「日産よ、腹を括って一丸となれ」いまこそ応援したい日産の大逆境…本当の原因と再生への道

■古いモデルでも「神風」のおかげで売れた

 2019年の末にCEOとなった内田誠氏は、旧態化した車種を早急に退役させ、可能なかぎり新型車を投入して、適価販売へと切り替えようとした。そこに「神風」が吹いた。半導体不足によって世界中の自動車メーカーのラインが断続的に止まり、需要に対して供給が不足した。こうなると、値引き交渉など論外な話になり、日産は投入した新型車を正価で売って、またもやV時回復を見せたのである。

 しかし、北米では日本と違って、クルマは店頭在庫販売方式である。供給不足のさなか、販売店は恐慌をきたした。店頭在庫販売ということは店頭にクルマがなければお客は他の店に行ってしまう。なのにクルマは入ってこない。米国中のディーラーが大量の見込み発注を入れてなんとかクルマを確保しようとする。そういう中で半導体問題が解決して、突如クルマがどんどん入荷するようになる。店頭在庫金額が膨れ上がったディーラーは再びパニックに陥り、値引きしてでも早く売り抜けようとしたのだ。

 こうして前年には正価販売で大幅な利益を確保した構造は一夜にして破壊され、利益度外視の叩き売りで、恐怖の「9割減」の上半期決算へと至ったのである。

 よくよく考えてみれば、2012年から10年以上の長きに渡り、商品力の落ちたクルマを値引きで売ってきたのが米国のディーラーである。よっぽどの意識改革を断行しないかぎり、販売方法が「値引き頼り」に戻ることは容易に想像されたはずである。もし日産本体が前年度決算の主因となった正価販売を、戦略として販売的にきちんと理解させることができていたら、今回の結果は防げた可能性が高い。

 さて、日産はこの状況をどうやって打破するのか。それについては上半期決算で日産の「ターンアラウンド」計画が発表されている。内田誠CEOは2019年の就任時、「NISSAN NEXT」を発表し、グローバル生産能力を、年産720万台から、最大で600万台、通常時540万台へと削減した。この戦略の一部がインドネシア工場の閉鎖である。

日産が2024年11月7日に上半期決算とともに発表した「ターンアラウンドの取り組み」によると、ルノーグループ・三菱自動車、ホンダとの戦略的パートナーシップの推進などを通じて投資効率と商品競争力を高めながら、経営計画「The Arc」を実行してゆく、というもの
日産が2024年11月7日に上半期決算とともに発表した「ターンアラウンドの取り組み」によると、ルノーグループ・三菱自動車、ホンダとの戦略的パートナーシップの推進などを通じて投資効率と商品競争力を高めながら、経営計画「The Arc」を実行してゆく、というもの

 さて、現在の状況を見ると、日産の販売能力は340万台程度。これに対して540万台の能力は高すぎる。その調整が必要である。しかしその前に、日産は340万台で利益が出るかたちにスリム化しなくてはならない。そこで日産は固定費3000億円と変動費1000億円の削減を計画し、年産340万台で持続できるかたちへの構造改革を行う。

 問題は、これをカット、カットで削ぎ落としてしまうと。340万台に縮小均衡してしまい、反転攻撃に出られない体力に落ちてしまう。すでに2019年に大幅なカットを断行しているので、これ以上の資産整理を進めるとワンウェイになってしまいかねない。だから日産は「ラインの速度を落とす」という作戦を上梓した。つまり現在の540万台の設備をゆっくり動かして、340万台に能力を落とす。ゆっくり回すならラインの人員を減らせる。9000人のリストラはこの削減を意味している。

 整理しよう。日産はラインのスロー化で、現在の販売力に釣り合った340万台体制に生産能力を調整する。その際、人員を削減して、コストを落としていく。これが日産の再建プラン「ターンアラウンド」の中心部分である。

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