2025年1月5日、日本自動車工業会は、日本の自動車産業の置かれた状況や危機意識、業界として既に取り組んでいること、「自動車産業」が「モビリティ産業」へと変革させてゆくなかで、目指す「未来の姿」を描いた指標「VISION2035」を発表した。以下、内容を整理しつつ、その「志」を読み解いた。
文:ベストカーWeb編集部、画像:日本自動車工業会
■「10年後(2035年)」に向けた自工会の取り組み
トヨタ、日産、ホンダ、三菱、マツダ、スバル、スズキ、ダイハツと、日本の主要自動車メーカーすべてが加入する、いわゆる「業界団体」である日本自動車工業会(以下、自工会)。これまでは、国や自治体から投げられた課題を足元でどうこなすか、各メーカー間の調整役、といった「受け身」の組織であった。
それが近年、自工会は「攻め」の組織に変わりつつある。
特に「競争領域と協調領域の明確化」を掲げ、国産メーカー各社が「競い合うところ」と「協力し合うところ」を分けたことで、自工会内に一体感が生まれ、「自動車産業のために」という一点で日本政府や他業界へ働きかけることができるようになった。
今回、自工会が発表した「VISION2035」はこうした文脈から出てきた日本自動車界が目指す「旗印」となる。
この「VISION2035」は、片山正則氏(現自工会会長/いすゞ自動車会長)の強い思いで製作・発表されたとのことで、土台となる狙いは以下の3つとのこと。
・これまで自動車産業は社会全体の理解のもとで発展したきた。これからモビリティ社会へと転換するにあたっても、社会全体に理解してもらうことを目指してゆく(そのために丁寧なコミュニケーションを重ねてゆく)
・カーボンニュートラル社会の実現、CASEへの対応を踏まえて、かねてより自工会が掲げる「7つの取り組み」を加速させる具体的な道筋を立てる
・(自工会参加企業だけでなく)若者やスタートアップと一緒に課題に取り組み、ワクワク感を与えたい
これらを踏まえて、自動車産業(モビリティ産業)の立ち位置と功績、今後のクリアすべき課題、向かうべき方向を示す指針をまとめることとなった。
PDF書類で全40ページとなる「VISION2035」は、自動車産業が社会にどのような貢献をしているか、今から10年後の2035年へ向けてどのような課題があるか、その課題をどう解決してゆくか、が記されている。
特に注目なのは、各自動車メーカーが現在直面している具体的な「課題」が記されているところ。「インフラ・デジタル分野の課題」と称されたページでは、「充電ステーションが少ないため、電動車の普及に課題」、「カーボンニュートラル・資源循環経済に向けて、地域社会・行政との連携が必要」、「カーボンニュートラル対応はイニシャルコスト、ランニングコスト共に中小物流事業者の経営を圧迫」があげられ、「最悪のシナリオとして…」と銘打たれ、「海外との電動車競争に敗北」、「ソフトウェア領域での競争力獲得に失敗」と明記されている点があげられる。
さらに「サプライチェーン・グローバルな課題」では、「半導体をはじめとするSDV化に不可欠な部材の調達力と、資源循環の確保」、「天然資源に乏しい日本において、電池の材料となるレアメタル等の安定調達に係る懸念」、「国土の狭い日本にとって、再エネ電源整備は地理的に限界があり米国、中国、欧州に比べ不利」などと記載されている。
このように、課題や危機が明確化されたことで、これらを乗り越えるため、「モビリティを⽀えるインフラの整備」、「サプライチェーン強靭化・循環型社会の実現」、「社会課題の解決」を目指し、日本政府に出来ること、自動車産業に出来ること、他産業と協力・連携して取り組むこと、がそれぞれ具体的に挙げられている。
この「VISION2035」を指針・旗印として、自工会は「攻め」の姿勢でモビリティ社会への転換を目指し、2035年に向かってゆくことになる。
【画像ギャラリー】自工会が「攻め」の中期目標を発表 この10年に掲げる旗印「VISION2035」公開(3枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方