【日本車ばかりなぜCVT?】ATとCVTの長所と短所最新版 結局どっちがいい?

■高コストで重い8速、9速といった多段ATは高級車しか採用されない

 そんな美点だらけのATだが、難点がない訳ではない。遊星ギアユニットは、平行軸歯車と比べ、高い加工精度が要求される。昔の3速、4速ATと比べれば相当に効率が高く、スムーズでダイレクト感の高い走りを実現しているのは、変速機メーカーのエンジニアたちの努力の賜物だ。

 さらに多段化によりプラネタリーギアユニットを3段も組み合わせている8速以上の多段ATは、軽量化にも余念がないが、それでもMTやCVTと比べて重量が嵩むのは避けられないことだ。

 つまり多段ATは緻密で複雑、実はエンジンよりも精密さが求められる機械だ。だからこそ多段ATは一定以上の高級車にしか搭載されていない。つまり高コストと重量、サイズが受け入れられるようなクルマにしか採用することは難しいのだ。

●各メーカーのATはどこで作っている? サプライヤー/内製状況
トヨタ:内製/アイシンAW/アイシン精機、日産:ジヤトコ、ホンダ:内製、マツダ:内製、三菱:アイシンAW、ダイハツ:内製、スズキ:内製/アイシンAW/アイシン精機

■CVTはオランダで生まれ、欧州ではほぼ絶滅した変速機

コンパクトカーだけでなく大きく重いSUVにも採用されているCVT

 現在CVTの主流となっている金属ベルト式の無段変速機は、そもそもオランダのヴァンドーネが発明したもので、フィアットと富士重工はいち早くモノにした自動車メーカーとして知られているが、実際にはトラブルも多く、一度は見捨てられかけた経緯がある。これは駆動力の断続に磁性体を使った電磁クラッチを使ったことも原因だった。

 しかし、前述の通り、日本のエンジニアたちはトルクコンバーターとCVTを組み合せ、さらに制御を工夫し、加工の精度を高めることで完成度を高めてきた。

 ほかの変速機メーカーがサジを投げた状態であるのに対し、日本の自動車メーカー、変速機メーカーは諦めることなく開発を続けた。

 それはCVTの変速ショックのない加速とレシオカバレッジ(ローギアからトップギアまでの減速比の幅)の広さが、日本の道路事情に合っていると思われたからだ。

 日本と比べ、ゴーストップが少ない欧州では、CVTのメリットは武器になりにくい。何よりラバーバンドフィールと呼ばれる、まるでMTのクラッチが滑っているようなCVTの加速フィールは、ドライビングが好きな欧州のユーザーには毛嫌いされた。

 小排気量エンジンで発進時は減速比を大きくして出足を良くして、巡航時は減速比を小さくしてエンジン回転数を抑える。CVT自体の伝達効率は悪いが、小さいエンジンで加速と燃費を両立させるには都合がよいため、カタログ燃費や市街地での燃費向上に貢献できるのだ。

■矛盾だらけのメカニズムを技術力で解決した日本のCVT

レクサスUXに搭載された発進用1速ギヤの付いたダイレクトシフトCVT

 CVTは自己矛盾に満ちたメカだ。ベルトで駆動力を伝達するためににはガッチリとベルトをプーリーで挟み込まなくてはいけない。

 けれども強烈に挟んだ状態が良いのかと言うと、プーリーからベルトが離れる時には滑りが発生するし、そもそもプーリーとベルトを構成するエレメント(金属コマ)との間にも潤滑油が無ければ焼き付いてしまう。

 だからちょうどいい塩梅でベルトを挟みつけて変速を行ない駆動力を伝え、ベルトがプーリーから離れる時には潤滑により抵抗や焼き付き、かじりを抑える必要があるのだ。

 そのほかの変速機が、変速比を変える機構(ギアの切り替え)と駆動力を伝える機構(歯車)が独立しているのに対し、CVTは変速比を変える機構がそのまま駆動力を伝える摩擦伝達なのだ。

 ギアによる噛み合い伝達は、伝達効率が98%以上であるのに対し、摩擦伝達は、伝達効率を高めようとクランプ力を強くするとフリクションロスが大きくなるし、油圧もたくさん必要になるから油圧損失も大きくなる。

 さらにプーリーにかけるベルトの半径が小さくなるとプーリーを広げるために油圧を下げながらベルトをクランプしなくてはならなくなる。さらにベルトの屈曲性の問題もあって、さらに効率が悪くなってしまう。

 だからトヨタは発進専用のギアを組み込み、減速比を抑えたCVTを組み合せた変速機を作り上げたのだ。

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