【日本車ばかりなぜCVT?】ATとCVTの長所と短所最新版 結局どっちがいい?

■チェーン式CVTは強度と屈曲性に優れるが、静粛性が難点

チェーン式を採用するスバルのリニアトロニック。一部車種にはアクセルを踏み込まない「低開度」時は、滑らかな無段階変速。ドライバーがぐっと踏み込みアクセルが「高開度」になると、自動的にステップ変速に切り替わり、エンジン回転がぐっと伸びてリニアな加速が味わえるオートステップ変速切り替えモードを用意。また300ps/40.8kgmのWRX S4やレヴォーグの2Lターボにも耐えうる設計

 チェーン式CVTは、実はベルト式CVTとは似て非なるモノだ。何故なら、まず駆動力の伝達プロセスが違う。ベルト式CVTは、エレメントと呼ばれる金属コマをベルトで束ねており、金属コマをプーリーが締め付けて、その先のエレメントを押し出すことで駆動力を伝える。

 つまり、プーリー間にある金属コマは積み重ねられて一本の棒のようになり、プーリーを押す力になって駆動力を伝えるのだ。

 それに対し、チェーン式は引っ張ることで駆動力を伝える。しかもプーリーとチェーンの接点となっているのは、チェーンのリンクを形成するピンの両端という小さい面積だけ。

 だからCVTでもチェーン式はピンをプーリーが挟み込む時にノイズが発生するため、静粛性が問題になる。しかしチェーン式はリンクを重ねて幅を増やすことで、金属ベルト式より大きなトルクを伝達できる。

 スバルがチェーン式CVTを開発したのは、縦置きの変速機で無段変速という独創的なメカにこだわったからだ。水平対向エンジン同様、スバルのアイデンティティとして確立するためだ。

 そもそも金属ベルト式のCVTはベルトの屈曲性が低いため、一定以上のプーリー径が必要になる。

 センタートンネル内に変速機を収める縦置きでは、金属ベルト式のCVTは搭載が難しい。アウディが採用したのも同様に縦置きだったからだ。

■CVTとATは一長一短!

大排気量車にはCVTは向かないといわれるが……

 CVTとAT、どっちがいいとはひと口には言い切れない。伝達損失から言えばATの方が優れているが、コストや燃費を考えればCVTも負けないくらい性能を高めている。

 CVTは小型車用の燃費優先変速機であるのに対し、多段ATはある程度のサイズ容量をもった高級車向けの変速機という棲み分けが進む。

 4速、5速のATはその中庸的な存在だが、日本ではコストが安く燃費のいいCVTがカバーする領域を広げているのが現在の日本の変速機事情と言える。

 しかし今後、変速機はモーターと組み合わされる電動化が進み、ワイドなレシオカバレッジは必要なくなってくる。

 ATの多段化は収束され、CVTは姿を消していくことになるだろう。その反面、EVにも3、4速の変速機が搭載される時代が到来するのである。

■いいAT、CVTの指標であるレシオカバレッジとは?

 本企画で何度も出てきた言葉、レシオカバレッジ。最後にこのレシオカバレッジとはなにか、これまで聞いたことがなかった、という人のために、説明しておきたい。

 レシオカバレッジとは、変速機の変速比幅(適用可能な変速比の範囲)とも呼ばれ、最も低速のギア比を最も高速のギア比で割って求める値だ。

 この値が大きいほど、エンジンが低回転のままで走ることができる車速の幅が広いことになり、燃費が良く、静粛性に優れるという評価につながる。CVTの場合は、最も低速(ロー)のプーリー比を最も高速(ハイ)のプーリー比で割った数値になる。

  4速ATで4程度、6速ATで6程度、8速ATでは8程度、9速ATでは9.8、10速ATでは8.23となっている。CVTは一般に5.5~6程度。 巻末で各社の主な車種のレシオカバレッジを紹介しているので、いいトランスミッションの指標としてみてほしい。

 CVTの場合、変速用プーリーの大径化の制約があるため、多段ATよりも変速比の幅を広げられなかったが、日産とジャトコが2009年に実用化したCVTは副変速機をつけて、乗用車としては当時最も広いレシオカバレッジを7.3とし、後に8.7にまで広がった。

 いっぽう、トヨタは2018年12月、レクサスUXに採用したダイレクトシフトCVTは、CVTに発進用1速ギヤを組み込み、ベルトをハイ側に設定できたことで、レシオカバレッジ7.5を実現した。

 つまり副変速機と発進用1速ギヤを組み込むことで、発進、加速時にはギア比をロー側へシフトし、 力強い駆動力を得ることと、高速巡航時にはギア 比をハイ側へシフトし、静かで燃費の良い走りを両立させている。

 このレシオカバレッジの数値が大きいほど、いいAT、CVTなので、参考にしてほしい。ちなみに過去の車種の数値を比較してみると進化の幅がわかるだろう。

■主なAT搭載車のレシオカバレッジ
●レクサスLC、LS:8.232/10速AT
●アルファード3.5:8.201/8速AT
●デリカD:5 2.3Lターボ:7.801/8速AT
●クラウン2Lターボ:6.709/8速AT
●レクサスRC F:6.709/8速AT
●スイフトRS-t:6.812/6速AT
●ロードスターS:6.079/6速AT
●スイフトスポーツ:6.018/6速AT
●デミオ1.5L XD:5.934/6速AT
●CX-5 XD:5.812/6速AT
●レクサスRX 2Lターボ:5.428/6速AT

●フィアット500X:9.812/9速AT
●ジープチェロキー:9.812/9速AT
●ベンツCクラス:9.156/9速AT
●ベンツEクラス:8.908/9速AT
●BMW X2:8.201/8速AT
●プジョー3008:8.199/8速AT
●ボルボXC40:7.801/8速AT

■主なCVT搭載車のレシオカバレッジ
●レクサスUX:7.555/CVT
●ノート1.2L:7.284/CVT
●スイフト1.3L:7.284/CVT
●インプレッサスポーツ1.6L:7.031/CVT
●フォレスター2.5L:7.031/CVT
●セレナ2L:6.960/CVT
●エクリプスクロス1.5Lターボ:6.960/CVT
●エクストレイル2L:6.960/CVT
●シビックセダン:6.531/CVT
●ステップワゴン1.5Lターボ:6.531/CVT
●ヴォクシー2L:6.454/CVT
●WRX S4:6.442/CVT
●C-HR 1.2ターボ:6.263/CVT
●カローラスポーツ1.2Lターボ:6.263/CVT
●ヴェゼル1.5L:6.191/CVT

■主な過去の車種のレシオカバレッジ(順不同)
●LFA(2010年):4.064/6速AT
●NSXタイプT(2004年):3.360/4速AT
●BP5 レガシィツーリングワゴン2.0GT(2003年):4.425/5速AT
●アルテッツァAS200(1998年):3.356/4速AT
●カローラII 1.4L(1997年):2.810/3速AT
●マークIIグランデ(1995年):3.820/4速AT
●レパードJフェリー(1993年):4.013/4速AT
●S13シルビアK’S(1992年):4.013/4速AT
●EF7 CR-X Si(1990年):3.468/4速AT
●マーチターボ(1990年):2.286/3速AT
●R32スカイラインGTS25(1989年):5.558/5速AT

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!