120km/h区間なのに追い越し車線に出てくる日本の大型トラックドライバーは「マナー最悪」か?【清水草一の道路ニュース】

120km/h区間なのに追い越し車線に出てくる日本の大型トラックドライバーは「マナー最悪」か?【清水草一の道路ニュース】

◾️ドイツは大型車の走行台数が少ない?

 たしかにアウトバーンの大型トラックのマナーはすばらしい。しかしアウトバーンは、日本の高速道路の片側3車線区間に比べると、大型車の走行台数が圧倒的に少ない(実感)。よって、大型車が大型車を抜くというシーン自体、かなりレアだ。

 データを見ると、このようになっている。

<高速道路の大型車の混入率>
ドイツ/15%(2015年)
日本/38%(2021年)

 日本の高速道路は、大型車の比率がドイツの2.5倍も高い。なかでも新東名は48%と、全体の約半数が大型車。深夜はその割合が80%近くにまで上昇する。深夜の新東名を埋め尽くす大型トラックの群れは、世界的な奇観と言っていい。これだけ大型車が多いと、大型車同士の追い越しが頻発するのは、仕方ない面がある。

 日本の大型トラックは、厳密に80km/hを守る一部大手運送会社と、リミッターの効く90km/hで走るその他のグループに大別される。深夜の新東名では、80km/h組は第一通行帯、90km/h組は第二通行帯という「棲み分け」もされており、大型トラック同士の追い越しは、どうしても第三通行帯に及ぶことになる。

 新東名の御殿場JCT-浜松いなさJCT間では、大型車の第三通行帯走行は法的には禁止されているが、取り締まりはなく、事実上黙認されている。

この「大型左車線」表示が意味するのは、トラックは第一通行帯のみを走行せよということ。本来は第二通行帯も走行することはできない
この「大型左車線」表示が意味するのは、トラックは第一通行帯のみを走行せよということ。本来は第二通行帯も走行することはできない

 実は、日本の高速道路を走る大型トラックの総数は、ドイツに比べて断然多いわけではない。トンキロ(輸送量×走行距離)で見ると同レベル。ドイツもトラック輸送に大きく依存しているのである。

 しかし日本とドイツとでは、高速道路の交通容量に大きな差がある。

 日独は面積や経済規模はかなり近く、高速道路の総延長も約1万km(日本)対1.3万km(ドイツ)とそれほど違わないが、アウトバーンは片側3車線が基本で、日本は片側2車線が基本。片側1車線の対面通行区間も3割近くあり、片側3車線区間は約1割に過ぎない。つまり、交通容量で見ると、ドイツの半分程度しかない。

 しかも日本は、大都市が一直線上に位置しており、太平洋ベルト地帯の路線に交通が集中する。一方ドイツの大都市は面に分散しており、日本のような集中は起きない。結果的に「大型トラックが第一走行帯を粛々と走る」という状況が実現している。

高速道路ネットワークにおける大型車の利用状況。資料:NEXCO
高速道路ネットワークにおける大型車の利用状況。資料:NEXCO

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