニター画面があるため、目線の移動量は少なくてすむうえに、モニターの映像を見ると通常モードでも確かに視野が広がっていることがわかる。
■違和感のあるデジタルインナーミラー
いっぽうで、試乗車にメーカーオプションとして装備されていた「デジタルインナーモニター」とで周囲の見え方(映し方)に微妙な違いがあることに気づかされる。
デジタル映像から通常の鏡面式に切り替えることはできても、左右のモニターの映り方とは微妙に異なるので、確かに目に見えてはいても、周囲の車両などとの“距離感”を捉えにくいのだ。
慣れ親しんでいるルームミラーを防眩モードに切り替える要領で鏡、表示を鏡面式に切り替えても、「デジタルアウターモニター」が映し出す画像との感覚的な差はなかなか埋まらなかった。
細かい見え方に触れれば、LEDの信号やヘッドランプなどの光がちらつくのも違和感を助長してしまうようだ。
これを購入するひとは慣れるまでの“覚悟”が確実に必要だろうとさらに実感するのは、習慣的な視線の移動が出てしまう場合だ。
走行中はゆったりと流しているときには問題ないが、たとえばとっさに街中で車線変更する際にはどうしても従来のドアミラーの位置を見てしまいがちなので、慣れるまでは注意が必要だろう。
■慣れようがない弱点
では、慣れようがない“弱点”は皆無かといえば、どうしても自分の目で確認したい場合、たとえば夜間に駐車位置からバックで出庫するような際に、「デジタルアウターモニター」の機能にすべて頼ることが心許なく思えることが挙げられる。
もちろん、障害物や歩行者が近づいている場合には超音波ソナーによって警報音などが発せられるので心に留めておけばよいのだが、夜間では周囲の照明が少ないとデジタル画像の光のにじみなどがどうしても気になってしまう。
これまでにLSなどで「デジタルインナーモニター」の“電子画像”が走行中に雨が強く降ると見えづらくなることは経験していたが、自分の目で直接確認することができないことが不安を助長する。
雨の夜にウィンドウを下げて、濡れることを覚悟で後方を目視する必要が出てくるようではなんとも歯がゆい。
「デジタルインナーモニター」でも現状では使用するのに“注意書き”がさまざまあって、たとえば、体調・年齢などにより、ディスプレイに表示される映像に焦点が合うまで時間がかかる場合がある、などという断りが必要なので、同じデジタル画像を表示する「デジタルアウターモニター」にも同様な戸惑いを覚えることがありえるだろうから、技術的には改善の余地があることがわかる。
「デジタルアウターモニター」は前述のように形状が工夫されているため基本的にモニターに映し出されるデジタル画像が天候に左右されることはないが、夜間など暗い場所では、周辺を明るく見せるために映像が自動的に調整されることにより、“電子画像”特有のちらつきが発生する場合がありえることは見逃せない弱点といえる。
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