日本で「売れている車」といえば、トヨタならプリウス、日産ならノートやセレナ、ホンダならN-BOXやフィットなど。
特別なモデルを除けば、各メーカーのメジャーな車は、やはり人気上位のモデルということになるだろう。
しかし、日本で人気車とまでは言えず、地味な存在となっている車が、実は世界で大ヒットを飛ばし“超メジャーな国産車”になっている例もある。
本稿で紹介する5台の国産車は、ある意味で日本で売れている国産車以上に、メーカーの屋台骨を支えている存在と言えるかもしれない。
文:永田恵一
写真:編集部、NISSAN、HONDA
※各車の世界月販平均台数は、2017年内の各メーカー回答データをもとにした概算値です
日本で地味でも世界でバカ売れするトヨタ車は?
■トヨタ カムリ/世界月販平均:5.3万台
カムリは現行型で10代目モデルとなるFFのラージセダン。
現行型は日本においてはマークXの後継的ポジションも担う車(マークXは2019年12月で生産終了)で、現行型からカローラ店に加えトヨペット店とネッツ店でも販売。
2019年に入ってからも月2000台近くという、日本車のセダンとしては好調な部類に入る販売をキープしている。
しかし、北米や中国などのアジア圏で販売される現行カムリは、海外では日本の2年分を超える5万台以上を1カ月で販売するトヨタにとって大黒柱の一台。
それだけに完成度は非常に高く、「なるべく大きな車に乗りたい」というニーズが強い北米やアジア圏で売れるのもよく分かる。
また、日本で販売される2.5Lハイブリッドに加え、北米ではガソリンの2.5L直4と3.5L・V6、中国では2L直4エンジンを設定するなど豊富なバリエーションを持つことも売れている理由となっている。
■トヨタ ハイラックス/世界月販平均:9.1万台
ハイラックスは丈夫なラダーフレームを持つピックアップトラック。
日本では先代(7代目)モデルは販売されなかったが、現行型となる8代目モデルがタイで生産される輸入車の形で2017年に復活。
当初は年に2000台という実験的にも見える導入だったが、現在も月に500~600台が売れており、ニッチながらも望外の人気が続いている。
しかし、タイなどのアジア圏、欧州、オセアニアで販売されるハイラックスは、世界規模では月に約9万台が売れており、トヨタで2位となるドル箱な存在。
ピックアップトラックは国による税金が安いため、乗用車代わりに使うユーザーも多いことに加え、実際に乗ってみてもインテリアなど含め、全体にイメージよりずっと乗用車的で、国土の広い海外で売れていることも納得だ。
日本の300倍以上世界で売れてる!? 日産&ホンダのセダンとは?
■日産 セントラ(シルフィ)/世界月販平均:5.7万台
日本のシルフィは、海外では北米でセントラ、中国でシルフィの車名で販売されている。
車格としては日本車ではカローラスポーツやシビック、輸入車ではVWゴルフなどに相当するミドルクラス、欧州流の表現ではCセグメントという激戦区に属する。
1.8Lのガソリンエンジンを積む日本仕様のシルフィは、登場から6年以上が経過。強い特徴もなく、自動ブレーキも設定されないなど、月に200台程度の販売台数に留まる地味な車である。
ところが、海外では日産にとって重要なモデルということもあり、ライバル車に対し安価かつ北米ではかつてのブルーバードSSSを彷彿とさせる「NISMO」も設定。
中国向けは2019年の上海モーターショーで発表された4ドアクーペ的な新型に加え、日米で販売される先代モデルも継続販売するという合わせ技で、日産全体では2位となる月5万台以上を販売。
日産は6月に「グローバルに新型セダンのラインアップを充実する」という発表を行っているだけに、日産らしいスポーツセダンとして中国向けのシルフィをNISMOが仕立てたようなモデルを日本でも販売して欲しいところだ。
■ホンダ アコード/世界月販平均:3.5万台
アコードは、トヨタではカムリに相当するモデルで、1982年から米国での生産を開始するなど、古くから北米に軸足を据え、時代に合わせてボディサイズを拡大してきたラージセダンというポジションを持つ。
日本向けのアコードは、日本独自のボディサイズとしたり、日本では展開されないアキュラのTSXを日本仕様とした時期もあった。
しかし、2013年登場の現行モデルは、北米の2Lハイブリッドのみが設定され、カムリに非常に近い成り立ち。日本での現在の販売台数は、月100~150台と低空飛行が続いている。
一方、北米や中国といった海外では、北米で2017年、中国でも2018年に日本に先行してフルモデルチェンジされ、ホンダの世界販売でベスト5に入る台数を誇り、単価を考えれば「最も稼いでいるホンダ車」の1台である。
海外仕様のアコードのパワートレーンは、アメリカ仕様にCVTと組み合わされる1.5L直4ターボエンジン、10速ATと組み合わされる2L直4ターボ、2Lハイブリッド、中国仕様にはCVTとの組み合わせで2種類の1.5Lターボ、2Lハイブリッドが設定される。
日本仕様の次期アコードは、現在の米国・中国仕様に準じる2Lハイブリッドとなる形で東京モーターショーへの出展、2020年初めの発売が予告されており、カムリのように日本でもブレイクできるかに注目したい。
コメント
コメントの使い方