【スイフト、シビック、コロナ…】大ヒット車の影で不運な運命を辿った理由とは?

■2代目C130型ローレル/1972年4月

1972年4月にデビューした2代目C130系ローレル2ドアハードトップ<br>
1972年4月にデビューした2代目C130系ローレル2ドアハードトップ
1970年代のダッヂダートのリアテールを思わせる、通称ブタケツと呼ばれる2代目ローレルのリアスタイル
1970年代のダッヂダートのリアテールを思わせる、通称ブタケツと呼ばれる2代目ローレルのリアスタイル

 かつて日産を代表するハイオーナーカーにローレル(1968年4月~2003年2月販売終了)があった。初代C30系ローレルは日産が設計を手掛けたが、プリンス自動車との合併によって旧プリンス系の村山工場で生産を行うことになった。

 1972年4月に登場した2代目のC130系は、型式からわかるようにスカイラインの兄弟車となっている。

 これ以降、スカイラインのメカニズムを先んじて採用する先行モデルとなったのだ。ターゲットユーザーがスカイラインより上の層だったこともあり、スポーティ度でもスカイラインより下とみられている。

 2代目ローレルはケンとメリーのスカイラインより5カ月早い1972年5月にデビューした。プラットフォームやパワートレインなどのメカニズムはスカイラインとほとんど同じだから走りの実力は高かった。

 デザインも個性的だ。なかでも強いインパクトを放ったのは2ドアハードトップである。

 ウエッジシェイプの利いたパキッとしたフォルムで、コークボトルラインや凝ったキャラクターライン、リアバンパーに組み込んだ横長のリアコンビランプなどが新鮮だった。

 パネル面がスッキリしていることもあり、「ブタケツ」と呼ばれたが、アメリカ車のような風格を漂わせていたのだ。

 主力モデルはスカイライン2000GTと同じL20型直列6気筒エンジンを搭載するが、プリンス自慢のG20型直列4気筒SOHCエンジン搭載の「GX」を設定するなど、独自の個性も見せていた。

 今回、私が隠れた名車として、表舞台に担ぎ出したのが、この2代目ローレル2ドアハードトップ、プリンス自慢の4気筒SOHCエンジンを搭載したGXである。

 実際にはSGXよりGXの方が速かった。4気筒モデルには、まだプリンスの技術が脈々と息づいていた。

 日産のL型とプリンスのG型では、実用域の出力トルクなど、ドライバビリティ上では公表性能以上に差があったといわれている。

 この時代、爆発的に売れたケンとメリーのスカイラインの陰に隠れ、目立たない販売に終わった2代目ローレルだが、近年、高値で取引されているのを見ると、スカイラインの影に隠れたローレルの悲運さを知っている人は胸が熱くなっているのではないだろうか。

■レガシィ3L水平対向6気筒モデル/2004年10月

 2003年5月に発売された4代目BP/BLレガシィ。2003年9月にはEZ30、3Lフラット6を搭載した3.0Rが発売。隠れた名車として推したのは2004年10月に発売されたWRX STI用の6速MTを換装した3.0RスペックB
2003年5月に発売された4代目BP/BLレガシィ。2003年9月にはEZ30、3Lフラット6を搭載した3.0Rが発売。隠れた名車として推したのは2004年10月に発売されたWRX STI用の6速MTを換装した3.0RスペックB

 スバルは水平対向エンジンと卓越した走破性能を誇る4WDをコアテクノロジーに技術を磨き、名車を生み出してきた。

 GTやGT-Bといった水平対向4気筒ターボエンジンのイメージが強いが、水平対向6気筒エンジンを積む、隠れた名作も存在する。商業的には成功しなかったが、今でも潜在的なファンは少なくない。

 水平対向6気筒エンジンが初めて搭載されたのは1987年6月にデビューしたアルシオーネVXの2.7LのER27型(150㎰/27.5kgm)。次に積まれたのは 1991年9月に登場したアルシオーネSVXで、ER33型3.3L水平対向6気筒エンジンは240ps/31.5kgmを誇った。

 レガシィに水平対向6気筒エンジンが搭載されたのは3代目レガシィの派生モデル、ランカスター6に搭載された新設計のEZ30型だった。2002年1月にはレガシィにもEZ30型を搭載したツーリングワゴンGT30、B4 RS30がラインアップに加わった。

 EZ30型水平対向6気筒はコンパクト設計で、回転バランスもV8エンジン並みによかった。高回転まで軽やかに吹き上がり、レスポンスも鋭い。ポルシェの6気筒に勝るとも劣らない名機だったのである。

 2003年5月に登場した4代目のBL/BP型レガシィにも2003年9月にEZ30型エンジンが搭載された。この3LのEZ30型水平対向6気筒エンジンは3.0Rのほか、同年10月にはアウトバックにも搭載され、一部のマニアからは垂涎の的だ。

 そのなかでも私が隠れた名車として推したいのは 2004年10月、B4とワゴンに追加設定された3.0R Spec Bの6速MT車だ。

 当初は6速MTを設定(2007年5月に廃止)、のちに5速ATが追加され、専用チューンのビルシュタイン製ダンパーや専用グリルやスポイラー、18インチのホイールの採用で通常の3Lモデルとは差別化されていた。

 高回転まで淀みなくスムーズに回る、6気筒ならではの上質なエンジンフィール。6速MTはインプレッサWRX STIの6速MTをベースにストロークをやや長くして滑らかにギアチェンジできるようチューニングし、ギアの精度をあげ、ノイズの低減を図っている。

 さすがに2L水平対向4気筒ターボに比べると、EZ30型3L水平対向6気筒はパンチ力は乏しいが、間違いなく後世に残しておくべき名機だった。

7000rpmまで滑らかに回り、回転バランスに優れたEZ30型3Lフラット6エンジン。最高出力は250ps、最大トルクは31.0kgm。ナイフでバターを切る感触の6速MTと相まって官能的な部分が高く評価されている
7000rpmまで滑らかに回り、回転バランスに優れたEZ30型3Lフラット6エンジン。最高出力は250ps、最大トルクは31.0kgm。ナイフでバターを切る感触の6速MTと相まって官能的な部分が高く評価されている

 さらにスバルの水平対向6気筒エンジンに取り返しのつかない悲運が待っていた。なんと2019年2月に発表された新型レガシィには、EZ36型3.6L水平対向6気筒が搭載されず、FA24型2.4L水平対向4気筒ターボとFA25型水平対向4気筒エンジンに置き換わり、ついにスバルから水平対向6気筒エンジが消えることになったのである。合掌……。

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